著名な映画監督たちが絶賛! 究極のドキュメンタリー映画『GUNDA/グンダ』 | Numero TOKYO
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著名な映画監督たちが絶賛! 究極のドキュメンタリー映画『GUNDA/グンダ』

これまでに国内外で100以上の映画賞を受賞し、“最も革新的なドキュメンタリー作家”と称されるヴィクトル・コサコフスキー監督渾身のドキュメンタリー『GUNDA/グンダ』が公開。名優ホアキン・フェニックスがエグゼクティブプロデューサーに名乗りをあげ、名だたる映画監督たちが大絶賛する傑作をぜひスクリーンで!

あのホアキン・フェニックスが感動してエグゼクティヴ・プロデューサーに!
農場で暮らす母豚と子どもたち――小さな生命の宇宙を映し出す動物たちの映像詩

全編モノクローム。色彩が削ぎ落とされた光と影だけの映像。ナレーションもテロップもなし、音楽も流れない。ストイックな作風だが、実はひとつの「世界」や「宇宙」を目撃するような豊穣な93分が展開する。そんな異色かつ破格の傑作動物ドキュメンタリーが『GUNDA/グンダ』だ。

監督はヴィクトル・コサコフスキー。1961年生まれのロシア出身。日本公開は氷の大地でのさまざまな自然や人間の営みを映し出した『アクアレラ』(2018年/タイトルは「水彩画」の意味)に続いて、まだ二作目だが、現実と詩的な瞬間の相互作用を探究する“最も革新的なドキュメンタリー作家”として30年以上活躍し、国際的に高い評価を得ている。

2020年の新作『GUNDA/グンダ』は、あの『ジョーカー』(2019年/監督:トッド・フィリップス)でアカデミー賞主演男優賞に輝いた名優ホアキン・フェニックスが「深遠で、芸術的な映画だ」と感動し、自らエグゼクティヴ・プロデューサー(製作総指揮)を買って出た。ほかにポール・トーマス・アンダーソン、アリ・アスター、ガス・ヴァン・サント、アルフォンソ・キュアロン、リン・ラムジー、パヴェウ・パヴリコフスキ、アレクサンドル・ソクーロフなどといった、世界の名だたる映画監督たちが本作に熱烈な賛辞を贈っている。

この映画が映し出すのは、ある農場で暮らす動物たちの姿だ。冒頭のショットが映し出す、藁を敷いた小屋でぐっすり寝ている一頭の母豚GUNDA(グンダ)。まもなく産まれたばかりの子豚たちがわらわらと出てきて(10匹以上!)、すぐにお乳の争奪戦となる。お腹がいっぱいになると、狭いスペースの中で折り重なるようにして昼寝しようとする子豚たち。こういった豚の家族の光景がまずは20分近く続くのだが、何の説明も加えないがゆえに、細かい「動き」=アクションを凝視してしまう。そして繊細な立体音響。ただ、そこで暮らす生き物たちの息づかいに耳を傾ける。ひとときも画面から眼が離せない。

もちろんGUNDAとその子どもたちは明らかに家畜だろう。母豚の耳にチラ見えする識別プレート。また、おそらくは同じ敷地内の一角だろうか、すし詰め状態の籠の中から脱出していく鶏たちが登場する。ダイナミックに爪を広げ、大地をゆっくり踏み締める様がやたらかっこいい。そして一本脚の鶏と、荘厳な大木に美しい光が差す。ただしこの草むらも柵で囲まれている。

今度はものすごい数の群れが牛舎から走り出してくる。そんな彼らの耳にもナンバープレートが見える。

つまり本作に登場する動物たちは限定的なシステムの下で生きているわけだ。そこを踏まえるなら、例えば自由と搾取をめぐる寓話として、ジョージ・オーウェルの小説『動物農場』(1945年)や、食肉用として飼育されている豚たちの世界をメルヘンティックに描いた映画『ベイブ』(1995年/監督:クリス・ヌーナン)などに通じる風刺性を感じ取る向きもいるかもしれない。厳格なヴィーガンとして知られるホアキン・フェニックスも、同様の主題性をキャッチしたのだろうか?

しかし、こういった「見方」も解釈のひとつに過ぎない。本作の場合、あくまでも映画の「見方」はわれわれ観客それぞれの眼と心に託されている。
多元的な情報に満ちた現実をポエティックに昇華し、開かれた「見方」を提示することこそ、ほかの動物映画とは一線を画す『GUNDA/グンダ』の卓越だ。

例えば往年のテレビ番組『野生の王国』(MBS制作/1963年~1990年)のような教養ドキュメンタリーの系譜とも異なる。あるいはCGと見間違うような審美性や、「自然の驚異」とのコードに回収される神秘性を備えたBBCやナショナルジオグラフィックのネイチャードキュメンタリーとも違う。もちろん愛玩性を強調したYouTubeの癒やしペット動画とも、メッセージ性の強い食育系ドキュメンタリーとも――。

最もシンプルで、過激なほどミニマム。ある種、映画表現をソリッドに初期化してしまった『GUNDA/グンダ』は、もっと抽象的な「見方」をも引き受ける。まるで未知の惑星を舞台にしたSFのようだと感嘆する者がいてもおかしくないのだ。

また母親としての情愛を湛えるGUNDAの表情が素晴らしい。オスカー俳優のホアキン・フェニックスも感動させたほど、彼女のイノセントな「非演技」の説得力はわれわれの胸を締め付ける。躍動感あふれる生命の鼓動と、本質に宿る美。さらに不条理なまでの哀切と残酷。「ロベール・ブレッソン『バルタザールどこへ行く』(1966年)やタル・ベーラ『ニーチェの馬』(2011年)と共鳴する」(SCREEN INTERNATIONAL)との評が出たのも納得だ。

第31回ストックホルム映画祭最優秀ドキュメンタリー賞、第24回ロシア映画批評家協会最優秀ドキュメンタリー賞など、これまでに国内外の映画賞で100以上の賞を受賞。世界を魅了し続ける『GUNDA/グンダ』は、ヴィクトル・コサコフスキー監督という希有な才能の存在を知る意味でも必見だ。この鬼才の過去作の日本公開も続々望みたい!

『GUNDA/グンダ』

監督/ヴィクトル・コサコフスキー
エグゼクティブ・プロデューサー/ホアキン・フェニックス
12月10日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国順次公開
bitters.co.jp/GUNDA

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Text:Naoto Mori Edit:Sayaka Ito

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