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ケニアで”違法な恋”に落ちた二人を描く『ラフィキ:ふたりの夢』

これはボーダーレス化のシンボルとなり得る作品かもしれない。2018年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に、同映画祭の長い歴史の中で史上初のケニア作品として出品。二人の女性のラブストーリー『ラフィキ:ふたりの夢』だ。

ケニア初のカンヌ映画祭に出品された話題の青春映画が日本上陸! ストリートの新しいリアルが詰まった感動の“ガール・ミーツ・ガール”

同性愛が違法とされ、LGBTQへの弾圧や差別もいまだに強いケニア国内ではずっと上映禁止だったが、アフリカ新世代の旗手として注目を集めるワヌリ・カヒウ監督自身の熱心な活動で、自国での限定公開を実現。2018年9月にナイロビの映画館で一週間上映されたときは、チケットを求める長蛇の列ができるほどの人気で、社会現象として報じられた。

お話はナイロビに暮らす看護師志望の聡明なケナ(サマンサ・ムガシア)と、明るく自由奔放なジキ(シェイラ・ムニヴァ)の“ガール・ミーツ・ガール”。出会ってまもなく互いの恋心に気づいた二人は、自然にキスを交わす――。

とにかくこのWヒロインがかっこよくて魅力的。ユニセックスなケナと、虹色のドレッドヘアーが印象的なジキ。ともにストリート・カルチャーの洗礼を受けたファッションが輝かしく、その世界共通の等身大の佇まいはわれわれにも身近に感じられる。

ケナを演じるサマンサ・ムガシアはミュージシャン。バンド「Yellow Light Machine」のメンバーで、ドラマーとしてあらゆるユニットに参加。ヴィジュアルアーティストやモデルとしても活躍し、これが初の映画出演となる。ジキ役のシェイラ・ムニヴァは映画制作の勉強をし、監督業にも進出。意欲的なクリエイターでもある彼女たちが参加したこの映画には、まさにアフリカの都市部で暮らす若者たちの新しいリアルが詰まっているといった趣だ。

タイトルとなった“ラフィキ”はスワヒリ語で「友だち」という意味。ケニア人の同性愛者は、パートナーや恋人を紹介するときにこう呼んで、関係をボカすことがよくあるらしい。そういったセクシュアルマイノリティへの偏見の中、ケナとジキは、お互いの父親が国会議員の対立候補という皮肉な事情もあり、『ロミオとジュリエット』的な社会的障壁に直面する。果たして二人の絆はこの“分断”を乗り越えられるのか――。

アフリカ映画が日本でロードショー公開されることはまだまだ少ない。コンゴ民主共和国のキンシャサが舞台の『わたしは、幸福(フェリシテ)』(2017年/製作国にはセネガルが入っている)などの傑作も紹介されているが、『ラフィキ ふたりの夢』のように何もかもがクールかつ新鮮で、時代の先端的な息吹が伝わる青春映画に出合えることは稀だろう。必見だ。

『ラフィキ:ふたりの夢』

監督/ワヌリ・カヒウ
出演/サマンサ・ムガシア、シェイラ・ムニヴァ
11月9日より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
senlis.co.jp/rafiki/

©Big World Cinema.

Text:Naoto Mori Edit:Sayaka Ito

Profile

森 直人Naoto Mori 映画評論家、ライター。1971年、和歌山県生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「TV Bros.」「シネマトゥデイ」などでも定期的に執筆中。 YouTube配信番組『活弁シネマクラブ』でMC担当中。

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