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まさかのお騒がせ犯罪をハイブリッド形式で映画化『アメリカン・アニマルズ』

まるで「ギャング映画のパロディ」のような実際の珍犯罪事件を、再現ドラマとドキュメンタリーのハイブリッド形式で映画化した『アメリカン・アニマルズ』。『X-MEN』シリーズのエヴァン・ピーターズ、『ダンケルク』や『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のバリー・コーガンら注目の若手俳優が出演する。

異色のハイブリッド形式は必見!

2004年、米国ケンタッキー州のトランシルヴァニア大学で実際に起こった、まさかのお騒がせ犯罪。ごく普通の大学生たち、男子四人組が巻き起こした強盗事件を異色のスタイルで映画化した快作にして怪作だ。

犯人たちが狙ったのは、大学図書館に貯蔵された19世紀の博物画集、画家・鳥類研究家のジョン・ジェームズ・オーデュボン(1785年生~1851年没)の『アメリカの鳥類』。時価1200万ドル(約12億円)を越える超貴重なヴィンテージ書だ。

しかしこのド素人犯罪の顛末はなんともお粗末。まず男子四人組が強盗計画の参考にしたのがギャング映画の人気定番作なのだから、幼稚すぎて笑ってしまう。

劇中、彼らがDVDで観ているモノクロ映画は、スタンリー・キューブリック監督の1956年の名作『現金に体を張れ』。その他に『華麗なる賭け』『オーシャンズ11』『男の争い』『ザ・ドライバー』『ザ・クラッカー』『ユージュアル・サスペクツ』『マッチスティック・メン』『ゲッタウェイ』『ハートブルー』等といったタイトルのパッケージも映る。

結局、犯人四人組がいちばん影響を受けて参考にしたのが、クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』。あの映画のチームを真似てコードネームで互いを呼び合ったり。

まるで映画ごっこだ。実際、彼らの犯行過程はギャング映画のB級なパロディを観ているよう。なぜそれなりに高等な教育を受けてきたはずの大学生たちが、これほど底抜けに浅はかな犯罪に手を染めたのか?

この映画では、事件の裏にあったものを検証するため、再現ドラマにドキュメンタリー・パートを交え、なんと事件を起こした本物の当事者たち――もちろん今は30歳を過ぎた大人になっている――を画面に登場させる。次第に見えてくるのは、彼らの承認欲求や、ひとりの暴走で皆が引きずられていく集団心理のメカニズムなど……。

監督のバート・レイトンは英国出身。2012年の長編ドキュメンタリー『The Imposter』(日本未公開)は、実在のなりすまし犯による詐欺事件を扱ったもので、英国アカデミー賞最優秀デビュー作賞、英国インディペンデント賞などを受賞している。ニュース番組ではキャスターやコメンテーターに、ただ呆れられて切り捨てられる軽薄な事件の裏にこそ、人間のおかしな宿業や闇が見える――そんな鋭い洞察力を発揮するユニークな俊英監督だ。

もし『アメリカン・アニマルズ』の事件が起こった時代にSNSが普及していたら……と考えると、この「浅はかな犯罪」の内実はさらに興味深いものになるだろう。若き日の犯人4人組によるブラックコメディ的な珍騒動は、最近よく話題になっている不謹慎動画などの炎上の背景に通じるかもしれない。

『アメリカン・アニマルズ』

監督・脚本/バート・レイトン
出演/エヴァン・ピーターズ、バリー・コーガン、ブレイク・ジェナー、ジャレッド・アブラハムソン
2019年5月17日(金)より、新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
URL/www.phantom-film.com/americananimals/

© AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal Pictures Limited 2018

Text:Naoto Mori Edit:Sayaka Ito

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