門田千明さんの初個展で実感した、アートを買う楽しみ|私たちのモノ語り #022 | Numero TOKYO
Art / Editor’s Post

門田千明さんの初個展で実感した、アートを買う楽しみ|私たちのモノ語り #022

Sony Park Miniで、門田千明さんが初個展を開催中ということでさっそく行ってきました。Sony Park Miniは、現在改装中のGinza Sony Parkの地下、数寄屋橋交差点のほぼ真下に位置する西銀座駐車場の一角にオープンした10坪の実験的ポップアップスペース。会場は、葉山にあるアトリエの一部を移設した空間になっていて、ご本人も何日かいらっしゃるそうです(在廊日はSNSなどでご確認を!)。

門田さんのことを知ったのは、Numero.jpで連載していただいている山本憲資さんのご紹介。Numero TOKYO本誌の連載「イラストレーターが表紙を描いたら」で門田さんに描き下ろしていただいた作品がとても素敵で、インスタを追いかけて、一気にファンになってしまったのですが、アーティスト活動を始められたのが2021年ということで実物を拝見するのは今回が初めてでした。

今回展示・販売されているのは、「Seascape」のタイトル通り、自身のアトリエがある神奈川県葉山の海をテーマに描かれた24枚の新作アートピース。アンバランスな水平線で区切られた海と空の表情や水面の揺らめきが独特な色彩とタッチで描かれています。雨にうたれたあとの気持ちがいい晴れ間のような、湿度と温度と自由を感じました。

その中で私がものすごく惹かれてしまい、近くから、遠くから目が離せなくなった1枚がありました。ステートメントにもあるのですが、感情が景色と溶け合ったような抽象的な画に門田さんらしさを感じる一方で、他の作品とは少しニュアンスの異なる明るい光を放つような作品。地に足がついているのに心は遠くへ飛んでいけるような、この地下の空間から解き放ってくれるような希望を感じて、迷わず購入してしまいました。

再現されたアトリエのデスクの上に置かれた、お子さんと一緒に作られた工作や、貼られたシールに暮らしぶりを想像し、共感できたことも後押しになったと思います。我が家も幼い子どもたちが描いた絵や工作が至るところに飾ってあったりして、そんな空間に、この絵がとても合うと感じたのです。おまけに、作品のタイトルが「Here comes the sun」って……ビートルズじゃないですか!(得した気分)

展覧会が終わったら自宅に届けてくださるそうで今からとても心待ちにしています。私にとってアートを買う楽しみは、「Pictures for Elmhurst」をきっかけに以前より身近になりましたが、届くまでの時間もすでに心が潤っているのですよね。昨日の午前中、私が訪れた時点ではまだまだたくさんの作品が残っていましたし、もちろん観るだけでも、ぜひ足を運んでみてください。

Chiaki Kadota 「Seascape」
会場/Sony Park Mini
会期/〜2022年5月2日(月)
営業時間/11:00〜19:00
https://www.sonypark.com/mini-program/list/003/

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Profile

井上千穂Chiho Inoue フィーチャー・ディレクター。『Numero TOKYO』創刊時よりエディターとして主に特集を担当。2011年よりウェブマガジン「honeyee.com」「.fatale」の副編集長をつとめ、19年より出戻り現職。作り手の話を聞き、ものづくりの背景を知るとお財布の紐が緩みます。夜な夜な韓国ドラマに、休日は自然の中に逃避しがち。子連れ旅もお手のものな二児の母。

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