ヒヤスンスとレジリエンス|私たちのモノ語り #001 | Numero TOKYO
Culture / Editor's Post

ヒヤスンスとレジリエンス|私たちのモノ語り #001

大好きなPodcast番組『ジェーン・スー堀井美香の「OVER THE SUN」』のリスナー(互助会)の皆さんとともに、ヒヤシンスを育てるプロジェクトに参加しています。(詳しくはPodcastを聴くかInstagramで@overthesun_tbsradioまたは#ヒヤスンスをチェックしてみてください)

ヒヤシンスは色によって花言葉が異なり、

紫 悲しみ
赤 嫉妬
黄色 あなたとなら幸せ、勝負
白 控えめな愛らしさ
青 変わらぬ愛
ピンク しとやかな可愛らしさ

とあります。で、紫を求めて近所のグリーンショップへ出かけたのは11月初旬のこと。ところがお店に在庫していたのは赤と黄色のみ。私は現実を受け入れるオバさんだから二つとも購入。球根をしばらく冷蔵庫で冷やし(10度以下の冬を経験することで花芽がつきやすくなるそう)、水耕栽培の専用花器を買い、一斉に球根を植える11月19日(over the sunの配信日)を待ちました。

選んだ花瓶はKINTOのAQUA CULTURE VACE。電波望遠鏡のような宇宙と交信しそうなフォルムと色、ほっこりしないデザインにまず惹かれたのですが、球根を置く上の器と水を入れる下の容器が二つのパーツに分かれていて、伸び伸びと植物の成長を促しながら水交換などの手入れも簡単という機能性も兼ね備えた優れもの。

そんなわけで準備万端、陽の当たるリビングで「スンススンス」歌いながら、嫉妬のお尻を浸水させ(もう一方はベランダで鉢植えにし)て悦に入っていると、娘から「おかあさん、ヒヤシンスは根が出るまで暗くしてあげないと。保育園でもそうしてた」と冷静な指導が入り、粛々と玄関に移動……。

左が11月20日、右が1月9日。

それから数週間。なんだか根っこが生え始めると片方のお尻を少し浮かせて座りたがり、水替えのたびに角度を調整してみたもののいっこうに半分しか生えてこない。ひょろひょろです。「そうだ、着水面を広げてみよう!」とKINTOの上の器の穴より少し大きな穴の空いたエリザベスカラーのようなものをクリアファイルで自作してみたところ、不毛地帯だったもう半分からもキバのような太い根っこが生えてきました。

ところがホッとしたのも束の間、今度は球根の下のほうが心なしか青黒い。もしやカビ!? 水に浸かりすぎ? と慌てて、球根の下のほうの皮を少し剥いてから元の器に……。斜に構えたスンスをあるがまま見守れなかった自分に呆れつつ、みずみずしい芽から生命力を感じつつ、嫉妬あらため執念の花を咲かせてくれるのを祈るように待つことさらに数週間……。

いよいよ立春を目前にリビングへ引っ越してきたスンスがこちらです。相変わらず根っこはひょろひょろ薄いけれど、これはもう開花ですね!(桜で言うと一分咲きぐらい) 植物の力もKINTOの専用花器も疑うもんじゃなかった。素晴らしいです。

あっという間の3ヶ月間。いつもなら、自分は何か成長したかな、なんだか冴えないな……とつい自己嫌悪に陥ってしまうところだけれど、スンスのいい香りに包まれ深呼吸をしてみればなんだか清々しくて、互助会の方々との連帯感も相俟って活力がみなぎってきます。

この花瓶で次はアボカドの種を水耕栽培してみようと思います。(1ヶ月ぐらいで芽と根が出るらしいです!)

「【連載】私たちのモノ語り」をもっと読む

Profile

井上千穂Chiho Inoue フィーチャー・ディレクター。『Numero TOKYO』創刊時よりエディターとして主に特集を担当。2011年よりウェブマガジン「honeyee.com」「.fatale」の副編集長をつとめ、19年より出戻り現職。作り手の話を聞き、ものづくりの背景を知るとお財布の紐が緩みます。夜な夜な韓国ドラマに、休日は自然の中に逃避しがち。子連れ旅もお手のものな二児の母。

Magazine

JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

Future Vision

25年未来予報

オンライン書店で購入する