『サンドラの小さな家』にみる、アイルランドの「メハル」とセルフラブのこと | Numero TOKYO
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『サンドラの小さな家』にみる、アイルランドの「メハル」とセルフラブのこと

公開から少し時間が経ってしまったのですが、映画『サンドラの小さな家』をご紹介させてください。 アイルランドの新星クレア・ダンが企画・脚本・主演をつとめ、フィリダ・ロイド監督がメガホンをとったこの作品。ストーリーは、ダンが親友から受けた「ホームレス状態になってしまった」という一本の電話がきっかけで生まれました。 夫からのDV被害に遭い、二人の幼い娘たちとともに逃げ出したサンドラ。公営住宅の順番待ちは長く、ホテルでの仮住まいの生活から抜け出せずにいた彼女が、手頃な家を自分で建てようというアイデアを思いつきます。隣人たちと助け合いながら小さな家を建てるサンドラは、自分の人生も再建すべく奮闘するのですが──。

正直、目を覆いたくなるほどつらいシーンもあります。でも、困難の中にあっても必ず希望があるということ、また自分自身の人生を取り戻していこうとするサンドラの姿にとても勇気づけられます。また、サンドラに手を差し伸べる隣人たちも、彼女を助けることで救われていくのですが、これは、アイルランドで古くから伝わる「メハル」という精神に由来するそうです。本誌5月号で「セルフラブ、私の場合」という特集を担当したのですが(WEBでも一部掲載中!)、そこで取材したみなさんが表現や方法は違えど「自愛とは、すなわち人を愛すること」と語られていたこととも重なって、とても共感しました。

映画の公開にあたって、シングルマザーへの就労支援を行なっている日本ロレアル株式会社ヴァイスプレジデントの楠田倫子さん、社会派クリエイティブを掲げる株式会社arca CEO/クリエイティブディレクターの辻愛沙子さんとフィリダ監督が女性のエンパワメントについて語った鼎談動画などもYouTubeで配信されています。原題「herself」というタイトルにまつわるお話も興味深いので、ぜひ作品と合わせてご覧になってみてください。

『サンドラの小さな家』

監督:フィリダ・ロイド
共同脚本:クレア・ダン、マルコム・キャンベル
出演:クレア・ダン、ハリエット・ウォルター、コンリース・ヒル
https://longride.jp/herself/
絶賛公開中
©Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020

Profile

井上千穂Chiho Inoue フィーチャー・ディレクター。『Numero TOKYO』創刊時よりエディターとして主に特集を担当。2011年よりウェブマガジン「honeyee.com」「.fatale」の副編集長をつとめ、19年より出戻り現職。作り手の話を聞き、ものづくりの背景を知るとお財布の紐が緩みます。夜な夜な韓国ドラマに、休日は自然の中に逃避しがち。子連れ旅もお手のものな二児の母。

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