海を舞台にした、珠玉の名作映画8選
この夏、海へ出かける予定がない人も、映画でビーチ気分に浸ってみてはいかが? カリフォルニア、ハワイ、南仏…世界のビーチを舞台に繰り広げられる名作を紹介!(「ヌメロ・トウキョウ」2019年6月号掲載)
『女っ気なし』(2011)
非モテ男子だって海に行きたい!
ピカルディー地方(ノルマンディーのすぐ隣)の小さな港町オルト。風光明媚というには少し寂れたこの土地に住む冴えない地元の青年シルヴァン。彼が管理するアパルトマンにパリ近郊から魅力的な母娘がやって来て、“女っ気なし”の彼の日常がにわかに色めき立つ……。イケメンと美女だけが恋の主役じゃない! フランス映画の新世代監督ギヨーム・ブラックが描く甘酸っぱい夏の終わりの物語。
『50回目のファーストキス』(2004)
マリンブルーの海が見守る切ない恋
私たちに身近な人気リゾートの絶対王者(王地?)といえばやはりハワイ。オアフ島東海岸中心の観光スポットをバックに、アダム・サンドラーとドリュー・バリモアというロマンティックコメディ界の最強タッグが珠玉のラブストーリーを繰り広げる。記憶障害で前日のことを忘れてしまう彼女のため、愛を告白し続ける男。毎日新しい恋に落ちる二人。2018年には同じオアフ島を舞台に日本版リメイクも。
『海辺のポーリーヌ』(1983)
少女が過ごすバカンスと大人の恋
フランス北西部に位置する避暑地ノルマンディー。海辺の別荘を訪れた15歳の少女ポーリーヌ(演じるアマンダ・ラングレのフレンチロリータぶりがヤバい!)が初めて経験する恋の行方は? バカンス映画を撮らせたら右に出る者はいないエリック・ロメール監督の軽やかな逸品。名カメラマンのネストール・アルメンドロスが捉える晩夏のビーチは潮風の感触まで繊細に伝え、うっとりさせられる。
『グラン・ブルー』(1988)
海と人間の魂が崇高に触れ合う
海の神秘に魅せられた男の宿命。実在のダイバー、ジャック・マイヨールとエンゾ・モリナーリをモデルにしつつ独自に紡がれた感動の物語。素潜りで記録の限界に挑むフリーダイビングの壮絶さと、幻想的なイルカの群れ。至高の映像美(主なロケ地はシチリア東岸のタオルミーナ)にエリック・セラの澄明な音楽が響く。監督のリュック・ベッソンはネイチャードキュメンタリー『アトランティス』も発表。
『気狂いピエロ』(1965)
南仏の水平線に輝く永遠の自由とロマン
「見つかった。何が? 永遠が。海に溶け込む太陽が」――。無軌道な旅の果て、南仏の海に重なるアルチュール・ランボーの詩『地獄の季節』の一節。若き日の鬼才J=L・ゴダールの才気が最高潮にみなぎるギラギラした真夏の逃避行。ダイナマイトを顔に巻いたジャン=ポール・ベルモンドの鮮烈さ。ボーダーワンピース(ロケ先で調達した安物らしい)を着たアンナ・カリーナはファッションアイコンと化した。
『天国の口、終りの楽園。』(2000)
ひと夏で爆発するラテンのエネルギー
メキシコシティから南下して伝説のビーチを探し、カリブ海沿岸までドライブ。高校を卒業したばかりの少年二人と、ワケありの年上のスペイン人女性の旅を描くロードムービー。灼熱の太陽に照らされた肌。移りゆく街や自然の風景、海の青さに眩惑的な時間感覚が混じり合い、すべてが肉感的で官能的。監督はのちに『ゼロ・グラビティ』や『ROMA/ローマ』を撮る天才アルフォンソ・キュアロン。
『ビッグ・ウェンズデー』 (1978年)
ノスタルジックな西海岸の風に吹かれて
もう一つの『アメリカン・グラフィティ』とも呼ばれるサーフィン青春映画のクラシック。1962年、南カリフォルニア(当時のマリブはサーフ文化の中心地)で伝説の大波を待ち続ける男子三人組。馬鹿騒ぎの日々を送り、やがて彼らはベトナム戦争の影を経て大人になっていく。1974年までの12年間の推移を綴る友情の軌跡。ダイナミックな波乗りシーンはドキュメンタリータッチで迫力も美しさも満点。
『ブルークラッシュ』(2002)
史上最強のサーフガールが大波に乗る
ハワイのオアフ島ノースショア。このサーファーたちの聖地で暮らす地元の女子4人組を爽やかに描いたエナジームービー。大会優勝を目指してパイプラインの波に挑むアン(ケイト・ボスワース)と、彼女を支える仲間たちのシスターフッド。全米大ヒット当時、ファッション界や音楽シーンに多大な影響を与え、シェリル・クロウが「ソーク・アップ・ザ・サン」のMVに本作の映像を使用したのは有名。
Illustration: Yuko Saeki Selection & Text:Naoto Mori