
シャネル(CHANEL)の新作ハイ ジュエリー コレクション 「リーチ フォー ザ スターズ(Reach For The Stars)」の発表会で京都に滞在した翌日、ホテルに隣接した世界遺産の元離宮二条城で開催中の「アンゼルム・キーファー:ソラリス」展へ足を伸ばしてきました。
ソラリスとはラテン語で「太陽」を意味する言葉。日本のアマテラス、エジプトのラー、古代ローマのソル。人類は昔から太陽神を仰いできたこともあり、キーファーはこの展覧会で、人類文化における太陽の役割を普遍的なものとして強調したかったようです。

受け付けを済ませると、前庭に聳え立つラーが出迎えてくれます。こちらは鉛で作られた彫刻。キーファーは鉛を、「人間の歴史の重さを支えるに十分な唯一の物質」と呼び、天へと昇る渇望と地上の重荷から逃れられない引力の二面性を表現しています。
宇宙の構造と宗教的信仰に強い関心を抱いていたキーファーは、西田幾多郎の哲学に深い共鳴を感じていたそうです。西洋哲学を説いたイマヌエル・カントの観念論とは明確に対立するものだったそうです。

西田幾多郎の哲学とカントの理想主義……。ちと難しいのでAI先生に要約してもらったところ……カントは、「私たちが世界をどうやって理解しているのか」ということを重視し、「世界」は私たちの認識の仕組みを通して形成される」という考え方で、西田先生は「世界は、私たち自身がその中で生き、動き、関わり合うことで形作られる」という考え方。対立というより、カントに東洋的視点を加えて発展させた感じですね。
カントは、自己は認識する存在。「世界をどのように整理するか」に着目
西田先生は、自己は行動する存在。「世界の中で自己がどう関わるか」に着目
だそうです。ふむ。哲学はとっても難しいのですが、考えるだけでも少しは視野が広がる気がしております。そんな説明を、田中泯さんのガイド音声で拝聴しながら進んでいきます。

代表的な作品のひとつが「オクタビオ・パスのために」。この展覧会の象徴的な作品です。ゴッホの構図を引用しつつ、原爆投下後の焦土を描いています。

↑中央部分にあるのが「怪物のように叫ぶ頭部」と説明にあり、じ〜っと見ていると、見えてきました。頭部を逆にすると・・・↓


「モーゲンソー計画」は、キーファーの代表的なインスタレーション作品です。

アメリカ財務長官モーゲンソーが 1944 年に提案したドイツの脱工業化政策に着想を得て、何千本もの金色の麦で構成されています。

キーファー作品には多くの女性の像があるのですが、「古代の女性たち」では、古代世界において哲学や科学、芸術分野で重要な知的貢献をしながらも、見過ごされてきた女性たちを称えています。これらの作品では、それぞれの人物の功績を表す衣装やフォルムを通じて、その遺産が表現されています。

1945年、戦争終結の年にドイツで産声を上げたキーファーは、父親がナチス軍に支えていた軍人という事実(父の軍服を着たキーファーがナチス式敬礼をしている作品を20代に制作)もあり、故国の戦争の罪と影を背負い作品を製作しつづけています。美術家である自分には何ができるのか、すべきなのか、そうすることで何かを、誰かを、果てはドイツ人の血をもつ自分自身を救えるのかを、問い続けています。
6月22日まで開催中なので、京都に行かれる方は、ぜひ足を運んでみてください。(事前予約とチケット購入をお勧めします。)
2024年、ヴィム・ヴェンダース監督によるドキュメンタリー映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』も配信中です。
「アンゼルム・キーファー:ソラリス」
会期/2025年3月31日(月)〜6月22日(日)
会場/二条城
住所/京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
開場時間/9:00〜16:30(二条城は8:45〜17:00)
※入場は閉場の30分前まで
休館日/会期中無休
料金/一般 2200円/京都市民・大学生 1500円/高校生 1000円
URL/https://kieferinkyoto.com/
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