「WITHERED FLOWERS」で魅せた、写真家・田島一成の新境地 | Numero TOKYO
Art / Editor’s Post

「WITHERED FLOWERS」で魅せた、写真家・田島一成の新境地

©️Tajima Kazunali, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

ファッション、音楽、また広告業界でも幅広く活躍するフォトグラファーの田島一成(TAJJIEMAX)が、枯れてゆく花々を撮り溜めた作品「WITHERED FLOWERS」を発表しました。

美しく咲き誇る花ではなく、枯れて朽ち果てていく花々をこんなにも美しく愛でることができるのは、田島一成がファインダーの向こうの被写体に“もののあはれ”を感じ取り、常に“無常の美”を投影するからではないでしょうか。

©️Tajima Kazunali, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

年齢を重ねるごとに、この儚さに心が惹かれていくのは、生きていることの大変さや辛さ、影や暗闇を知りながら、それでもひとときの楽しさや情愛を見つけて精一杯生きていることを知っているからなのではと自問してしまいます。

©️Tajima Kazunali, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery
©️Tajima Kazunali, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

この写真集に坂本龍一が寄せた言葉にも同じ重みを感じます。
「枯れた花が好きだ。だけどいつも思うのは、花は茎から切りはなされた時、あるいは土とのつながりを断たれた時、すでに死んでいるのだ。だから、一見美しく生けられた花もすでに死んでいるわけで、その先に枯れるということがある。枯れるといえば、当然僕ら人間が枯れるということに考えが及ぶので、僕のように枯れてきたということは、花のことを考えてみれば、すでに土とのつながりを絶たれているということかもしれない。僕はファッション写真というものが、写真というアートと独立して存在しているということを、このタジイマックスの写真集で初めて知った。そして彼があくまでファッション写真を撮る、ということに矜持のようなものを感じていることも。
枯れた花は美しい。なぜ美しいと感じるのか。やはりそれは僕らがそこに無常を見るからに他ならないだろう。花は生死の事実を美しく見せてくれるのだ。そもそも花はなぜ美しいのか。ある学者によると、それは花が美しくあって、昆虫や僕らを楽しませたいからなのだという。僕はそれを信じる。」

©️Tajima Kazunali, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery
©️Tajima Kazunali, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

枯れて朽ち果てていく花の美しさで無常の美を表現した、田島一成の『WITHERED FLOWERS』展に、ぜひお運びください。

田島一成(たじま かずなり)
『WITHERED FLOWERS』

会期/2020年12月3日(木)〜2021年1月30日(土)
第一期の12月3日〜26日、第二期の1月7日〜30日で展示変えを行います。
時間/11:30〜13:00 / 14:00〜19:00 木・金・土曜(日〜水曜・祝日は休廊)
場所/Akio Nagasawa Gallery Aoyama

田島一成オフィシャルサイトはこちらから。
田島一成インスタグラム

同時に写真集『WITHERED FLOWERS』限定900部(ナンバー入り)も刊行します。
予定価格:¥6,000
出版社:Akio Nagasawa Publishing

Profile

田中杏子Ako Tanaka 編集長。ミラノに渡りファッションを学んだ後、雑誌や広告に携わる。帰国後はフリーのスタイリストとして『ELLE japon』『流行通信』などで編集、スタイリングに従事し『VOGUE JAPAN』の創刊メンバーとしてプロジェクトの立ち上げに参加。紙面でのスタイリングのほか広告キャンペーンのファッション・ディレクター、TV番組への出演など活動の幅を広げる。2005年『Numéro TOKYO』編集長に就任。著書に『AKO’S FASHION BOOK』(KKベストセラーズ社)がある。
Twitter: @akotanaka Instagram: @akoakotanaka

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