浜野謙太インタビュー「松田翔太と出会って火がつきました」 | Numero TOKYO
Interview / Post

浜野謙太インタビュー
「松田翔太と出会って火がつきました」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。 vol.21はミュージシャンで俳優の浜野謙太にインタビュー。

バンド・在日ファンクのリーダーであり、独特のキャラクターで俳優としても活躍する浜野謙太。通称「ハマケン」として多方面から注目される彼が、連続ドラマ『ディアスポリス−異邦警察−』(MBS/TBS)に出演。松田翔太や、邦画界の実力派監督が揃った撮影現場で感じたこととは。また2児の父親として奮闘するプライベートにも迫る。

新作ドラマでは特殊メイクで登場

──『ディアスポリス−異邦警察−』がスタートしましたが、原作はご存知でしたか?

「マンガはそんなに詳しくないんですが、すぎむらしんいち先生の作品大好きで『モーニング』で連載していた頃から読んでいました。だからオファーが来たときは嬉しかったです」

──浜野さん演じる鈴木は、横領事件の参考人として追われ、顔を整形して主人公・久保塚早紀(松田翔太)の相棒になるという設定です。

「最初に特殊メイクで登場して、“整形後”に僕のこの顔になるんですね。それで『やったー!』と喜ぶという(笑)。特殊メイクは大変でしたが、原作を基に新しい作品にするというコンセプトだったので、思い切り演じられたし、映画界を代表する4人の実力派監督が揃っていたので、すごく面白かったです」

──冨永昌敬氏(『パビリオン山椒魚』『ローリング』)、熊切和嘉氏(『海炭市叙景』『私の男』)などが監督をされるんですね。

「男の意地をかけるような熱い現場でした。特に主演の松田翔太君が、みんなの心に火をつけるのが上手で。闇雲に『当ててやろうぜ!』というのではなく、火をつけるべきところに着火するんですよ。翔太君もこの監督たちをもっと世の中に知ってもらいたいという気持ちがあっただろうし、彼も俳優人生の代表作にしたかったんだと思います」

今年は勝負の一年に

──松田翔太さんとは、どんな話をしたんですか?

「お互い30代なんですけど、僕ら世代がどういう表現をするべきか、という話をしました。10代20代の若者のように、斜に構えて『俺は俺』ではなく、観客の皆さんに最高のエンターテインメントを提供しながら、実は殴りかかるぐらいの過激な思いを腹に抱えていなくちゃいけない。松田君は『在日ファンクにはそれを感じるから好きだ』と言ってくれて、それで僕も燃えましたね」

──松田さんとの出会いは大きかった?

「初共演だったんですが、どんどん仲良くなって、よく飲みに行きます。監督陣、スタッフも含めて赤羽で飲んだこともあって、自分の映画人生はどの作品で始まったのか、あのシーンはこうだとか語るのを、僕はニコニコ見ているという。みんな映画が大好きなので男臭くて熱いです」

──在日ファンクとしても、アルバム『レインボー』(5月11日)がリリースされ、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』にも出演されますね。

「今年は、誰かにライトを当ててもらうというより、自分から前にでるような勝負の一年。これでダメだったら、来年から僕の顔はメディアに出ないかもしれません」

──今後も俳優と音楽の二本柱で活動されるんでしょうか。

「一時期は、どちらかに決めないといけないと考えていたんですが、中途半端と言われても自分は2つやるんだと決めたんです。どちらかに偏るとダメなんですよね。以前は、面白そうなオファーだったらどんどん受けて、自分の未知の領域に賭けるところがあったんですが、今は、できない部分はできないと認めて、できることに力を注ごうと」

夫婦の時間がないことが今の悩み

──プライベードでは2人のお子さんを持つお父さんですが。

「仕事もありますが、なるべく一緒にいる時間を作るようにしています。僕は『苦しさ』からは逃げてもいいけれど、『難しさ』からは逃げちゃいけないと思っているんです。子どもとの時間を作ることや、子育ての難しさには負けたくないので、妻と揉めつつも(笑)なんとかやっています」

──試行錯誤しながら“家庭”を作っている途中なんでしょうか。

「子どもが2歳と1歳で小さいので、まだ安定していない感じがあって。映画『そして父になる』で、リリー・フランキーさん演じる子だくさんのお父さんに『子どもは時間だよ』という台詞があるんです。血や絆じゃない、いい父親になろうとするより一緒にいる時間のほうが重要だと。だから、子どもの面倒をみて“あげた”ではなく、自然に当たり前のことになればいいなと思っています」

──仕事と子育てにお忙しいですが、自分のための趣味の時間はあるんでしょうか。

「実は、子どもが生まれて初めて『俺、なにもねぇぞ』と気付いたんですね。それまで周りにいつも仲間がいたので、自分自身と向き合っていなかった。今回、松田翔太君や監督たちに出会って、この人たちと一緒に仕事するのに、自分は映画のことを知らなすぎると、ようやく今、映画館に通いだしました。やっと自分を見つめられるようになったのかもしれません」

──今、充実されていますか。

「不満があるとしたら、夫婦の時間がないこと。もう、これは本当に切実な問題なんですよ。子どもが小さいし、なかなか寝付かないので2人だけの時間がない。今を逃したら僕らの間に距離が生まれてしまいそうで、それだけはどうにか頑張りたいです。どうしたらいいんですかね。これまで、こんなに他人のために生きたことがなかったので」

Photos:Ayako Masunaga 
Stylist:Toshiaki Seki
Hair & Make-up:HAMA 
Interview & Text:Cosmos Hoshima 
Edit:Yuko Fukui

Profile

浜野謙太(Kenta Hamano)1981年神奈川県生まれ。昨年解散したSAKEROCKの元トロンボーン担当で、在日ファンクのボーカル兼リーダー。俳優、タレントとしても映画、ドラマ、バラエティなどに多数出演。映画『婚前特急』で第33界ヨコハマ映画祭・最優秀新人賞を受賞。

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