
美術館で見る映像作品と、劇場で体験する舞台作品。その境界を行き来するような作品が、東京芸術劇場に登場する。
沖縄出身の映像作家・山城知佳子による『リコーリング(ス)―シアトリカル・バージョン』。写真、映像、パフォーマンスを通して、沖縄の歴史や政治、文化を見つめ続けてきた山城が、沖縄、東京、パラオという三つの土地から、戦争をめぐる記憶を立ち上げる。
劇場空間に散りばめられたスクリーンから聞こえてくるのは、証言、再現、演奏、漫才など、さまざまな声と身振り。登場するのは、沖縄戦後史の記憶を刻んできた平良修牧師、ジャズシンガーの齋藤悌子、ミュージシャンの喜納昌吉、東京大空襲の証言者・亀谷敏子ら。そして、山城の父である小説家・山城達雄が、沖縄移民の子として戦前・戦中を過ごしたパラオの風景も映し出される。
一つの歴史を、一つの物語へときれいに整理するのではない。異なる土地に残された声や身体、そして語られない〈沈黙〉までを並置することで、戦争の記憶を複雑なまま差し出していく。それは、第二次世界大戦を「過去に終わった出来事」としてではなく、現在の私たちにつながるものとして身体的に感じ直す試みでもある。
本作は2025年、アーティゾン美術館でインスタレーションとして発表。その後、戦後80年特別企画として那覇文化芸術劇場なはーとの劇場空間に合わせて再構成された。そして今回は、東京芸術劇場という新たな空間に応答するかたちで、さらに構成を更新する。観客も一つの席に座り続けるのではなく、空間を移動しながら作品を鑑賞する。
美術館から那覇の劇場へ、そして東京へ。同じ映像であっても、置かれる土地と空間によってその意味は変わっていく。とりわけ沖縄から遠く、同時に日本の政治や文化の中心でもある東京で、沖縄、東京、パラオの記憶が重ねられることには、また別の意味が生まれるだろう。
映像を見るというより、その中に置かれ、複数の声に囲まれる。戦争の記憶を「知る」ことから一歩進んで、どのように受け取り、次へ手渡していくのかを問いかける時間になりそうだ。
舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」山城知佳子『リコーリング(ス)―シアトリカル・バージョン』
ディレクター[映像・構成・演出]/山城知佳子
日程/2026年10月30日(金)~11月3日(火・祝)
チケット(全席自由・入場整理番号付・税込)/一般:¥6,000 U29:¥3,500
U18:¥1,000 障害者割引:一般料金から10%引き
会場/東京芸術劇場 プレイハウス
※途中入退場自由
※映像には日本語・英語字幕あり
舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」上演プログラム
