こんにちは! ワインブロガーのヒマワインです。
ワインといえば、フランスやイタリアといった国を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。でも、今回スポットを当てるのは「新世界(ニューワールド)」のワインです。フランス、イタリア、スペイン、ドイツといったヨーロッパの産地をワインの世界では「旧世界」と呼び、アメリカやニュージーランドなど非・ヨーロッパの産地を「新世界」と呼ぶのです。
旧世界に劣らぬ品質がありながらリーズナブルだったり、その国にしかない品種に出会えたり、伝統にとらわれない個性が光ったりと、新世界のワインは魅力いっぱい! というわけで、本連載でお馴染みの沼田英之ソムリエと一緒に、新世界の6本を巡る旅にご案内。さっそくいってみましょう!
「新世界」のワインとは
ヒマワイン(以下、ヒマ)「今回のテーマは“新世界のワイン”。そもそも新世界って、旧世界と比較してどこが違うんでしょうか?」
沼田店長(以下、店長)「新世界の産地=ぶどうが熟しやすい産地、と言えると思います。暖かく、雨が少なく、ぶどうの栽培に向いている土地で、雨が少なければ灌漑で補うこともできる。結果、良質なぶどうを大量に栽培可能で、それが品質と価格に直結しています」
ヒマ「ヨーロッパはワイン法で畑に水を撒いてはいけなかったりするみたいですが、そういう“縛り”が少ないってことですね」
店長 「はい。さらに、その土地ならではの魅力的な品種からワインが造られるのも新世界の特徴です。あとで紹介しますが、南アフリカのピノタージュ、チリのカルメネールといった品種は、ほとんど“その国固有”と言ってもいいですから」
ヒマ「しかも、価格的にも、新世界は入手しやすいですよね」
店長 「もちろん高級ワインもありますが、同じ品質でも、伝統国よりぐっと手が届きやすいものが多いですよね。今回は、そんな新世界と呼ばれる国々を、その国を代表する品種のワインとともにご紹介します!」
ヒマ「いいですね〜。さっそく味わっていきましょう!」
1. 栽培面積の8割以上がこれ! ニュージーランドの「ソーヴィニヨン・ブラン」

店長「1本目はニュージーランドを選びました。品種はソーヴィニヨン・ブランです」
ヒマ「ニュージーランドといえば、ソーヴィニヨン・ブランの白ワインですね」
店長「ニュージーランドはブドウの作付けの8割以上がソーヴィニヨン・ブランで、赤のピノ・ノワールが1割弱なんです。もう“ニュージーランド=ソーヴィニヨン・ブラン”と言っていいくらい。グレープフルーツやハーブのような清涼な香りが特徴の品種で、フランスのロワール地方も有名な産地ですが、ニュージーランドも世界的に評価されています」
ヒマ「個人的に、1,000円台で買えてもっともハズレが少ないのが、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランだと思っています。北海道で海鮮丼を食べたら大概おいしいですが、それくらいの信頼感があります(笑)」
店長「同感です。国を挙げて栽培しているだけに、安定感が頭抜けていますよね。今回ご紹介する1本はちょっと特別で、造っているのは日本人醸造家の岡田岳樹さん。フォリウム・ヴィンヤードというワイナリーです」
ヒマ「日本人が! しかもこれ、2013年ですよね。ニュージーランドの白でこの年数が残っているのって、かなり珍しくないですか」
店長「とても珍しいです。しかも栓が天然コルク。ニュージーランドはスクリューキャップが主流なので、そこも珍しいんですよ」
ヒマ「……あ、これすごい。パッションフルーツやグリーンな感じのソーヴィニヨン・ブランを想像していたら、もっと熟した果実の厚みがある。おいしいなあ」
店長「2013年とは思えないフレッシュさでしょう。色もそんなに濃くなっていないし。造り手が丁寧に仕上げた1本ですね。フレッシュな魚介にレモンを絞ったものやスモークサーモンと合わせたら、最高の前菜になります」
ヒマ「さすがニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン。いきなり、『今日イチ』かもしれない1本が出てきました」
2. 実は高級白ワインの世界的産地! カリフォルニアの「シャルドネ」

店長「2本目はカリフォルニア。品種はシャルドネです」
ヒマ「シャルドネっていうのは、フランスのブルゴーニュ地方が有名な、世界一有名な白ワイン品種ですね。そして、世界中のワインラバーに愛されるブルゴーニュのシャルドネに対抗できる産地といえば、もうカリフォルニアしかない、という印象です」
店長「そう思います。で、この1本は正直に言うと別格。造り手はコングスガード。カリフォルニアを代表するシャルドネの造り手に数えられる名手です」
ヒマ「すごいワインが出てきましたね。ちなみにお値段は……?」
店長「4万円ほど。今日紹介するワインの中では完全に飛び抜けています」
ヒマ「一生に一度は飲みたい、という1本です。これをテイスティングできるとは役得でしかないですね……うーん、ドライパイナップルや焼きリンゴのような濃厚な味わい。ものすごい奥行きを感じます。ちょっとこれはすごいな。桁違いのワインですね」
店長「液体からの“圧”がすごいですよね。価格は高いですが、それに見合うだけのクオリティがあります」
ヒマ「その圧に、料理はどう立ち向かえば?」
店長「このワインのように、オーク樽の効いたこのシャルドネには、ビスクが合うんです。甲殻類のソースですね。エビの殻からとった濃いソースに生クリームを合わせて、パスタや魚にかけた料理がこのワインに限らず、カリフォルニアのシャルドネにはよく合いますよ!」
ヒマ「味わいの奥深さはともかく、味の方向性は典型的なカリフォルニアのシャルドネですから、お値段の安いものを選んでビスクと合わせるの、良さそうですね」
3. 南アフリカといえばこれ! 果実味たっぷりの赤ワイン「ピノタージュ」

店長「3本目は南アフリカ。品種はピノタージュ。世界中で人気のピノ・ノワールっていう品種と、サンソーっていうちょっとマイナーな品種を掛け合わせて生まれた南アフリカならではの品種です」
ヒマ「南アフリカは価格と品質のバランス、いわゆるコスパにおいて世界最強レベルの産地ですよね。ピノタージュも安くておいしいものが多くある印象ですが、南アフリカ以外ではほとんど見ないですよね」
店長「その通り。南アフリカワインといえば、白のシュナン・ブランもいいですが、フランスでも栽培されているシュナン・ブランに対し、赤のピノタージュはほぼ南アでしか見かけません」
ヒマ「グラスに注いでみると、少し淡くて輝度の高いルビーのような色合い。味わいは可愛らしい果実味にキュッとした酸もあって、事前情報なしで飲んだらフランスのピノ・ノワールって答えちゃうかもしれません」
店長「一般に、南アフリカのピノタージュって、ちょっと赤土っぽさとか、埃っぽさみたいな独特の癖があって、そこが個性でもあるのですが、このロングリッジのピノタージュはその点がすごく控えめで、端正なんです」
ヒマ「すごく高級感のある味わいですが、価格は3,000円台っていうのも魅力です。友人宅への手土産にも、週末の少しリッチなディナーにも良さそう」
店長「合わせるならマグロのカルパッチョや、カジキのソテー。最近僕がよくやるのがバルサミコと醤油を混ぜたソースで、淡めの赤によく合うんです」
ヒマ「それは絶対に合う!」
4. コーヒーをまとった料理と合わせる!? チリの「カルメネール」

店長「4本目はチリ。品種はカルメネールです」
ヒマ「次はチリですね。チリワインは日本への輸入量NO.1。世界最強レベルの安くておいしいワインの宝庫という印象です。コンビニやスーパーでもたくさん売られています」
店長「そんなチリを代表する赤ワイン品種がカルメネールです。もともとフランスから持ち込まれた品種で、長い間『メルロー』という別の品種だと勘違いされていたらしいのですが、今やチリといえばこれという品種になっています。その特徴は、ミルクコーヒーっぽさ。銭湯でお風呂上がりに瓶から直接飲むとおいしいコーヒー牛乳、あの感じがあるんです」
ヒマ「本当だ、たしかにコーヒー感ありますね」
店長「はい。僕は赤ワインにミルクコーヒー感があると『これはカルメネールかな?』と推理します。カルメネールで造るワインはリーズナブルな価格のものが多く、よく栽培されているだけに品質も高いものが多いんですよ。チリは南北に長く、海流の影響で意外と冷涼。だから酸も感じられて、バランスがいいんです」
ヒマ「それでいて、このワインでいえば2,200円と買いやすい値段なのがうれしいですね」
店長「マリアージュとしては、思い切ってコーヒーをまとわせた料理を試してもらいたいですね。たとえば羊や豚を焼く際に、ローズマリーと炒ったコーヒー豆をまぶして焼いてみる。周りについたコーヒーの香りとカルメネールのコーヒー感が、本当に“結婚”する感覚を味わってもらえると思います」
ヒマ「ちょっと勇気がいりそうですが、一度試してみたいです!」
5. ステーキと最強の相性! アルゼンチンの「マルベック」

店長「南米つながりで、5本目はアルゼンチンのワインを紹介しましょう。品種はマルベックです」
ヒマ「マルベックって、“黒ワイン”って呼ばれるくらい色が濃い品種ですよね」
店長「アルゼンチンのマルベックは標高1,000メートル以上の高地で造られることが多いんです。標高が高い土地は紫外線が強いからブドウが皮を厚くして身を守る。ワインの色素は主に果皮から抽出されるので、できるワインの色合いも濃くなるわけです。同じく皮由来の渋みもしっかりありつつ、昼夜の寒暖差が大きいので、酸もちゃんとあるワインに仕上がります」
ヒマ「そしてアルゼンチンといえば、なんといってもステーキですよね」
店長「アルゼンチンの牛肉消費量は世界で1位とも日本人の10倍牛肉を食べるとも言われますからね。その国を代表する赤ワインとなれば、ステーキに最適化されているに決まっています」
ヒマ「そうなんですよね。その土地に合う品種で造られているだけでなく、その国の伝統料理に合う味わいになっているのも新世界ワインの魅力だと思います」
店長「はい。アルゼンチンのマルベックを買ってきて、赤身の牛肉に塩だけで味付けをして合わせる。凝ったソースより、塩でいくのがいちばん寄り添う」
ヒマ「マルベックがまるでソースのように作用する。日本の食卓がごはんと味噌汁ならば、アルゼンチンは牛肉とマルベックっていう印象すら受ける、最高の組み合わせですね!」
6. オーストラリアの「シラーズ」にバーベキューはおまかせあれ

店長「最後はオーストラリア。品種はシラーズです。フランス・ローヌ地方に『シラー』という赤ワイン品種がありますが、それのオーストラリア版といったところです」
ヒマ「オーストラリアといえば、やっぱりシラーズ。濃くて、果実味がたっぷりで、とにかく飲みやすいイメージがあります」
店長「そうですね。『シラー』という品種は世界中で造られていますが、それを『シラーズ』と呼ぶのはほぼオーストラリアのみ。黒胡椒のようなスパイシーなニュアンスがあるのが特徴の品種でもあります。ユーカリのような、ちょっとグリーンな印象も伴います。最近では“ゲイミー(Gamey)”なんて表現もするのですが、獣っぽさというか、野生のニュアンスも感じられると思います」
ヒマ「このワインなんかまさにそうですね。2025年と最近のヴィンテージですが、濃くて、野生味たっぷりです」
店長「オーストラリアといえばバーベキュー。このワインにはちょっとスモーキーなニュアンスもあるので、バーベキューには最適すぎます。羊にスパイスをまぶして、ちょっと焦がしちゃったくらいのところにかぶりついて、このワインで流し込む」
ヒマ「なんですかそれは。最高にもほどがあるじゃないですか!」
店長「ヴィンテージがまだ“若い”ので、今買っておいて来年か再来年の夏に飲むのも楽しそうですね」
旅するように、ワインを飲もう。

ヒマ「6本を通して思ったのは、新世界のワインと向き合うと、その国の歴史や食文化にまで思いを馳せられるってことですね」
店長「『新世界』とは言いますが、どの国もワインが持ち込まれてから数百年経っているわけですよね。その土地の料理と合わせる文化がちゃんと根づいているんです。ステーキに合うアルゼンチンのマルベック、バーベキューに合うオーストラリアのシラーズはその典型です」
ヒマ「今回いただいたワインはどれも高品質で、その分価格もそこここ高めでしたが、紹介してもらった国と品種の組み合わせは、どれも1,000〜3,000円台でおいしいものがたくさん選べばす。ふだん飲みに手が届くのがうれしいですよね」
店長「最初に申し上げたように、新世界のワインはどこもワイン用ぶどうの栽培に適した土地で造られ、大規模に造られていることもしばしば。それだけに価格もとってもリーズナブルなことが多々あることがわかってもらえたと思います」
ヒマ「もちろん、フランスやイタリアといった伝統国にはその国だけの絶対的な魅力がありますが、新世界のワインにもそれぞれ個性があって、それも楽しい」
店長「その国のワインが気に入ったなら、いつかその国を旅してみたくなりますよね。気に入った国のワインを現地で飲んだら、さらに深く魅力を味わえると思います」
ヒマ「まずはニュージーランドあたりから、行ってみたくなりました(笑)」
店長「グラス1杯で、行き先が決まる。ワインはそういう飲み方ができるのも楽しいですね」
ワインマーケット パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜20:00
TEL/03-5424-2580
URL/winemart.jp
Photos & Text:Hima_Wine
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