活況を呈する日本のアートシーンで、いま注目のアーティストを紹介する連載。今月は、民話や伝承から着想を得た動物をモチーフに、手のひらから物語世界をかたちにする陶芸家の村田言恵。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年7・8月合併号掲載)
土と人、炎が生み出す陶芸に託して生まれる物語のかたち

大輪の花を戴く鹿、三つ首の龍、翼を広げた獅子に兎…。ほのかな艶に包まれた、白い磁肌の生き物たち。愛らしさのなかに、どこか人智を超えた息遣いを感じるのはなぜだろう。村田言恵自身の言葉でひもといてみたい。
「陶磁とはいわば人工の火成岩で、土や石、金属粉などを配合し、焼成することで美しい石肌や釉薬の景色を生み出せます。けれど、やはり天然の石には敵わないのだと意識せざるを得ません。陶磁器が天然の石を超えるとすれば『人の思いが込められているからこそ』だと私は考えています」

人の手を離れ、炎の中で完成する陶芸の息吹。村田はそこに、自身が紡ぎ出す“物語”を込めたいと語る。「心を豊かにしてくれる物語を内包した作品を作りたい、という私の思いと、それを受けて粘土に触れる手の力と、素材(陶磁)の持つ魅力とがうまく嚙み合い、人の心を惹き付ける作品となることを目指して、制作しています」
金沢と沖縄で陶芸を学び、現在は富山県の氷見で作陶。幼い頃から本=物語に親しみ、やがて自ら創作したいと願うように。近年は『古事記』や『風土記』をはじめ、伝承や考古学的資料を手に、物語世界を深めてきた。この先は「作りたいと思った作品が人の手に渡り、それで得た糧で生きる、というシンプルで健全な営み」を見据えつつ「制作し続けて、年を取って、世を去りたい」。そしてはるか先、自らが縄文土器に感じ入るように「数千年後を生きる人が私の作品を楽しんでくれたなら、最高です」
土と人、炎が生み出す息吹の物語。村田は今日も思いを込め、そのかたちと向き合い続けている。
Select & Text : Keita Fukasawa Edit:Miyu Kadota
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