絵画や織物、それぞれの手法で色を印象的に用いるアーティストにメールインタビュー。その独自の世界を創出するために、色をどのように見て、向き合い、捉えているのか。アーティストたちの色にまつわる原風景から惹かれる色まで、色彩表現に込められた思いを読み解く。Vol.1は、ハワイの離島から「1000年後の未来の風景」を描き続ける画家、山崎美弥子。

──色を意識的に捉えるようになったきっかけや原体験は?
「少女時代、不可視でありながら、この惑星の上で、おそらくどんなものよりもはっきりとした、大いなる『実在』を感じる出来事がありました。それは、まぎれもなくわたしの原体験となっています。そのことへの探求が、わたしの人生になったのです。やがて探求は、表現へと昇華されます。不可視である『実在』を、可視なるものとして描こうとすることは、元来、不可能かもしれません。それでもわたしは、色に宿るスピリットと対話をし、その実在を、この世界に出現させようとしています。その行為を始めたことが、色を意識的に捉えるようになったきっかけと言えるでしょう」
──作家として活動を始めてから、色に対する考え方や向き合い方にはどんな変化がありましたか。
「色は、瞬時に身体に浸透します。わたしたちを、常に取り囲むエネルギーのフィールドは、すぐに、その色に染まります。だからこそ、そばに置く色に細心の注意を払っています。その向き合い方は、少女の頃から変わっていません」


──個人的に、好きな色、惹かれる色、探求したい色とは? その理由は?
「すべての色に各々の美があります。でも、わたしにとって『変容』を彷彿とさせるピンクは格別ですし、『受容』を感じさせる淡いベージュや、白を多く混ぜたクリームイエローは、日常生活の中でも、表現領域においても、かけがえのないもの。また、『クリエイティビティ』を目覚めさせるようなブルーは、特別な注目に値します。そして、あらゆる『光』の記憶を思い起こさせる色に惹かれ続けているのです。そして、これからも探求したい、それは、色そのものよりも、色と色の関係性についてかもしれません」
──これまでの経験の中で、大切な、印象に残っている色にまつわる記憶、思い出は?
「黒い星空に覆われることなき週末の夕べは、パリでも過ごしたことがありますが、とある北の地へ訪れた時の、白夜午前0時の、窓枠に切り取られた四角い風景ほど、こころに刻まれた色はありません。それは、七色の可視光の融合により誕生した、まぶしい白色でした。同時に、印象深い記憶といえば、色の無い深い意識世界の体験でした。すべての色は、色の無い世界を表すためのインストゥルメントです」
(左)美しい夕景の空の色。(右)上空から見たハワイの海。Photos:Yamazaki Miyako
──ハワイの離島での暮らしは、色彩感覚にどのような影響を与えていますか。
「この島での生活において、わたしは自然の中で多くの時間を過ごしています。建造物、その他のあらゆる人工物が視界を遮らないこの惑星の風景は、完璧なる調和であり、そのシーナリーには、著しい彩度の高低のギャップがありません。じんわりと、移り変わる色のグラデーションは、わたしたちの心を、その奥深くに至るまで、落ち着かせます。色彩感覚は、常に満たされるのです」
──作品の中に現れる色、色と色の組み合わせは、どのように生まれていますか。
「常に奇跡的に」

──「1000年後の未来の風景」として描かれる、「海と空の絵」「Rain/雨」「天使の梯子」「花の絵」などの各シリーズは、それぞれどのような情景・物語を描き出しているのでしょうか。
「すべての人が無条件に受容される、人類の集合意識上に存在するポイント、すべての人に内在する、流れる涙のようにあたたかい、聖なる意識領域に、『1000年後の未来の風景』と、わたしは名づけました。この名は、ある賢者から授かった言葉です。すべてのわたしの絵画シリーズのエッセンスに横たわっているものであり、それは遥かなるいにしえや、ゆくすえ、あるは『今』からやって来た、普遍なる物語なのです」

──フォトエッセイ「惑星日記」もそうですが、作品のタイトルの言葉もとても印象的です。絵画と言葉、あなたの表現において、この二つの関係はどんな意味を持ちますか。
「絵画と言葉は、わたしの表現において同列です。まっさらな画面に色のストロークを生み出すように、ひとつひとつの言葉を紡いでいます。つまり、それらの関係性はフェアー(平等)です」
──最近見た美しい色、感動した色を教えてください。
「人が愛するもの(者、物)を見つめるときの瞳の色」
──あなたにとって色とはどういう存在ですか。
「風や水のように常に流動的で、胸が締め付けられるほど感情的な存在」

──これから取り組みたい色彩表現や挑戦したい色の可能性はありますか。
「今までも、今も、これからも、変わることなく、決して表すことのできない、色や形の無い世界を、色で表そうとすること。同時に、わたしたちの日常という三次元の現象世界においても、愛してやまない色だけを選択し続ける、緩やかなるエレガンスへの挑戦と言えるでしょう」
──あなたに「1000年後の未来の風景」を描かせる、突き動かすものとは?
「絶対的な確信と、すべてに内在するラブシュープリーム(至上の愛)」
Edit & Interview:Masumi Sasaki


