パリに大相撲がやってきた! 現地ファンと熱狂した31年ぶりの公演をレポート【ダージリン コズエが行く、人生最高の旅】 | Numero TOKYO
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パリに大相撲がやってきた! 現地ファンと熱狂した31年ぶりの公演をレポート【ダージリン コズエが行く、人生最高の旅】

旅のプロ、ダージリン コズエによる連載。世界中のあらゆるデスティネーションを行き尽くし、現在も国内外問わず旅に赴く玄人トラベラーが語る、“人生最高の旅”。

私が住むパリで6月13日(土)、14日(日)の2日間、大相撲のパリ公演が開催されました。私、大相撲の大ファンでして、この日を、首をなが〜くして待っておりました。

2024年の大相撲1月場所を観戦に行ったらそのリチュアルの美しさ、取り組みの面白さに感激してしまい、その年は名古屋場所を除く全ての場所を見に行くほどまでに。

人生とは不思議なもので、大相撲に大ハマりした瞬間に長年の願いであったパリへの駐在が決まり、2025年の1月場所を最後にしばし大相撲ともお別れし、遠いパリからネットで毎場所欠かさず観ております。

しかし、運がいいのか、悪いのか、わからないのですが、パリにいたおかげで昨年10月にロンドンのロイヤルアルバートホールで開催された大相撲ロンドン公演、そして今回のパリ公演を見に行くことができたのです。

左:大相撲パリ公演のパンフレット 右:大相撲ロンドン公演のパンフレット
左:大相撲パリ公演のパンフレット 右:大相撲ロンドン公演のパンフレット

先に断っておきますが、これは取材でもなんでもなく、パリに住むいち相撲ファンが自腹でチケットを買い、大好きな大相撲のロンドン公演とパリ公演を見に行った際に感じたこと、見たことを綴った個人的な観戦記です。

パリと大相撲の関係は非常に深く、フランスの元大統領ジャック・シラク氏が筋金入りの相撲ファンだったことに始まります。1986年、当時パリ市長だったシラク氏の尽力により大相撲パリ公演が実現。そして1995年、シラク氏が大統領になった年に2回目のパリ公演が開催されたのです。毎場所、優勝した力士へ「日仏友好杯」を授与しているのもシラク氏の時代から続いており、SNSでは毎回贈呈される巨大なマカロンの色が話題になります。

そして、今年31年ぶりのパリでの開催。
私同様、パリに住んでいる日本人の相撲ファンの間では、誰が来るんだろうとか、会うたびにその話で盛り上がっていたのですが、街中は全くの通常モード。

まあ、直前になったらメディアも騒ぎ始めるでしょう、と力士たちがパリへ到着したのをSNSで確認しワクワクしていたのですが、あれ?

昨年のロンドン公演は5日間あり、始まる前からBBCで連日相撲のことが流れ、日を追うごとにものすごい熱量でテレビやネット、SNSで情報が出ていました。が、パリでは相変わらずのんびりしているのか、フランス人の同僚に聞いてもなんだかパッとしない。

私はパリを訪れる人なら必ず行くような主要な観光地まで徒歩圏内のところに住んでいるのですが、街中で力士たちを見かけることもほぼなく。友人と近所を散歩していた時に、唯一、某幕内力士にお会いできたのですが、気付いてキャッキャと喜んでいたのは私たちくらい。

ロンドンと比べてパリは2日しかないから事前PRも時間的に過酷だよなーとか、31年もの月日が経つと相撲自体も知らないのかも?(いや、ロンドンは1991年の初開催から34年ぶりだったよな?)なんて勝手に色々と想像しながら、開催日前日の夕方にパリ日本文化会館で開催された「大相撲の夕べ」というトークイベントへ行ってきました。

そこには欧勝馬関や一山本関、元NHKアナウンサーであり大相撲実況者の吉田賢さんたちが出演されていました。この時の内容は後日NHK ONE「大相撲どすこい研」で後日放送されるとのこと。

無料だったこともあったせいかチケットは2分でなくなったらしいのですが、キャンセル待ちで入ることができ、近くにいた同じくキャンセル待ちのフランス人の男性と会話が始まり、なんと彼はボルドーから相撲を見にきたといい、1995年のパリ公演をテレビで観て以来、大相撲の大ファンらしく、毎場所YouTubeなどで見ていると。

好きな力士の話を振ると、引退した親方の現役時代の四股名や所属部屋の話など、次々と出てきてその知識量には驚かされました。質問タイムには会場から出る質問も非常にコアな内容ばかりで、今ここに、フランスのすごく濃くニッチな相撲ファンが駆けつけていることだけはわかりました。

そして待ちに待った、公演初日の土曜日。

開演が14時だから13時半くらいまでに行けばいいかなとのんびりしていたら、すでに友人カップルは12時過ぎに到着していると連絡が。焼きたてのバゲットを買ってきて、バターとイチヂクのジャムをたっぷりのせて食べながら、日本の家族とLINEで話すという、週末のルーティンをしている場合じゃない。慌てて準備し、メトロはよく止まるからここはUberで。すると、正面の入り口からちょっと手前で下ろされ、え?ここ?と思いながらも出たら、なんと目の前の関係者で入り口みたいなところから紋付き袴姿の力士や親方、そして行司さんたちなどが次々と出てくるところに遭遇。

なんとオフィシャルのプレス写真、映像を撮るタイミングだったよう。アコーアリーナの大階段に皆さんずらりと並んでいらっしゃる。

その圧巻の姿に偶然居合わせた周囲の観客たちからも大声援が。うわー盛り上がってきた!と。

 

 
 
 
 
 
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喜びを胸に、いざ会場へ。

ロンドンのロイヤルアルバートホールの華やかさを知っているだけに、なんだかシンプルだなと。

左:大相撲ロンドン公演(2025年)、右:大相撲パリ公演

しかしここは31年前パリ公演をやった場所なので、戻ってきたという意味ではなんだかパリの相撲ファンとしてもジーンとします。

1日目は正面の椅子席。割と土俵までも近くなかなかいい席。

開会式は力士も全員紋付袴で登場。フランス国歌、君が代、開会スピーチなどがありました。海外に住んでいるせいか、この紋付袴姿の力士たちの姿が本当にかっこいい。そして、四方の観客席に向かって「礼」をする姿、まさに圧巻。フランスのゆるさも大好きですが、自分の中にある日本の部分に心が揺すぶられ、感動のあまり、涙が出てしまいました。

そのあとはルールをコミカルに紹介する初切やフランスの子供たちと力士の相撲対決、そして横綱豊昇龍関による綱締めの実演。

フランスの人たちは日本文化に対する興味関心が高いだけでなく深い人が多いので、綱締めなどは食い入るようにみんな土俵や土俵上のモニターを見ていました。

そして、東西の花道から化粧まわしをつけた幕内力士たちの土俵入りです。その姿に会場は拍手の渦に包まれます。

右隣に座っていたマダムもかなりの相撲ファンだったのですが、正代関の化粧まわしをみてあれは何?と聞いてきたので「日本の有名なペコちゃんっていうキャラクターですよ」と説明。

彼女たちにとっては、伝統的な相撲の中に、ポップなキャラものが入り混じっているのが不思議に見えたよう。

そのあと、両横綱の土俵入りがあり、さすがフランス。一部の相撲ファンはちゃんとどこで「よいしょ〜!」と掛け声をかけるかご存知でいらっしゃる。それにつられて、他の人たちも「よいしょ〜!」と。(ロンドンでは横綱の土俵入りの前に事前に色んな説明がありましたが、こういう流れに任せるところはフランスっぽい)


やはりこういう文化的なところには非常に関心が高いようで、拍手喝采です。

30分の休憩を挟み後半はトーナメント戦。
私なんてビジネスクラスで東京―パリを14時間飛んでも4〜5日疲れが取れないのに、あの同じシートサイズで乗ってきて、トーナメント戦とは!プロってすごいな。(ちなみにロンドンでは最終日だけがトーナメント戦で他は毎日取り組みが組まれていました)

本場所とは異なり、ちょっとエンタメ的な部分もあり、それはそれで海外公演だからね、という気持ちで。ただ私の左隣にいたお兄さんは、これまたガチな相撲ファンで、花道から土俵近くに出てきた力士を見て“GONOYAMA”と。え?あなた背中で豪ノ山関ってわかるの?と。そういう人たちは本場所並みのガチ勝負を見たかったみたいでしたが、彼も相撲ファンなだけにその辺りの事情はわかっている様子。

ロンドン、パリ公演ともに呼びやすい名前の力士というのは非常に声が大きくなります。また三役などの力士は海外でも非常に大きな声援が出てきます。しかし今回一番のびっくりだったのは、日本人が絶対噛む若隆景関の名前をフランス人たちはわりとうまく言えているのです “WAKA TAKA GAGE!”と。私なんぞ、何度も噛んで、わたたた…となったことやら。

そんなんで、日本で見る本場所とはまた違った空気感で終わった1日目。

2日目、開会式はないので、力士たちの紋付袴姿もなし。前半部分の初切がなく、床山さんによる大銀杏を結う実演がありました。

大銀杏が思った以上のスピード感で仕上がっていき、その工程や仕上がりに両隣のフランス人たちもブラボーブラボー!

フランス人、特にパリジャンやパリジェンヌって世界的にみても「意地悪」とか「冷たい」とかよく言われるのですが(一部否定しません)、日常生活においては、わりと大阪並みに話しかけられたり、話しかけたりする雰囲気があり、私もちょこちょこ隣の人たちとおしゃべり。

この日、私は向正面の階段1番前に座っていたのですが(3日前にチケット取ったのになんとラッキー)、右隣に座っていた男性たちがテレビに映るかもしれないからみんな笑顔でいなきゃねとか、そういうどうでもいい話から、左隣のムッシュが高安関の大ファンみたいで、ずっとTAKAYASU!!!と大声援を送っていたり、後ろの席に座っていたイギリス人らしき女性は各力士の解説を隣のパートナーにしてあげていたり。これまた相撲が好きでたまらない人たちに囲まれた席となりました。

その雰囲気がなんだか異国にいる感じがせず、リラックスできたのか、私もつい、いつもの調子で熱海富士関に向かって「あたみん、がんばれ!」と言ったら、周りのフランス人やイギリス人たちもつられて“ATAMIN GANBARE!”と。

観客席では、こんな感じで、ごく自然に大相撲を通して、相撲ファン同士で会話が生まれ、立派な国際交流だなと思いました。

私は40代後半になって初の海外駐在生活をやっていて、フランスの会社でフランス人に囲まれ、フランス人同士なら自然に分かり合えることも、私はその意味や背景を簡単に理解できず、言語や文化の壁に非常に苦しんだ1年でした。

そんな時、ふと土俵にあがる外国人力士を見て思ったのです。この人たちも自分がぶつかった壁と同じように言語や文化、習慣、ましてや相撲界という特殊な世界でのさまざまなことを乗り越えて今ここにいるんだなと。

パリ現地で大関安青錦関の手の振り方やジェスチャーを見ていると、多分体が自然にヨーロッパモードにスイッチしたんだろうなと思うような仕草が垣間見られて、日本からヨーロッパで苦労している自分と全く逆の壁を彼は乗り越えて、今ヨーロッパに戻ってきたんだなと。しかもフランスのTVに出演した際も、日本語で答えているのを見たときは、本当に胸が熱くなりました。

大変長くなってしまいましたが、以上2日間大相撲パリ公演の会場の様子を勝手にファンとして現地よりレポートさせていただきました。欲をいえば、あの紋付き袴姿が素晴らしかったので、オペラ座の大階段とかに力士たちが並んだ姿とかも見てみたかったなーと思いました。自宅からメトロで20分強の場所ですが、相撲好きの私にとっては、間違いなく「人生最高の旅」のひとつとなりました。

ダージリン コズエが行く、人生最高の旅

Photos & Text:Darjeeling Kozue

Profile

ダージリン コズエ Darjeeling Kozue 20代で世界一周の旅を経験し、30代で世界中のブティックホテルやデザインホテル、ラグジュアリーリゾートなどを巡ってきた旅のエキスパート。海外旅行のガイドブックや雑誌などの編集経験もあり。外資系企業で働きながら世界を旅している。現在フランス駐在中。Instagram: @cozykozue
 

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