ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)は、現地時間の5月20日にニューヨーク・マンハッタンにある美術館フリック・コレクションにて、2027年ウィメンズ クルーズコレクションを発表。メゾンのアンバサダーを務めるストレイキッズ(Stray Kids)のフィリックスをはじめ、ゼンデイヤ、エマ・ストーン、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、日本からは髙石あかり、Awichら豪華セレブリティが参加した。
ランウェイショーの会場に選ばれたのは、アッパーイーストサイドにある邸宅美術館フリック・コレクション。ルネッサンス期から印象派まで、ヨーロッパ各国の名匠たちの作品を展示する歴史ある美術館で、約5年にも及ぶ大規模改修を経て2025年のリニューアルオープンを機に、ルイ・ヴィトンがスポンサードしている。また、クリエイティブ・ディレクターを務めるニコラ・ジェスキエールにとっても、ニューヨークは若き日に訪れて大きな刺激を受けた場所であり、アップタウンとダウンタウンに象徴される彼の地の両極的な感性や多様な価値観の共存が、本コレクションにおける創作の源泉となっている。
メリル・ニスカーによるオウン・プロジェクトPEACHESの『Boys Wanna Be Her』を合図に、ショーがスタート。ファーストルックは、深いVネックのニットにデニムパンツを合わせたシンプルなスタイル。ウエストマークしたゼブラ柄のベルトや、クラウンの尖ったマウンテンハットがラフな装いにアクセントを添える。手に携えたのは、1930年代に作られたルイ・ヴィトン製レザートランクで、アメリカの現代アーティスト キース・ヘリング(1958-1990)が友人のためにドローイングしたワンオフ品を、後年、ルイ・ヴィトンがオークションで落札したものだという。素材こそモノグラム・キャンバスではないが、稀代のアーティストの「キャンバス」として生まれ変わったヴィンテージを、ファーストルックに採り入れたことが示唆するように、本コレクションの至るところにキース・ヘリングによる芸術言語と、その偉大なレガシーへのオマージュが込められている。
例えば、1982年に発表された犬とUFOの作品(『Dogs With UFOs[無題])は、シルクサテンのトップスのフロントにあしらわれ、吠える犬のキャラクターやハサミをモチーフとした『Scissors』がレザージャケットを彩る。また、NYの愛称でもある“ビッグ・アップル”をモチーフとした作品は、変形スリーブのトップスやハンドバッグなどにも採用されていた。コレクションノートによれば、ニューヨークという街そのものが、時代を越える普遍的な魅力を宿しており、キース・ヘリングに代表されるポップアート、ポップカルチャー、そして、ルイ・ヴィトンも含むポップ・ラグジュアリーといった「ポピュラー」な概念は、あらゆる人々の心にメッセージを届ける強力なコミュニケーションツールであると説く。
キース・ヘリング作品を用いたコレクションピース以外では、バラエティに富んだレザーアイテムが目を引いた。デニム地のラッフルスカートに合わせたウエスタン調のジャケットやクロップド丈のレーシングスーツ、さらにエイジングのニュアンスを添えたポンチョなどに加え、型押しレザーのパッチワークで構成されたドレスはヘムラインからシフォンのプリーツが揺らめく。このドレスは、80’sなムードを醸すパワーショルダーとなっており、モデルの精悍な佇まいも相まってどこか往年のグレース・ジョーンズを想起させる。また、ウエスト部分がフェイクレイヤードになったボクシングトランクスもいくつか登場したが、バスキアと(アンディ・)ウォーホルの有名なポートレートを彷彿とさせた。
もちろん、これはキース・ヘリングへのオマージュという前提ありきだが、コレクション全体に通底する自由奔放なスタイルや力強くエネルギッシュなムードは、1970年代後半から80年代にかけてNY最大の社交場であった「スタジオ54」を想像する人もいるはずだ。再度、コレクションノートを読み返すと、「ギルデッド・エイジ(黄金時代)の華やかさの余韻を新たな文脈で再解釈した」とある。額面通りなら、アメリカにおける「ギルデッド・エイジ」とは、工業化や都市化が進み、経済が急速に発展した1880年代を指す。ただ、本コレクションに限れば、1989年に18歳で初めてニューヨークを訪れたというニコラ・ジェスキエールにとっての「ギルデッド・エイジ」、すなわち80年代のニューヨークの空気感を体現したと考えるのが自然だろう。
あの頃の享楽的なニューヨークの名残りは、小物類にも見てとれる。アナログレコード型のクラッチやチャイナタウンのテイクアウト用ボックスを模したトップハンドルバッグもその一例だ。コレクションを通じてキーアイテムとして使われたレスリングシューズ風のパデッドヒールも80’sライクだが、ボクシンググローブ型のバッグに至っては、先述したバスキアへのオマージュを伺わせる。また、実際に製品化されれば大きな話題を集めそうなのが、モノグラム・キャンバスをキース・ヘリングのアイコニックなモチーフでアレンジした「アルマ」だ。ラフで力強い筆致に呼応する垂れたスプレーインクの表情は、ラグジュアリーとストリートが交差した転換点ともいえるマーク・ジェイコブスが手掛けたスティーブン・スプラウス・コレクションを思い起こさせ、改めてルイ・ヴィトンが培ったレガシーの堆積を実感する。
ニコラ・ジェスキエールが本コレクションで試みたのは、アメリカンスタイルの多様な表現をフランスの伝統的なサヴォアフェールで形作ることであった。それは、ルイ・ヴィトンを媒介に2つの都市が交わした往復書簡であり、異なる文化や価値観、経験を尊ぶマルチカルチュラルという考えこそが成熟した都市を形成するということを提示してくれた。
LOUIS VUITTON
ルイ・ヴィトン クライアントサービス
TEL/0120-00-1854
URL/www.louisvuitton.com
Text: Tetsuya Sato
















































