鏡リュウジ × 紅しょうが・稲田美紀 対談「占いの“正しい”使い方」 | Numero TOKYO
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鏡リュウジ × 紅しょうが・稲田美紀 対談「占いの“正しい”使い方」

占いは人生の指針になるけれど、ときに人を縛ってしまうラベルになることも。「一刻も早く結婚したい」という思いで占いによく行くというお笑いコンビ・紅しょうがの稲田美紀が、心理学的アプローチで占星術を研究する占星術研究家の鏡リュウジに、占いに振り回されずに活用する方法を聞いた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年4月号掲載)

 

占いの受け止め方

稲田(以下I)「よく恋愛相談しに占いに行くんです。いい感じだけど付き合えるかどうか、微妙なラインの人が現れたら占いに駆け込みます」

鏡(以下K)「おお、占いを活用されているんですね。なんか意外」

I「今すぐにでも結婚したいので! 背中を押してもらいに行くような気持ちです。よく占ってもらう占い師さんが一人いて、その人はリモートです。それ以外でも、飲みに行った勢いだったり、時間のあるときに占いの館みたいなところにフラッと入ることもあります。今年に入ってすぐに2回占いに行ったんですけど、二人の占い師から『相性がいい』と言われた人にフラれたんですよ~! 占いを信用してたのに……」

K「占い、外れちゃった(笑)」

I「外れたというか、私が占いを信用しすぎて、ガンガンアタックしたことが原因だと思います」

K「それ、素晴らしい受け止め方ですね。恋愛の失敗が最終的には自分に原因があると理解されている。『占い依存』ではない証拠! 依存しはじめると、外れたことまで占い師さんに相談してしまって、『そりゃあんた、日が悪かったんや。今ならイケるで。縁はあるはずやから』と言われたりして(笑)、どんどん深みにハマってしまうケースもあるんですよ。恋愛以外では占いはしないんですか?」

I「仕事に関しては、ずっと運がいいと感じるし、相方も運が強いほうだと思うので、占いの必要を感じないんですけど、恋愛になるとさっぱりわからなくて」

K「恋愛や結婚は、自分の努力じゃどうにもできないことがありますからね。そういうアンコントローラブルなものと向き合うときには、占いのように超越的なものに耳を傾けるしかないというのはありますよね。占いはいつもタロットですか」

I「タロットが多いです」

K「ごく一般論ですが、運気の大きな流れを見るのは、生年月日を元にする西洋占星術や四柱推命、手相などが得意で、タロットや易は具体的な決断を促すのが得手。ただエキスパートになると生年月日だけで全部を占える人もいるのでさまざまですが。稲田さんは水瓶座なんですね。水瓶座は、合理的な考え方の人が多いです。周囲にちょっと変わった人だと思われたりもするけれど、常識にはとらわれない自由さもある。自分で水瓶座らしいと思ったことはありますか」

I「あまり意識したことはないですね。動物占いも変わってる人といわれる『ペガサス』で、何が変わってるんやろうかと」

K「やっぱりお話を聞いていると水瓶座っぽいですね(笑)。ラベルに左右されず、合理的」

「別れのおかげで今がある」“伏線回収”として占いを活用

I「西洋占星術では婚期の流れも見えるんですか」

K「一応、理論的にはね。でも、僕自身は具体的なことは占いではわからないと思っています。『結婚』といっても、もしかしたら仕事との『結婚』かもしれない。より象徴的に捉えるんです。後から『ああ、あの“結婚”ってそういうことだったか!』と驚くこともあります。だから、占いを『伏線回収』として使うというのも一つの手だと思いますね。

若いうちはこれから先のことが気になるだろうけれど、ある程度、年齢を重ねてくると『あのときのつらい別れは今につながるためだったんだ』とか『あのとき、あの人がいたおかげで今の自分があるんだ』と人生を物語化することが大切になってきます。悩みのあるときって、『なんでこんなことに?』と自分の物語が見えなくなっている状態です。そんなとき、もう一度自分を主人公にした人生の物語を感じられるのが占いの面白いところだと思うんです」

I「婚活に、占いを上手に活かすコツみたいなものってあるんですか」

K「婚活に限らず、占いに向き合うときの『注意』なのですが、占いに行きたくなるのは心が弱っているときが多いでしょ。でもそういうときは依存関係に陥りやすく、占い師によっては弱みにつけ込んでくる可能性があります。だから、日ごろから遊び感覚で、相談すると元気になれる占い師さんを見つけておくと、リスクは少ないと思います。でも、稲田さんは弱ってなさそうですよね」

I「すぐにでも結婚したいんで、弱ってる場合じゃないんですよ! 占い師は、自分と全く関係のない人だからなんでも相談できると思っていたんですけど、最近、霊視ができる人に『この2年は仕事に集中して。結婚はその後』だとか、番組のロケで手相を見る人に『結婚線が2本あるから2回結婚できるで』と言われたり、いろ~んな意見が降ってきて、だんだん『もう気にせんとこ』みたいな気持ちになってきました」

K「それは大変でしたね(笑)。ただ、自分が思ってもいなかった角度からの意見というのは占いの面白さ。楽しみつつ、意外な方向からのボールを受け止めて自分の考えを広げていっていただきたい」

I「たしかに全部の意見を聞いていたらしんどくなりますもんね。とりあえず仕事を頑張って、隙間時間に恋愛していったらいいかなと思っています。ちなみに、2年後の水瓶座ってどうですか?」

K「2024年秋に冥王星が水瓶座に入り、今はトランスフォームの時期です。2、3年後はその影響がさらに強くなっているかもしれません。もちろん何も変わらないという人もいますが、星の動きとしては、自分の中の価値観がすごく大きく変わってくるタイミングではあります。出会い運なら、今年7月から出会いの機会が拡大する時期です。ただ、それが仕事関係なのか恋愛なのかはわかりません」

I「じゃあ『その頃、自分が笑っていられたらいいな』とぼんやり思っておけばいいですね」

占いという“フィクション”で自分の現在地を把握する

K「『占いの作用』というのは、二つの方向性があると思うんです。一つは『コスモロジー』といわれるような、宇宙の大きな枠組みをイメージさせるもの。不安定なときには、その中での自分の立ち位置を確認させてくれるわけですね。それ自体はフィクションではあるかもしれませんが、例えば『2年後』という言葉をもらうことで、稲田さんの中で過去と未来、そして今の立ち位置が見えてくる。時間的にも空間的にも、具体的に自分がどこにいるかイメージすることによって安定感を得ることができる。これって占いに限らないんですよ。社会ってこういう仕組みで回っている。よくよく考えたら人間はすべて平等でフラットな存在なのに、会社で『部長』という肩書きがあると、『この人は裁量権があるんだ』とみんなが認識して社内がうまく機能する。

これはみんながそういう『会社の常識』の枠組みを信じているからでしょ。占いの枠組みは、一般社会を動かしている枠組みとは別なものを提供する。社会の一般常識で縛られているときには、そこから解放されて占いの枠組みに入るわけですね。でも今度は占いの枠組みに縛られる危険も出てくる。『縛られる』と『解放』は表裏一体。『縛る』と『解放』の機能を上手に切り替えることが大切です」

I「もし私に親友が二人いたとして、二人に恋愛相談して真逆の意見だったら、他も一応、聞いとこか、というくらいの気持ちで占いに行ったら良さそうですね」

K「そう。占いのもう一つの作用は『違う視点を与えてくれる』こと。例えば、友達が『あんな金持ってへんやつと結婚したら絶対あかんで』と言うけれど、占いに行ってみると『この人お金はないけど、面白い才能持ってるかもしれへんで。ただ仕事運はないな』と言われるかもしれない。結局、同じことなんですけど、別の視点から異なる表現で言葉をもらうと、自分の中で本当に納得いく判断が下せるかもしれません。それに、自分では全く思ってもみなかった方向から球が飛んでくることもあるけれど、それがゴリゴリに凝り固まった自分の考え方を変えてくれることもありますよね。ただし、自分が思う以上に占いの言葉に影響を受けることもあるので、そこは十分用心してください。

それとね、これは占いのスタイルにもよるんだけど、カウンセリング形式で占うと、相談する悩み(=主訴)の背後にあるものや、隠れていた本当のモチベーションにまで光が当たることがあるんですね。例えば、稲田さんの場合、『結婚したい』が主訴ですが、その背後にはさまざまな理由が複雑に絡み合っていると思うんです。そこまでひも解くことができたら、『当たり外れ』以上の効果はあると思います。それにしても、稲田さんが結婚したい理由ってなんですか」

I「家に帰る理由が欲しいんです。一人の家に帰るのがほんまに寂しくて。それから、子どもが欲しいというのもありますね。もう『0日婚』でもいいと思ってます」

K「ご自身でもタロットをやってみたらどうですか。迷っているときに、手元のタロットをちょっと引いてみるとか。タロットの絵柄に意味付けするのは自分自身ですから」

I「自分で! 考えたことありませんでした。これまでは、その人との相性を、一緒にごはんを食べたときの味で判断してたんです。料理そのものがどうかじゃなくて、その人と食べたら自分がおいしいと感じるかどうか。だから気になる人がいたら、すぐごはんに誘うんです。でも、自分で占ってもいいもんなんですか」

K「トランプ占いと一緒です。占いの象徴を使って、自分の意識を言語化していく感じでね。現代は良くも悪くも、自分の生き方を自分で決めなくちゃいけないですよね。こんな大変なことはないですよ。でも、だからこそ自由でいられるわけです。ぜひ上手に活用してください」

I「ありがとうございました! すごく参考になりました。占いに頼りすぎずに、これからも占いを気軽に楽しんでいきたいと思います」

 


Photo:Ayako Masunaga Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Mariko Kimbara

Profile

鏡リュウジ Ryuji Kagami 1968年、京都府生まれ。心理占星術研究家・翻訳家。京都文教大学客員教授。英国占星術協会会員。日本トランスパーソナル学会理事。占星術の心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の「占い」のイメージを一新。『鏡リュウジの占星術の教科書』シリーズ(原書房)など著書多数。最新の訳書にケイラ・シャヒーン著『ラッキーガール・ジャーナル 幸せな人生への扉を開くレッスンノート 』(すばる舎)。
稲田美紀 Miki Inada 1989年、大阪府生まれ。2011年、NSC大阪校を卒業。14年に熊元プロレスとお笑いコンビ「紅しょうが」を結成。19年に今宮戎マンザイ新人コンクールの新人漫才奨励賞を受賞。23年にNTV 「女芸人No.1決定戦 THE W 2023」で 優勝。レギュラー番組にBSよしもと『つまみは紅しょうが 男子~!宅飲みするからウチ来ぃや~!』(第3・4土 23:30~)、ラジオ関西ポッドキャスト『紅しょうがは好きズキ!』ほか。
 

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