アーティストが創る、絵画の中の小宇宙【4】エリサ・アルカルデ | Numero TOKYO
Art / Feature

アーティストが創る、絵画の中の小宇宙【4】エリサ・アルカルデ

一枚の絵画に描かれているオブジェクト、人物、その構図や風景。そこに込められた作者からの秘密のメッセージ。小さな空間に編集された果てなき思考と想像の世界へご案内。第4回はエリサ・アルカルデ。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年12月号掲載)

※小誌オンラインストア『Numero CLOSET』にて掲載作家の作品を一部取り扱い中。

『tantas cosas han pasado』2025年  水彩/紙 65×50cm
『tantas cosas han pasado』2025年 水彩/紙 65×50cm

大衆的なオブジェクトでアートを民主化する

学生時代に映画を学んだ後、絵画制作を始め、チリ・サンティエゴを拠点に活動するエリサ・アルカルデ。静物画を中心に、鮮やかでポップな色彩に乗せて、日常の食卓とサブカルチャーが混在する風景やどこかアンバランスな違和感のある構図が印象的だ。

『esfuerzo y recompensa』2024年 水彩/紙 100×70cm
『esfuerzo y recompensa』2024年 水彩/紙 100×70cm

親近感のあるユーモラスなオブジェクト選定の背景には、「静物画にはありふれたもの、見すごされがちなものに美的な重みを与え、高尚なものへと昇華させる力がある」と考えるから。そして、見る者の共感を呼び起こし、それぞれの日常の断片を見いだすことを可能にする。時に縁遠く閉鎖的になりがちな芸術を民主化する手段となる。

子どもの頃に見ていた『キャンディ・キャンディ』『美少女戦士セーラームーン』などの少女アニメの記憶からリボンを好んで描く。また、凶器でありながらもエレガンスを感じさせるナイフもよく登場するモチーフだ。「マスキュリン」なナイフと「フェミニン」なリボンの間の対話は日常の場面に非現実的な緊張感をもたらす。絵画に盛り込まれたさまざまな、一見すると欲望の対象は、彼女なりの美への欲求、描くことで到達できる限界への好奇心と、その限界を超えることへの挑戦である。

 『una misma II』2024年 水彩/紙 100×70cm
『una misma II』2024年 水彩/紙 100×70cm

エリサにとって描くことは、内側に見えるイメージを具現化し、物質化する最も近道の手段であると同時に、安息の場でもあり、また特定の時間と空間の日常の記録としても機能している。

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Edit & Text: Masumi Sasaki

Profile

エリサ・アルカルデ Elisa Alcalde 1987年、チリ・サンティアゴ生まれ。2006〜10年にかけて映画を学び、12年より水彩画の制作を開始。同年、出版プロジェクト「Pequeño Zine Ilustrado」を設立。18年10月、短編集『No Corresponden』を発表。以降、映像メディア・文化・デジタルコミュニケーション分野で活動する一方、絵画制作を行う。
@elisaalcaldec
 

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