プレステージシャンパンとは? ソムリエ店長がそっと教える高級シャンパンの魅力 | Numero TOKYO
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プレステージシャンパンとは? ソムリエ店長がそっと教える高級シャンパンの魅力

みなさんこんにちは、ワインブロガーのヒマワインです! さてみなさん、シャンパンはお好きですか? 私は大好き。

フランス・シャンパーニュ地方で造られたスパークリングワインだけが名乗ることを許される特別ワイン、それがシャンパン。世界中のほかのどこにもない味わい、ここでしか造れない味が好きで、乾杯のグラスワインはつい贅沢してシャンパンを選んでしまいます。(ちょっぴり高いのですが)

さて、ただでさえ贅沢なシャンパンですが、世の中には「プレステージシャンパン」と呼ばれる、通常のシャンパンよりさらに高級で、特別な造りをしたワインが存在します。ときに大変高額となるプレステージシャンパンは、シャンパンメゾンが威信を賭けて造る特別なワイン。それだけに、味わいも通常のシャンパンとは一段、二段格上です。

今回は、そんな一生に一度は飲みたいプレステージシャンパンの世界を、人気ショップ・ワインマーケットパーティーのソムリエ店長、沼田英之さんに詳しく教えてもらいました!

プレステージシャンパンとは

ヒマワイン(以下、ヒマ)「さて今回は『プレステージシャンパン』がテーマです。そもそもプレステージシャンパンってなんですか?」

沼田店長(以下、店長)「明確な定義があるわけではないのですが、大手メゾンのトップキュヴェ(ここでは銘柄といった意味)を指すことが多いですね。特級畑などの特別なぶどうを使っていたり、熟成期間が長かったり、造りも特別です」

ヒマ「なるほど、単純に「高いシャンパン」っていうわけではないんですかね?」

店長「少し違うかもしれませんね。たとえば小規模な生産者がこだわりにこだわり抜いたシャンパンは高額で取引されますが、それがプレステージかと言われるとちょっと微妙。金額よりも、むしろ歴史あるブランドのフラッグシップならではの、物語が伴うものがそう呼ばれることが多いですね」

ヒマ「ほほう。気になりますね」

店長「今回は7本のプレステージシャンパンをご用意しましたので、それらを紹介しながら、ご説明しましょう!」

プレステージシャンパン【1】ルイ・ロデレール クリスタル

ヒマ「まずはルイ・ロデレールの『クリスタル』ですね。名前といいボトルの雰囲気といい、これぞプレステージっていう感じがします」

店長「1776年創業の超老舗。このクリスタルは、ロシア皇帝アレクサンドル2世に愛されたワインとして知られているんです」

ヒマ「お、いきなり歴史の話が出ましたね」

店長「ワインのボトルの底は、澱を溜めて強度を高めるために凹んでいますが、クリスタルのボトルにはその凹みがありません。これはなんと瓶底爆弾を仕込まれないため。また、毒が入っていないかがわかるように、透明なクリスタルガラスが採用されたといいます。19世紀のロシア皇帝には暗殺の恐れがあったらしくて」

ヒマ「うわ〜、いきなりめちゃくちゃ面白い話」

店長「ちなみにこのワイン、ロシア皇帝のみならず、アメリカの有名ラッパーであるJAY-Zにも愛されていたのですが、メゾン側が苦言めいた声明を出したことでJAY-Zが人種差別的だと激怒。クリスタルの不買運動を起こし、アルマン・ド・ブリニャックという別のシャンパンに乗り換えた、なんてこともありました」

ヒマ「長い歴史があるといろんなことが起きますね……」

店長「クリスタルはリリースしたては硬い(シャンパンの場合、酸味が強めで香りが十分に開き切っていない状態)ことが多いですが、数年寝かせるとクリスタルにしかない素晴らしい味わいに変化します。まさにプレステージシャンパンの代表格と言っていいと思いますね」

ヒマ「はい、一生に一度は飲みたいシャンパーニュです!」

プレステージシャンパン【2】ジョセフ・ペリエ キュヴェ ジョセフィーヌ

ヒマ「続いてはジョセフ・ペリエの「キュヴェ ジョセフィーヌ」です。メゾンの創設者であるジョセフ・ペリエさんが、娘さんの結婚式のために造ったシャンパンがもともとの起源です」

店長「続いてはジョセフ・ペリエの「キュヴェ ジョセフィーヌ」です。メゾンの創設者であるジョセフ・ペリエさんが、娘さんの結婚式のために造ったシャンパンがもともとの起源です」

ヒマ「これは私の持論なのですが、「娘の名前を付けたワイン」は大概おいしいです(笑)」

店長「わかります。以降、結婚記念日に贈っていたワインを製品化したのがこのワイン。かつてはボトル1本1本に金の装飾を描いていたそうです。それくらい特別なキュヴェということですよね」

ヒマ「プレステージシャンパンの魅力のひとつがボトルやボトルを入れる箱の華やかさがあると思いますが、高級感があっていいですね」

店長「ジョセフ・ペリエは英国王室御用達で、「ロワイヤル(王室の)」の名称を冠することを許されているメゾン。2011年のウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式でも提供されています」

ヒマ「なんというか『結婚』にこれより相応しいプレステージ・シャンパンもなかなかない気がしますね」

店長「そうですね。さらに、裏ラベルにワインのデータも詳細に記されているので、ワイン愛好家の方にもおすすめ」

ヒマ「ワイン愛好家は、どこでいつ取れたどんなぶどうをどう醸造し、どれだけ熟成させたのかといった情報が大好きですからね(笑)」

プレステージシャンパン【3】ドゥーツ アムール・ド・ドゥーツ

ヒマ「続いてはドゥーツですね。アムール・ド・ドゥーツ」

店長「アムールはフランス語で『愛』という意味。愛という名のシャンパーニュです」

ヒマ「もちろん自分でも飲みたいですが、結婚式のプレゼントに、恋人やパートナーへの贈り物にもいいですね」

店長「ちなみにこのワイン、歌手のマドンナが大好きらしくて、ケース買いしていたみたいです。“毎日開けている”という噂もあります(笑)」

ヒマ「愛という名のシャンパンをマドンナが毎日開けている……! なんだかすごい話ですね。味わいも気になります」

店長「シャルドネという白ぶどうだけで造るブラン・ド・ブランと呼ばれるタイプのシャンパンで、10年近い長期熟成を経てリリースされるのも特徴。味わいも素晴らしいんです」

ヒマ「長期熟成を経たブラン・ド・ブランは最高においしいですよね」

店長「しかもこのワイン、ミュズレ(王冠)部分天使がデザインされ、その天使が輝く石を抱えているんです。その王冠に紐を通すとペンダントのようなアクセサリーとしても使えます」

ヒマ「うわ、気が利いてる。娘の成人式に贈るワインとして、購入を検討します!」

プレステージシャンパン【4】シャルル・エドシック シャンパン・チャーリー

店長「続いてはシャルル・エドシックの『シャンパン・チャーリー』です」

ヒマ「なんというか、プレステージシャンパンにしてはずいぶんチャーミングな名前ですね」

店長「メゾンの創業者であるシャルル・エドシックは自社のシャンパンをアメリカに売り込み、大成功するんです。しかしスパイ容疑をかけられて投獄され一度は破産。しかしその後見事に復活するんです。その姿は『シャンパン・チャーリー』という歌になったり、映画や小説に取り上げられたりしているんです」

ヒマ「なるほど、“チャーリー”は“シャルル”の英語読みということですね」

店長「その創業者の名前を冠したこのワインは、20世紀に1979、1981、1982、1983、1985年とわずか5ヴィンテージだけ造られたんです。それから数十年の時を経て、メゾン創業200周年の2022年に復活したというわけ」

ヒマ「19世紀、20世紀、21世紀と、3つの世紀をまたいだ話。スケールが大きい!」

店長「そしてこのワイン、製法もすさまじいんです。シャンパンは、リザーヴワインと呼ばれる、過去に醸造して保管されたワインのブレンド比率が味わいを決める極めて大きな要素なのですが、その「リザーヴワイン比率」がなんと80%」

ヒマ「なんですかそれは。ほとんどリザーヴワインじゃないですか。普通だと20%とか、かなり多くても50%くらいですよね」

店長「シャルル・エドシックはスタンダードレンジでも熟成期間が長く、リザーヴワイン比率も高い非常に贅沢な造りをする生産者。そのプレステージシャンパンは、やっぱり半端ではないですね」

ヒマ「うーんすごい。心の底から飲みたい!」

プレステージシャンパン【5】ポル・ロジェ サー・ウィンストン・チャーチル

店長「次なるプレステージシャンパンは、ポル・ロジェの『ー・ウィンストン・チャーチル』です」

ヒマ「ウィンストン・チャーチルといえば第二次世界大戦の頃のイギリスの首相ですね。チャーチルがなぜシャンパンに!?」

店長「チャーチルはポル・ロジェのシャンパンをこよなく愛していたらしいんですよ。なんでも自身が所有する競走馬に『ポル・ロジェ』という名前をつけたそうです」

ヒマ「なんと…! チャーチルは自分の馬にポル・ロジェの名前をつけ、ポル・ロジェは自分たちのワインにチャーチルの名前を冠したと」

店長「調べたところ、チャーチルは42,000本のポル・ロジェを買ったという記録が残っているらしいです」

ヒマ「1日1本飲んだとしても365本。あれ、42,000本って飲むのに100年以上かかりませんか(笑)?」

店長「1日2本の計算のようです……ともかくそれだけ相思相愛だったわけですね。それで、1965年にチャーチルが亡くなったあと、ウィンストン・チャーチルという名前のシャンパンを世に送り出すことになったんです」

ヒマ「なるほど、追悼キュヴェというか」

店長「『シャンパンは勝利のときには飲む価値があり、敗北のときには飲む必要がある』。そんな名言を残したチャーチルの名を冠したシャンパン、なにかしらの“勝利”を祝うのに最適なワインです!」

プレステージシャンパン【6】ビルカール・サルモン キュヴェ・エリザベス・サルモン

ヒマ「お次は“ビルカール・サルモン”ですね」

店長「はい、私の大好きなシャンパンメゾンです。ビルカール・サルモンは、1818年にニコラ・フランソワ・ビルカールと、エリザベス・サルモンが結婚して誕生したメゾンです」

ヒマ「ということは、この『キュヴェ・エリザベス・サルモン』は「妻の名前キュヴェ」というわけですね」

店長「そういうことになります。ビルカール・サルモンには『キュヴェ・ニコラ・フランソワ・ビルカール』というプレステージキュヴェもあるんです。創業者夫妻の名前が、ともにシャンパンの名前として残っているわけですね」

ヒマ「うーん、なんだか素敵っすね」

店長「今回ご紹介したプレステージシャンパンのなかで、これが唯一のロゼなんです。実は私はもともとロゼが苦手だったんですが、『これはうまい!』と思ったロゼなんです」

ヒマ「いいですね! ロゼはパーティなんかの華やかな場所で映えますからね」

店長「ロゼというと鮮やかなピンク色のものをイメージされることも多いですが、このワインはどちらかというとサーモンピンク。1999年にストックホルムで開催されたシャンパンの品評会で、ビルカール・サルモンが“ワンツーフィニッシュ”を決めたうちの1本なんです。おいしいですよ」

ヒマ「困りますね、全部飲みたくなってしまう(笑)」

プレステージシャンパン【7】レア・シャンパーニュ

ヒマ「いよいよ最後の1本。パイパー・エドシックの『レア・シャンパーニュ』です。“パイパー・エドシックの”と言いましたが、ボトルにはメゾンの名前が入っていませんね」

店長「はい、近年『レア』は別ブランドになったんです。ドン・ペリニヨンはモエ・エ・シャンドン社のプロダクトですが、ひとつの独立したブランドになっているのに似ていますね」

ヒマ「なるほど。レアっていう名前なだけに、やっぱりレアな年だけ造られるとかそんな感じなんでしょうか」

店長「プレステージシャンパーニュ全般にいえることなのですが、基本的には作柄の良い年にしか造られないんですよね。必ずしも毎年造られるわけじゃなくて、収穫量の多い年に仕込まれるケースが多い。ところがレアの場合は、そうじゃない年にも仕込まれると言われています。あくまでメゾンの判断で、良いと思ったら造るというスタイル」

ヒマ「へー! 独自の道を歩んでいる感じで、面白いですね」

店長「はい。ボトルも非常にゴージャスですが、これはもともとフランス王妃マリー・アントワネットに捧げられたキュヴェをモチーフにしています。ボトルにあしらわれた金のレリーフは、王妃のティアラになってるんです。取り外すことも可能ですよ」

ヒマ「ドゥーツのアムール・ド・ドゥーツは王冠がペンダントになって、レアはボトルの装飾がティアラになっている。プレステージシャンパーニュを飲むと、アクセサリーまで手に入ってしまうんですね(笑)」

店長「そうとも言えるかもしれませんね。ブレスレットなんかにしてもいいんじゃないでしょうか」

人生の節目にプレステージシャンパンを!

ヒマ「7本のプレステージシャンパンをご紹介いただきましたが、たしかにどれもストーリーがありました」

店長「それだけに、プレゼントにも最適なのがプレステージシャンパンの魅力と言えます。キュヴェ・ジョセフィーヌは娘さんに捧げるキュヴェ。キュヴェ・エリザベスは奥様。アムール・ド・ドゥーツは恋人、レアは尊敬する女性に。サー・ウィンストン・チャーチルは勝利を挙げた人、シャンパン・チャーリーはなにかに挑む人にピッタリです。王に捧げるワインであるクリスタルは、経営者の方に贈るのにいいかもしれません」

ヒマ「たしかに! ちょっとストーリーを添えて渡すだけで、プレゼントの深みが全然変わってきますね。ただひとつ困ったことがあるんです」

店長「なんでしょうか?」

ヒマ「プレゼントではなく、自分で飲みたい(笑)」

店長「ですよね。プレステージシャンパンは決して安いお値段ではありませんから、毎日飲むわけにはいきません。でも、人生の大きめな節目や記念日などに選び、飲むことで、その日をさらに忘れられないものにすることができます。今日紹介したシャンパンはどれも間違いなくおいしいですから、どこかで飲んでみてもらいたいですね」

ヒマ「まさに、一生に一度は飲みたいワインですね!」

ワインマーケット パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜20:00
TEL/03-5424-2580
URL/winemart.jp



Photos & Text: Hima_Wine

Profile

沼田英之 Hideyuki Numata ソムリエ、1978年生まれ。ホテルやレストラン勤務後、イタリア・トスカーナに留学。帰国後、レストランにソムリエとして勤務し、その後フランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。現在は姉妹店である都内屈指の大型店、ワインマーケット パーティの店長を務める。
ヒマワイン Hima_wine ワイン大好きワインブロガー。ブログ「ヒマだしワインのむ。」運営
https://himawine.hatenablog.com/
YouTube「Nagiさんと、ワインについてかんがえる。Channel」共同運営
https://www.youtube.com/@nagi-himawine
Twitter:@hima_wine
 

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