メディアから引用された事件の記録写真や映像を元に、紙や段ボールを使ってその現場を実物大の模型で再現した後、それを撮影することで、まるで事件現場を覗き見するような大型写真や映像をつくり出すトーマス・デマンド。私たちに現代社会を見つめ直すアイロニカルな視点を与えてくれるアーティストだ。
しかし、模型をつくるアーティストはデマンドだけに限らない。例えば、建築家もデマンドと同じように建築模型をつくっている。模型というアイデアの種、そこから生まれた小さな芽を大樹へと育てていくことが彼ら建築家の仕事。本展では、妹島和世と西沢立衛からなる日本人建築家ユニットSANAAの建築模型をデマンドが写すことで、新たに生まれる “模型の可能性” が紹介されている。
同じような素材が使われ、同じような制作方法がとられるデマンドの模型と建築家の模型。しかし、一方がイメージに還元される中、一方は数百倍の大きさの建築物に成長していく。どちらも “模型” という点では、変わらないというのに。
視覚化された情報が一瞬で全世界に配信される現代社会。しかし、目に映る数々の情報のリアリティを私たちはどこまで信じて良いのだろうか。写し出された “模型” の断片…… これまでとは違うデマンドの作品に何を見いだす?
トーマス・デマンド「Model Studies (Kōtō-ku)」
会期/2015年5月22日(金)〜 6月27日(土)
会場/タカ・イシイギャラリー 東京 渋谷区千駄ヶ谷 3-10-11 B1
定休日/日・月・祝祭日
TEL/03-6434-7010
WEB/www.takaishiigallery.com
© Thomas Demand, VG Bild-Kunst, Bonn / JASPAR, Tokyo
Text: Kahlua Tsunoda
Text: Kahlua Tsunoda