「2025年大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーとして象徴的な建造物「大屋根リング」を手がけ、注目を集める建築家・藤本壮介。建築の存在意義、未来の可能性とは? 藤本建築の“森”へ分け入り、考えてみよう。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年7・8月合併号掲載)


建築とは何か——。藤本壮介の建築は常に、この原初的な問いから生み出されてきた。1971年、北海道・東神楽町生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、大学院進学や建築事務所へ就職せずに思索を深め、2000年『青森県立美術館設計競技案』で注目を集める。08年に刊行されたコンセプトブックの副題は「原初的な未来の建築」。そして今回、初の大規模個展に寄せて「原初・未来・森」という言葉を掲げた。


「建築家とは、人と人、人と自然の関係を紡ぐ『場』を作る仕事でもあり、それは私にとっては自然と人工が溶け合う『未来の森』のような場所だといえるかもしれません」(展覧会メッセージより)。故郷の森と、雑多な要素からなる都市との共通点を「乱雑さのなかに緩やかな秩序がある」ことに見いだし、住宅のあり方を問う『House NA』、南仏の風土に育つ樹木を模した『ラルブル・ブラン(白い樹)』など、革新的なプロジェクトを手がけてきた。

模型や図面にとどまらず、全プロジェクトの資料からなる巨大な「模型の森」や「2025年大阪・関西万博」の象徴「大屋根リング」の5分の1部分模型、ブックディレクター幅允孝(はばよしたか)の選書によるブックラウンジなど、五感へ訴える仕掛けに満ちた本展。藤本の思想に触れ、未来を共に考える、またとない機会になるだろう。

「藤本壮介の建築:原初・未来・森」
いま最も注目される日本人建築家の初となる大規模個展。活動初期から世界各地で進行中のプロジェクトまでを網羅しつつ、模型に人の動きを投影、擬人化された建築作品同士が対話するなど、美術館ならではの建築展のあり方を探求する。最新情報はサイトを参照のこと。
会期/2025年7月2日(水)〜11月9日(日)
会場/森美術館
住所/東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
TEL/050-5541-8600(ハローダイヤル)
URL/www.mori.art.museum
Edit & Text : Keita Fukasawa
