大和絵や浮世絵のようなタッチで緻密に描かれた作風が、国内のみならず海外においても高く評価されている山口晃。描かれた細かなイメージに目を凝らすと、「馬を模ったバイクにまたがる武士」「超高層ビルに乗せられた瓦屋根」など、そこには時空間が混在したユニークな世界が広がっている。
この自由でユーモラスな発想が、観る者の心を惹きつけるのは間違いないが、彼の作品はそれだけでは終わらない。随所に織り込まれた歴史や美術に対しての批判精神、シニカルな眼差しに至っては、著書『ヘンな日本美術史』において第12回小林秀雄賞を受賞したことからも、造詣の深さを伺うことができるだろう。不思議な展覧会タイトル『山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ』にも表されている彼の「芸術観」。作品だけに限定されないそのカタチに触れるためには、鑑賞よりも体験こそが必要なのかもしれない。過去と現実、そして現実と非現実が混然となった「山口ワールド」をぜひ、体験してみては?
山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ
会期/2015年2月21日(土)〜5月17日(日)
会場/水戸芸術館現代美術ギャラリー
時間/9:30〜18:00(最終入場17:30)
休館/月曜 ※5月4日(月・祝)は開館
URL/arttowermito.or.jp/index.html
Text: Kahlua Tsunoda