3月8日(金)は国際女性デー。東京エディション虎ノ門主催、多方面で活躍する8名が女性の権利と健康について語る
Life / News

3月8日(金)は国際女性デー。東京エディション虎ノ門主催、多方面で活躍する8名が女性の権利と健康について語る

左から水野亜彩子、KEISHAN、May J、白川麻美、TOMO KOIZUMI、小野美智代、万美、DJ KAORI
左から水野亜彩子、KEISHAN、May J、白川麻美、TOMO KOIZUMI、小野美智代、万美、DJ KAORI

ミモザの花が美しく咲く季節。3月8日(金)は女性の権利を守り、ジェンダー平等の実現を目指すために制定された国際女性デー。この日を称え、昨年に引き続き今年もライフスタイルやカルチャーを発信するラグジュアリーライフスタイルブランド「東京エディション虎ノ門 (The Tokyo EDITION, Toranomon)」が、ファッションやアート、音楽、スポーツなどあらゆるジャンルで活躍する7名を「The Blue Room(ブルー ルーム)」のディナーに招待し、女性の権利や健康にまつわる課題や今後の未来について語り合った。

本イベントの主催者であるホテルのカルチャー&エンターテインメントディレクターを務める白川麻美は、昨年行なったトークセッションから一年を振り返り、この一年でも少しずつではあるが女性への権利やジェンダー平等に変化を感じていると話す。そこで今回は「女性のみで話し合うのではなく、一人一人のクリエイターとして話を聞いてそれぞれの思いをシェアしたい」と考え、昨年も参加した小野美智代(国際協力NGOジョイセフ事務局次長/ホワイトリボンラン創始者)、May J(シンガー)、水野亜彩子(プロサーファー)、万美(書道家)に加え、DJ KAORI(DJ)、KEISHAN(モデル)、TOMO KOIZUMI(デザイナー)の7名に声を掛けた。

地震災害で目の当たりにする女性の精神的ストレスと性被害

今年1月1日に能登半島地震が発生し、建物の倒壊、津波の被害など今も1.3万人が避難所で過ごしている(内閣府情報:2月8日時点)。また避難所から車中泊に出戻りする被災者も。地震から2ヶ月が経過し、テレビでの報道も減ってきたこの時期から精神的なストレスが大きくなると国際協力NGOジョイセフ事務局次長/ホワイトリボンラン創始者の小野美智代は話す。

小野美智代「今年は日本で能登半島地震が起きてジョイセフも支援をしていますが、女性の支援が遅れてしまうという現状があります。例えば生理用品などの支援もそうですが、『お腹が痛い』と言えなかったり、自衛隊のお風呂に生理中は入りづらい、下着を洗濯して干すこともできないなど、女性が精神的にストレスが溜まっています。震災が起きて半年後くらいの時期から落ち込んでくる被災者の方が多いんです。企業がいち早く化粧品も含めた女性のための支援品を送っているが避難所までしか行き届かず、車で生活している人たちにまで届かないんです。そういった状況が何十年も変わらずに同じことを繰り返してしまっているんです。

そしてもう一つの課題が男性への性被害です。昨年日本でもからあらゆる報道で男性への性被害があるという現実が知れ渡るようになりましたが、特に避難所などは中年男性と中学生くらいの女子が二人でいたら心配するけれど、それが少女でなく少年だったら目にも留まらず誰も心配しない。被災して何年も経った後で東日本大震災で避難生活を送っていた当時の男の子がジョイセフに「あの時性被害を受けていたと思う」とメールを送ってきたんです。町内会長さんが自分の性器を触ってきたり、触らされたりという行為をしてきて、何か違和感は感じていたけれど、地域の信頼された町内会長さんだから親にも言えなかった。だから避難所では『女性だけでなく男性の被害もあるということを知ってください』という内容のメールでした。確かに女性の支援を行なっている現場では女性が被害者と考えがちですが、女性が加害者になっている場合もある。私たちの目、無意識なバイアスが被害を見過ごしてしまうリスクがあるんだと思いました。去年、性に関する報道が多くなり、この一年で日本の社会が大きく変わったなと思います」

白川麻美「確かにこういった内容をオープントークできるような環境に変わってきていると思います。そういった話をすると打ち明けた本人が白い目で見られる恐れもあったけれど、現在はSNSの発達で個人の声が大きくなりすごく良い時代に変わってきていると思います。一人が発言したら私も言えるという、スピークアップしなければ問題は解決しないと思います」

小野美智代「昨年の7月から不同意性犯罪について、日本の刑法が変わりました。「強制性交罪」「強制わいせつ罪」が「不同意性交罪」「不同意わいせつ罪」と名称が変更されました。昨年7月までは女性が力づくで抵抗しなければ犯罪と認められなかったり、レイプされても抵抗しなければ犯罪にならず、加害者が犯罪を認めることが難しいかったのですが、今回の刑法改正で夫婦間の中でも同意のない性行為は犯罪だと認められるようなりました。また性行為の同意年齢も13歳から16歳へ引き上げられましたのですが、国際スタンダードでは18歳に引き上げようと話が出ているのに、日本は明治時代から決められていた年齢がやっと変わったというところ。世界から見ても遅れをとっているがわかります」

経験や体験をシェアすることで道は開ける。参加者の声に耳を傾けて

MAY J、万美
MAY J、万美

日々生活を送っていると感じる不平等さや違和感、不安、葛藤などを内に秘めるのでなくオープントークすることで、課題や未来が見えてくる。そうして今回参加した8名が感じた思いや出来事を述べ話し合った。

万美「去年も参加させていただいて、教えてくれなかったことをたくさん知ることができました。私は現在妊娠中なのですが、妊娠と同時に子宮がんが発覚したんです。癌はまだ発見されたばかりなので、これから精密検査をするところです。癌の発見は妊婦検診に通っているときに発覚してたので、妊娠していなかったら気づかなかったと思っています。生死を同居している状況ですが、自分にとって新しい思いなのでこれからを進んでいきたいです」

水野亜彩子「先日、一緒に解説をしている女性プロサーファーが妊娠されたんですが、つわりが酷いけれどまだ安定期でないので、周りに話せないという大変な状況でした。オープンにできる環境やシェアできることの大切さ、話し合える機会を設けられるようになっていきたいです。また細かいことですが勝利者インタビューでも椅子が白いので生理中の女性は気になる時があり、でもそれが男性が用意しているものなので悪気もない。そういった細かいところこそ伝えていかなければいけないと思っています」

 

 

MAY J「昨年第一子を出産しまして、妊娠中の生活についてお話すると、私の場合はつわりがなかったんです。だから毎日朝起きるのがとても楽しみになっていて、一週間前までパワフルに動けていました。日本で妊婦というと家にいて安静にしていなければいけないというイメージがあるけれど、海外は妊婦でもどんどん外へ出ていっている。その方が精神的にも楽になることもあるので、『辛い』だけのイメージを払拭できたら良いなと思います。また実際に出産してみて、世の中全体が子供を産みづらい状況であるのも感じます。区によって助成金の手厚さも違うのもあり、金銭的にも子供を何人も産めない状況があるのも実情だと思いますね」

TOMO KOIZUMI「最近考えていたのは呼称の話で、ノンバイナリーの人たちのことを「They(彼ら)」と呼ぶのがあるのですが、名前で呼べばそこまで気にしなくて良いと思う。『僕がゲイだから』と話すと、ゲイなら『こういうものが好きで、こういう場所で遊ぶんでしょ』と思われがちで。そういう部分もあるけれど違う部分もある。そういった人はその人自体に興味があるのではなくて、カテゴライズされたものに興味があると感じてしまいます。ただ僕自身も人のことを見るときにしないようにしても、してしまう時がある。誰もがこの人はどういう人なんだろうとシンプルに考えることが大切だと思います」

KEISHAN「人それぞれ生き方があると思うんですが、私はトランスジェンダーで世間では厳しい言葉をかける人も多いのが現状。3年前からホルモン治療を始めていたときは自分の幸せを大切にしたいと思いながらも、親のことを考えると正しかったんだろうかと考えてしまうことが多かった。SNSで発信できるようになった今の時代はとても良くなったと思っています。この現状にも感謝していますが、私はモデルとして何か伝えたいという思いが常にあります。コロナ禍ではBlack Lives Matterなど、ジェンダーに対することがとても早いスピードで変わっていったと思っていたけれど、コロナが明けて蓋を開けてみたら、また元に戻っているという印象が強いです。特にファッションウィークでヨーロッパやアメリカに行って日本に帰ってくると、特に日本の遅れ具合を感じる。ボイスアクティブができない空気感があるのをずっと感じています。私たち自身でも頑張っていくけれど、大人の人たちにも手を貸してほしいと思います」

DJ KAORI「日本も昔は、女性がオピニオンや知識を発することにおいて慣れていない男性も多く、『女の癖に……』と揶揄される時代もありました。女性のインテリジェンスに対して、認めたくないひともたくさんいたと思います。仕事で結果を出しても、同じように評価してもらえなかったり、仲間に入れなかったり。他にも辛いなと思ったのは、同じジャンルの仕事している女性がいれば、女性というだけで、個々のキャリアとかは度外視され、本人が望まざるとも、まるでビューティーページェントのように周りから比べられたりすることも多くあったと思います。それって、女性が『選ばれる性』として、社会の中で受動的な存在として生きてたことが大きいんだと思うんですね。そういう現実や刷り込みの中で、キャリアの面でも女性同士がライバルになり、手を携えられない状況が生み出されてしまうことも多々あったと思います。令和の今は女性の社会進出も進んで、世の中がどんどん変わっているのを肌で感じています。仕事だけでなく社会全体で個々としての存在がもっともっと認められていけば良いなと感じます」

他にも選択夫婦別姓制度についてや緊急避妊薬の試験販売(販売している店舗の少なさや海外に比べて国内は高価格帯であること)、シングルマザーの現状などあらゆるトピックに対する思いをシェアした。東京エディション虎ノ門は6月の「プライド月間」でイベントを行なったり、プライドをテーマに作られたカクテルの提供やレインボーカラーのルームアメニティを入れるなど、インクルーシヴな環境づくりを提案しているホテルだ。ぜひ周りの友人や仕事仲間、SNSでも自らの思いを言葉にして話し合ってみよう。

東京エディション虎ノ門
住所/東京都港区虎ノ門4-1-1
TEL/03-5422-1600
URL/www.editionhotels.com/ja-JP/tokyo-toranomon/

Photos:Reiko Hirose Text:Saki Shibata

Magazine

JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

Future Vision

25年未来予報

オンライン書店で購入する