人間の存在を問う、ダイナミックなインスタレーション。大巻伸嗣 個展 @国立新美術館 | Numero TOKYO
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人間の存在を問う、ダイナミックなインスタレーション。大巻伸嗣 個展 @国立新美術館

圧倒的な光や闇、空間の広がりを前にしたとき、人間の意識はどうなるのか。ただ「美しい」の一言では済まされない。これは見る側の問題でもあるから。大巻伸嗣 ── 崇高にして底知れぬアートの時空が、国立新美術館に出現する。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年12月号掲載)

『Rustle of Existence』2023年 Photo courtesy of A4 Art Museum(中国・成都)
『Rustle of Existence』2023年 Photo courtesy of A4 Art Museum(中国・成都)


「美しいという言葉にも怖さがある」。この春、小誌のインタビューに大巻伸嗣が語った言葉。そう、大巻の作品は美しい。一枚の布がたゆたうように宙を舞う。極彩色の文様が鑑賞者に踏まれて消えていく…。しかし「美しい」の一言で終わらないところにこそ、私たちが向き合うべき何かがあるのだ。

例えば、今回の展示の始まりを告げる「Gravity and Grace」シリーズ。

『Gravity and Grace』(全図)2023年 Photo courtesy of A4 Art Museum(中国・成都)
『Gravity and Grace』(全図)2023年 Photo courtesy of A4 Art Museum(中国・成都)

『Gravity and Grace』(部分)2023年 Photo courtesy of A4 Art Museum(中国・成都)
『Gravity and Grace』(部分)2023年 Photo courtesy of A4 Art Museum(中国・成都)

美しい文様を施された壺から強烈な光が放たれ、動植物たちの影を映し出す。しかしこの光は、核分裂反応の爆発的な力の暗示でもあり、原発事故を経てなおエネルギーに依存し続ける社会への批評をはらんだもの。

これに限らず大巻の作品は、身体のスケールを凌駕する空間や光、音響などを用いて感覚を強く揺さぶり、見る者自身の意識を浮き彫りにしてみせる。生きるとは、この世に存在するとはどういうことか。その問いをめぐる思索の痕跡を、制作中に描かれる無数のドローイングにも見て取ることができる。

パリのエルメス セーブル店の個展に際して制作された宙を舞う布の作品『Liminal Air Fluctuation- Existence』のためのドローイング 2015年(参考図版)
パリのエルメス セーブル店の個展に際して制作された宙を舞う布の作品『Liminal Air Fluctuation- Existence』のためのドローイング 2015年(参考図版)

台湾・関渡美術館で実施された無数のシャボン玉を用いた作品『Memorial Rebirth TAIWAN Road』のためのドローイング 2013年(参考図版)
台湾・関渡美術館で実施された無数のシャボン玉を用いた作品『Memorial Rebirth TAIWAN Road』のためのドローイング 2013年(参考図版)

本展で大巻は、総面積2000平方メートルもの空間に巨大インスタレーション群を展開する。生と死、環境と意識、自然と文明 ──「美しさ」を超越した体験が、あなたの前途に広がっている。

「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」

「私たちはなぜ生きるのか」という問いに基づく新作をはじめ、東日本大震災〜パンデミックの約10年間に探求した文明と自然、生と死に対する考察の深化が提示される(観覧無料)。

会期/2023年11月1日(水)〜12月25日(月)
会場/国立新美術館 企画展示室2E
住所/東京都港区六本木7-22-2
TEL/050-5541-8600(ハローダイヤル)
入場料/無料
URL/www.nact.jp
※最新情報は上記サイトを参照のこと。

 

 

Edit & Text: Keita Fukasawa

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