脱・ストレス宣言! ストレスとの付き合い方、その最前線を知る!
「人間は社会的動物である」とはアリストテレスの言葉とされるが、私たちは人と関わりながら生きている以上、
ストレスをゼロにすることは難しいもの。ストレスに対処する方法を知って、もっと身軽に前向きになろう。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』12月号掲載)
そもそもストレスとは? もとは機械工学用語だった
「“ストレス”は、もとは機械工学用語。物体に外部から力を加え、引き伸ばしたり縮ませたりするときに物体内部に起こる“歪み”のことをストレスといいます。外部からかかる負荷のことを『ストレッサー』、それが心や身体に現れるのが『ストレス反応』。ストレッサーに晒されることで、いわゆるストレスホルモンが分泌され、心身にさまざまな作用をもたらします」
ストレッサーはゼロにできない!身につけるべきは“レジリエンス”
怖い上司がいるのに気にしない人、膨大な仕事量なのに淡々とこなす人……。同じようなストレッサーがかかっているのに、まったく気にしない人と多大なストレスに感じる人がいる。
「ストレッサーをどう捉えるかは個人によって違います。“個人的要因”がストレス反応の有無や大小に影響しているのです。余談ですが、日本人には“恐怖を感じやすい”遺伝子を持つ人が多いため、ストレスを感じやすい人が多いとも言えます」
人によってストレスの感じ方に差があるのが当たり前、個人差があることを知っておこう。ストレッサーをゼロにすることはできないけど、ストレスを乗り越える力=レジリエンスを高めて、ストレス反応に対処する方法を知ることが大事。
狩猟時代を生き抜くために必要だった“ストレスホルモン”
「ストレッサーに晒されると、脳内の視床下部から下垂体に指令が届き、さらに副腎からはコルチゾールが、副腎髄質からはアドレナリンが放出されます。こうしたストレスホルモンの作用は、原始時代に大型動物に襲われたときなどに血圧や心拍数を上昇させて身体を“戦闘モード”にして備えるために必要だったのです。問題は、本来短期的であるべきストレス反応が長期化してしまうこと。交感神経やコルチゾールの過剰状態が続くと、動脈硬化や高血圧、血糖値の上昇、腸内環境の乱れ、リンパ球やNK細胞の減少による免疫力低下につながります。過剰なコルチゾールは、脳の海馬に作用することでうつ病の発症に関係することもわかっています」
肌においてはコラーゲン産生が低下するという研究結果も。ストレスは美肌にも健康にも大敵!
ストレスをコントロールするには“呼吸法”や運動が有効
疲れているのに頭が冴えて眠れない……という経験はないだろうか? それは、自律神経が無意識下で働いていて自分ではコントロールしにくいものだから。アロマや、温浴、運動などの外的アプローチにより自律神経がコントロールされ、深いリラックスを得ることができるのは周知のとおり。それをいつでもどこでも、内側から働きかけることができるのが“呼吸”なのだ。
「呼吸は、意識と無意識の両方の支配下にある生理機能です。意識的に呼吸をゆっくり深くすることで、無意識下で変化する自律神経にまでアプローチができるということ。ヨガや瞑想の達人は、呼吸が心身にアプローチすることを経験値としてわかっているのでしょう」
お話を聞いたのは…
鎌倉元氣クリニック 松村浩道 院長
日本医科大学卒業。米国ストレス研究所代表。東洋医学、栄養療法、温泉医学、予防医学などに通じ、心身相関・脳腸相関を重視した診療を行う。著書に『対人関係のイライラは医学的に 9 割解消できる』(マイナビ出版刊)、『脳腸相関で未病を征す』(七星出版刊)。
Illustration : Yuri Ichimura Edit & Text : Naho Sasaki