草彅剛&香取慎吾インタビュー「35年のふたりの絆。7年ぶりのふたり芝居」
2015年に行われた、作・演出 三谷幸喜による草彅剛・香取慎吾のダブル主演舞台「burst! 〜危険なふたり〜」。7年という月日を経て、“危険なふたり”が再び舞台でよみがえる。7年ぶりの奇跡の再演──現在日々、舞台に向けての稽古に励む2人にリモートでインタビュー。
7年の歳月を経てよみがえる、奇跡のふたり芝居
2015年の公演の際、三谷幸喜が「これは草彅剛と香取慎吾のために作った作品です」と語ったように、息の合った俳優同士だからこその想定外の“仕掛け”を施した舞台に。そもそも、この作品が誕生したきっかけとなったのは、草彅・香取のラジオ番組にて「いつか2人でお芝居やりたいね」と話した会話だったそう。
──「burst! 〜危険なふたり〜」の再演が決定したとき、どんな気持ちでしたか?
草彅剛(以下 草彅)「もともと、慎吾ちゃんとラジオを2人でやっていて。フリートークのときに「舞台を2人でやってみたいね。2人芝居もやったことがないからやりたいよね」というのを話したことが三谷さんのお耳に入って、書いてくれたんです。そんなこともあって、僕にとっては特別な作品で。
ドラマも映画も舞台も…台本は終わったらすぐに処分しちゃうんですよ。『ありがとう』って気持ちを込めて、自分の関わった台本はいつも処分するんですけど、7年前の『burst!』の台本だけはとってあった。なんかね…やっぱりちょっと捨てられなくて。そういうことって、珍しいことなんです。僕が台本をとっておいたから、再演になったんじゃないかなって(笑)。この作品は慎吾ちゃんとの2人のいろんな歴史が詰まっているような作品。なので、やっぱり少し特別な舞台……だから、きっともう大変なことになりますね! 幕を上げたときから‼︎」
香取慎吾(以下 香取)「つよぽんは、ずっと『いつかもう一回やりたい』と言い続けていたよね。この4〜5年で、三谷さん&僕らの周りのスタッフ&つよぽん…とじわじわと。みんなで『再演はどうだろう』と言ってたんです。その中に、僕は入っていないんですけど(笑)。それで、決定打となったのがこのコロナ禍で、三谷さんが『これは2人芝居なのに、あまり顔を合わせるシーンがない珍しい作品。ソーシャルディスタンスな舞台』だとおっしゃった。三谷さんが何か言ってくださって、それをやらないっていうことは考えられないので『よしやろう!』と」
──稽古中に三谷さんからはどんなリクエストがありますか? また、どんなお話をされていますか?
草彅「僕はとにかく、この脚本が好きで、面白くて。もともと“古畑”とか、三谷さんの作品がずっと大好きなんです。結構たくさん見ていて。密室劇の『笑の大学』もそうなのですが、やっぱり三谷さんならではという演出があって。(稽古中も)セリフのテンポやトーンなど『こうしてほしい』と細かいやりとりをしています。三谷さんの中でも、より良い方法を探してるような感じがしたり。いつも、すごく発見がありますね」
香取「自分たちでも、(稽古を)やりながらなんとなく感じてたところなんですけど。7年前の公演の時は、結構走り抜けるように、休む間もなくセリフを続けて……というような作品だったのですが、そこは変わらないんだけれども、どこか7年経っての落ち着きというか……『じっくり、もうちょっと噛み締めてこの作品を演じてみたらどうだろう』という三谷さんからの言葉で、前回よりももう少し大人な作品に仕上がりそうだなと思っています」
「舞台という場所は、演じる側の俳優にとって、
いちばんその人のすべてが見えてしまうようなところ」(草彅剛)
──7年前と比べて、お2人も様々なことを経験されて進化していると思うのですが、稽古をする中でお互いに「進化しているな」と相手に感じることはなにかありますか?
草彅「進化ですか……そうですね、特にないかな(笑)。変わってないというか。大人にもなってない気もするし(笑)。いい意味で変わってないというか。もちろん成長はしてると思うんですけど、変わらずこの空気を楽しめている2人だなって思う。それが、素晴らしいなっていうところなので、進化は本番で! だから、本番を見届けてください。進化する2人を。うまくまとめました(笑)」
香取「草彅さんは、本当に舞台が好きなんだなっていうのが今回、感じられます。前回の稽古が始まるときのことがすごく印象的で。三谷さんとの舞台をするのが初めてだったので、つよぽんはすごい緊張してて(笑)。ずっと三谷さんの作品のファンだったから、稽古場で『三谷さんの演出を受けられるのが初めてだから、すごい嬉しいです!』みたいな始まりだった。『なんで、そんな緊張してんの〜!(笑)』みたいな感じがあったんです。今回は2回目なんで、それはなかったですね(笑)。あとこの7年間という時間を重ねたなかで、つよぽんはきっといろんな舞台で経験を積んで。彼が舞台が好きで、稽古も好きで…という感じが溢れ出ているのが、進化したというか。あのときとは、違うなと感じます」
──俳優として舞台に立つことの面白さはどこにありますか?
香取「やっぱり生の緊張感ですかね。そこがいちばん難しいところで、僕が舞台を苦手とする理由の一つでもあるんだけど。いざやるとなると…その生の緊張感のなか、いつもやっていること、ずっと稽古で積み重ねたものをやらなければいけない。でも、なんかいつもと違う空気が流れた瞬間、そこを軌道修正したり。または、修正せずに『今日はこの空気で進もう」とか……同じことを繰り返しながらも、その瞬間によってどこか変化があるというのが面白いなと」
草彅「映画とドラマ、舞台の違いは、はじめのふたつは失敗の部分が見られないんです。編集したり、『もう1回やらせて』と監督にお願いすることができるから。でも舞台の場合は、はじまったら全部見えてしまう。そのものすごい緊張感は、僕が好きなところなんですよね。だからもしかして…舞台という場所は、演じる側の俳優にとって、いちばんその人のすべてが見えてしまうようなところだと思う。そんなところも楽しんでいただけたら。面白いですよね。その時々で変わるから、本当に一期一会だなと思う。それがゆえに、全身全霊をもって挑むっていう感じですかね」
「『ミッドナイトスワン』を見たときに、
自分はもう俳優という仕事を辞めようかなと思うぐらい、
素敵な俳優さんだなと思った」(香取慎吾)
──2人の絆は7年という時間を経て、より強まっていると感じますか?
草彅「まあ、長いですからね、慎吾ちゃんと一緒にいるの。人生においてここまで定期的に会う人間って、いないんじゃないかな。いないよね? だって、30年以上!?」
香取「35年ぐらい」
草彅「やばくない!?(笑) 35年間、定期的に会う人間っていいますか? 普通、いないですよね」
香取「“定期的に会う”って……その言い方、なんだよ(笑)」
草彅「定期的に(笑)。僕は学生時代の友達とかもいないですから。だから、唯一ですよね」
香取「初演のときからの7年での変化というよりか…もう35年という時間あるから、あんまりこの7年での変化というのは感じないかな。草彅さん、ありますか?」
草彅「長年の蓄積による絆であって。35年間も一緒にいて、なんかやっぱりそこに生まれるものがあって。だからすごい新鮮な気持ちもあるんですよ。7年前の作品を再演するって、これまたちょっとした奇跡だなと思うんです。やっぱりそれだけ、好きでいてくれる人がいるからできるわけで。自分たちも、この作品が好きだし。だから、新しく7年経った絆もその作品には表れるだろうし…今、すごく新鮮な気持ちなんです。毎日、『俺、元気!』っていうか(笑)。『楽しいなあ〜』ってワクワクが止まらない感じです。こんなに空気感がいいから、これはとてもいい舞台になると思います。やっぱり、それが作品も出ちゃうんじゃないかなと思って」
香取「空気感の良さっていうのが、僕にはわからないんですけれども」
草彅「うん。それはねまだ素人だからね(笑)」
香取「ははは(笑)。やっぱり、草彅さんよりも舞台の経験がないから。でも周りのスタッフさんとからすると『すごい静かだ』って言われますよね。2人芝居で、2人しかいないのもあるけれど、静かなのはそれでいいの?」
草彅「問題が起きてないから、静かなんだよ」
香取「稽古中に問題が起きるの?」
草彅「起きる、起きる! 『ここはどうなってるんだ』みたいなさ。監督さんと話し合って、進まなかったりとか。でも『burst!』はスラッて進むじゃん。進まないよ、稽古って」
香取「今、稽古は1日、(台本)20ページずつぐらい進んでる」
草彅「めちゃくちゃ順調だよ! やばいよ!」
──「burst!」の稽古を通して、お互いに再発見した俳優としての魅力はありますか?
草彅「やっぱり、俳優として華があります。慎吾ちゃんはね。それって、舞台人にとってめちゃくちゃ大事なことなんですよ。僕には持ってない華がある。単純に、立ち姿とかがいいんですよ。なにもしないでも絵になっちゃうっていうのは、悔しいっすよね。これは、非常に大事なことで。なにもしないで、そこの空気とか空間を埋められる。もっと、慎吾ちゃんには舞台をやってほしいですよ」
香取「草彅剛は、昔から好きな俳優さんではあるんですけど、近年それこそ映画『ミッドナイトスワン』を見たときに、自分はもう俳優という仕事を辞めようかなと思うぐらい、素敵な俳優さんだなと思った。舞台を見させてもらっては、『すごいな〜』っていつも思っていて。こんな近くにいる存在であり、好きな俳優さんなんですね。映像なり舞台で彼を見ていると、すごくストイックな完璧な姿。でもいざ今回、久々にこうやって舞台を一緒にやってみて…今まだ稽古の段階ですが、全然できてないんです(笑)。それが、びっくりしてますよ。ここからどういう感じになるのか……。今は時々『大丈夫?』っていう感じもするのに、本番になればきっといつも見ている舞台のように、完璧な姿を稽古を経て作り上げていくんだっていうのは、びっくりしちゃいますね」
『burst! 〜危険なふたり〜』
日程/2022年10月1日(土)〜26日(水)
会場/日本青年館ホール
作・演出/三谷幸喜
出演/草彅剛、香取慎吾
企画・製作/(株)CULEN
チケット料金/S席 12,500円(税込)/A席 7,500円(税込)
公式サイト/https://burst-2022.com/
Interview&Text:Hisako Yamazaki Edit:Chiho Inoue