ブシュロンの伝説としても語り継がれる 新作ハイジュエリーコレクション『ニュー マハラジャ』
Boucheron(ブシュロン)は毎年1月に、かつて制作したアーカイブ作品やデザイン画などからインスピレーションを受け、クリエイティブディレクターのクレール・ショワンヌによって現代的なアレンジを加えた新作ハイジュエリーを発表している。今回の新作は、1928年にインド・パティアラのマハラジャのスペシャルオーダーにより、ブシュロンが制作した伝説的なデザインをオマージュ。インドを象徴する要素や伝統的な宝石彫刻であるグリプティック技法を用いた、新しい圧巻のコレクションを発表した。先日、それらのハイジュエリーたちが日本でもお披露目となり、展示会に伺ってきましたので、シェアしたいと思います!
今回のコレクションのイメージソースである、ブシュロンに伝わる物語がワクワクするほどおもしろい。
1928年夏、マハラジャは40人もの従者を引き連れパリを訪問。(この一行のために、オテル・リッツでは35室のスイートルームを用意したそう!)その従者全員が宝石のぎっしり詰まった鉄の金庫を抱え、向かった先がヴァンドーム広場のブシュロンのブティックであったのだ。当時、創業者であるフレデリック・ブシュロンの息子、ルイ・ブシュロンがマハラジャ御一行を迎えたそうなのだが、金庫の中身を確認して驚愕! その中には、7500石のダイヤモンド、1500石のエメラルド、そしてルビーやパール……など、かつて見たこともないほどの、財宝が詰まっていたそうなのだ──。
マハラジャは、これらの宝石のすべてをジュエリーに仕立て欲しいと依頼。ブシュロンはマハラジャのために、149点のジュエリーを考案したのだという。
デザイン画を見ただけでも、前代未聞の豪華絢爛さが見てとれる。エメラルドやダイヤモンド、そして幾重にも連なったパールのネックレス、貴石で飾り立てたベルト……など、ブシュロンによって生み出されたハイジュエリーは、今日でも語り継がれる伝説的な作品となった。そして、2022年、クレール・ショワンヌによって、この時の作品へのオマージュ『ニュー マハラジャ』が発表されたのだ。
日本に来日したネックレスがこちら。インドを象徴する蓮の花を讃えた「ニュー マハラニ ネックレス」。ホワイトゴールドにセットされたダイヤモンドが肌の上に繊細なレースを描くように寄り添う。それぞれの蓮の花にはクッションダイヤモンドが施されていて、中央の蓮の花に輝くのは4.08ctのダイヤモンド! このネックレスは、中央から上下2つに分けることができ、それぞれをチョーカーとしても着用できるマルチウェアジュエリー。壮麗なデザインながらも、透明なロッククリスタルを使用し、非常にモダンな仕上がりで見たことがないほどの輝きに!
こちらの流れるような美しいネックレスは、インドの伝統的なロングネックレスからインスパイアされてデザインされた「ニュー マハラニ クリスタル ネックレス」。ホワイトゴールドのコードにダイヤモンドが敷き詰められ、インドでは石化した水だと考えられていたロッククリスタルに、宝石を彫刻するグリプティク技法を採用。ネックレスの両端のロッククリスタルには彫刻が施され、アーティスティックなデザインに目が釘付け。ずっと見ていられる美しさだ。
この豪華なエメラルドのネックレスは来日こそしていませんでしたが、今コレクションのメインであり、マハラジャの伝説的なオーダーを物語る「ニュー マハラジャ ネックレス」。中央のモチーフはコロンビア産エメラルド9石[合計約40カラット]から成り、ブローチとしても着用することが可能に。また、ブローチパーツを外した状態でのネックレスは、バゲットカットのエメラルドが首のラインに沿い、あらゆる身体の動きになめらかにフィットする。ネックレスの美しさを損なうことなく軽やかな印象にするために、1928年時には外側にセットされていたエメラルドをダイヤモンドにチェンジしたそう。さらに、ロッククリスタルで覆うことで、ダイヤモンドは輝きが増し、その優美な曲線が強調されたデザインへと変貌した。
ブローチスタイルにすると、メンズがつけても素敵なマルチウェアジュエリーですよね!
個人的に、素敵な女優さんが着けたらさぞかしドラマティックで美しいだろうな〜と思ったのがこちら! マハラジャが誇らしげに身に着けていた、ターバンの装身具サルペックは、クレール・ショワンヌの視点を通して、ヘッドジュエリーへと美しく進化。こちらはブローチとしても着用可とのこと。
毎年ブシュロンのハイジュエリーコレクションを拝見して、かっこいいな〜と感銘を受けているのが、ゴージャスなリングの重ね着けスタイリング。こんな豪華なリングたちを一度でよいので、自由にごろごろと着けてみたい〜!(笑) 新作は、ロッククリスタルの透明感がピュアで高い輝きを放つ唯一無二のリングたち。右手薬指のカショロンのリングの上にセットされたロッククリスタルのドームには、グリプティックの技法を用いて彫刻された透明な蓮の花が美しく咲いている!
というわけで、ここまで『ニュー マハラジャ』コレクションをご紹介して参りましたが、このコレクションが、長い歴史を持つパリのメゾン・ブシュロンにとっても、なぜ伝説とされているかという所以……。それは、当時の素晴らしいジュエリーたちがどこかに消えてしまった、とされているからだ!
パティアラのマハラジャがオーダーしたのが1928年で、彼が亡くなったのが1938年。一度だけ、彼の息子と後継者が肖像画の中でネックレスを着用していたそうなのだが、それ以外では、これらのジュエリーは一度も目にされていないらしい。考えられる可能性は二つだという。一つは、マハラジャが亡くなった1938年に妻と子供たちにジュエリーは分け与えられた。もしくは、金庫やトランクなどのどこかに保管され、未だひっそりと眠っているかもしれない!? ということ……!
まさに前代未聞の財宝であり、大きなミステリーも残された伝説のマハラジャのハイジュエリー。私たちが生きている間に本物が発見され、拝見できる日が来ることを楽しみに待つばかりではないだろうか──。
Boucheron
ブシュロン クライアント サービス
TEL/0120-230-441
URL/https://jp.boucheron.com/
Text:Aika Kiyohara