夢はたくさん見るほうがいい。夢を叶えるためには、 ただただ、頑張り時を見つけて動き出すだけ。 | Numero TOKYO
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夢はたくさん見るほうがいい。夢を叶えるためには、 ただただ、頑張り時を見つけて動き出すだけ。

2021年9月28日(火)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年11月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズレター。

(左)通常盤 ¥730(右)赤楚衛二が表紙&別冊付録付きの特別版 ¥980
(左)通常盤 ¥730(右)赤楚衛二が表紙&別冊付録付きの特別版 ¥980

今号は“夢”について。子どもの頃に将来を夢見て、夢を追いかけ現在がある、という人はたくさんいると思います。また、見ていた夢を諦めた人だって同じぐらい、いやもっとたくさんいるのかもしれません。いま現在、夢を叶えようと進行形の人もたくさんいますよね。

娘の小学校卒業式では、これから中学生となる子どもたち一人一人が、壇上で将来の夢を語るという時間がありました。「不当な扱いを受けている動物や殺処分に遭う動物を救える職業に就きたいです」「不思議な建築に興味があるので建築に携わる仕事がしたいです」「おいしいお菓子を作るパティシエになりたいです」「本が好きだから本に囲まれる仕事がしたいです」――みな、将来を明確に見据えた立派なスピーチでした。小学生でありながら、こんなふうに自身の未来像を描けることに感動すら覚えました。もちろん大人になって違う職業に就いているかもしれません。それでも、夢を描いて想像をすることはとても大切です。いや、それがなければ何も始まりません。将来設計を語る子どもたちには「みなを幸せにしたい」「笑顔にしたい」「喜んでもらいたい」という他者への思いが根幹にあるように感じられました。偉すぎる。私が子どもの頃に見ていた夢は他人のためだっただろうか。よ〜く思い返してみると自分がなりたいと描いた夢の発端は、すべては自分軸でした。試しに周りの同世代に聞いてみたところ、モテたかった。目立ちたかった。自己表現だった。稼げそうだった……理由は数多ありますが、起点は等しく自分軸でした。現在の子どもたちとの違いはいったいどこから生まれてくるのでしょうか。いつかこの差異にも迫ってみたいです。

さて。前置きが長くなりました。今回、このテーマを決めた大きな理由は、去る7月にジャンポール・ゴルチエのオートクチュールコレクションをパリで発表したサカイの阿部千登勢さんでした(p.70〜)。引退したゴルチエさんの後をゲストデザイナーが継いで、オートクチュールコレクションを発表するという新プロジェクト。その第一弾としてゴルチエさんのハートを射止めたのがサカイでした。千登勢さんがよく知るゴルチエ・コードをサカイらしくデザインしたルックの数々は、ゴルチエでありサカイ、サカイでありゴルチエというとても新しく力強いものでした。2020年6月に発表予定だったショーをコロナ禍により2度見送り、もちろんオンライン発表という選択肢もあったそうですが、リアルなショーにこだわった千登勢さんのこのショーは、パリのクチュール界のみならずモード界を大いに賑わせました。コロナ禍でありながら変わらず多忙を極める阿部千登勢さんが取材の際に発した言葉が印象的でした。「あまりにも忙しい私を気遣う娘に『ママはいま、頑張り時なの』と伝えたら『ママ、ず〜っと頑張り時だって言ってるよ』と返された」そうです。まさにそうです。夢を叶えていく人は、この“ず〜っと頑張り時”を手にしている人なんだと。社会の情勢がどうであれ、常に“頑張り時”な機会が訪れることも素晴らしいですが、それは頑張り続けてきた結果でもありますよね。

今の夢は、4年前に始めた津軽三味線を、 もっと上手に弾けることです。
今の夢は、4年前に始めた津軽三味線を、 もっと上手に弾けることです。

今号では、“夢”にかけて“リボン”も特集しています。コロナ禍の混乱が始まった昨年、皆さまに勇気を与えたいと特集した138号(2020年7・8月合併号)「時間が教えてくれること」の「絵でつながる未来」にて、創作あーちすととしても活躍されるのんさんに絵の制作をお願いしました。その際、カラフルなリボンをたくさん身に纏った少女の作品「未来の視覚」が生まれ、それ以降リボンに魅了され、監督・脚本・主演を務める映画『Ribbon』を生み出したそうです(p.100〜)。のんさんの夢を叶える力に脱帽します。小さなきっかけですが、小誌の依頼に端を発して生まれた作品と伺い、とてもうれしい思いです。

皆さまはどんな夢を描いていますか?

Numéro TOKYO編集長 田中杏子

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