アインシュタインも滞在した「ウェスティン都ホテル京都」 創業130周年を記念して大リニューアル!
1890年、京都人が待ち望んだ“琵琶湖疏水”の完成とともに産声をあげた「ウェスティン都ホテル京都」。近代日本のモダニズム建築の粋を結集したホテルは、アインシュタインやヘレン・ケラー、チャップリンなど、歴史上の人物も滞在した名門中の名門です。そして創業130年を記念し、3年の年月をかけて一大リニューアル。バージョンアップされた魅力をお届けします!
リニューアルのコンセプトは、“女王の気品”漂うエレガント
華頂山のふもと、東山に最も近い斜面を生かし、5万5000坪もの敷地を誇る「ウェスティン都ホテル京都」。その歩みは130年前から始まります。
当時、琵琶湖疏水の完成により、豊かな水を生かした近代の庭園文化が開花。ホテル近くの一体は活況に満ちました。そんな背景を汲みつつ、昭和を代表する建築家・村野藤吾の流れるような曲線美のデザインを生かしたホテルは、まさに歴史的遺産です。
そんな「ウェスティン都ホテル京都」が創業130年を機に、一大リニューアルを行いました。そして2021年4月、敷地内を掘削した天然温泉を活用した2100平方メートルものスパの完成をもって、3年間におよぶ改装プロジェクトがコンプリート!
リニューアルのコンセプトは、“気品ある女王”として国内外にその名を知らしめるべく、「The Queen of Elegance」。
もとある風情を大切に守りながら、ゆったりとした間取りやエレガントで上品な施設など、新たな魅力がアップデートされました。生まれ変わった魅力のほどを、探っていきましょう。
水路閣をモチーフにした、優美なアーチの半露天温泉が話題!
今回のリニューアルのハイライトは、地下1200メートルから湧出した天然温泉を利用した、京都最大級のスパ!
本館の5階・6階に広がる「SPA華頂」は、なんと広さ2100平方メートル! 客室からスパへ直行することもできます。
注目を集めているのは、半露天温泉。琵琶湖疏水を引いた“水路閣”をモチーフにしたデザインは、優美なアーチを駆使し、歴史とともにモダンさを伝えるもの。緑の坪庭とたっぷり降り注ぐ外光により、開放的な印象です。
男性の内風呂は大胆かつシャープな曲線と、大きな窓が特徴的。女性の内風呂は建築家・村野藤吾の曲線美をオマージュし、窓はないけれど、天井からのライトで星のきらめきが演出されています。大小2つの浴槽とジャグジー、男性用はドライサウナ、女性用はスチームサウナがあります。
スパはリトリートサロン「Le Jardin Sothys(ル ジャルディン ソティス)」を併設しています。
1946年にフランスで誕生したSOTHYS社のルーツ、コリーズ地方オーリャクの“ビューティーガーデン”から、“庭園(ジャルディン)”がスパ名に冠されました。
トリートメントの特徴は、植物に秘められたエナジーを体内に取り込む“ボタニカル・スパ・リチュアル”。シグネチャーメニューはエステティック×温泉浴×植物のエナジーを組み合わせたプログラム。午前または午後の半日をかけて、ゆったりと心身ともに癒す贅沢な体験です。
SPA「華頂」とは別に、WESTIN WORKOUT フィットネススタジオも完備。
部屋数を減らして、1室のスペースをグンとワイドに!
客室に関しても、今回のリニューアルで注目したいポイントです。
スーペリアというカテゴリーをなくし、これまで2室だったスペースを1室にするなど、平均客室面積が約35平方メートルから約50平方メートルに拡大! これまで499室だったのに対し、266室と部屋数を絞ることで、各部屋がゆったりとした間取りになりました。
ユニットバスだったバスルームも洗い場をもうけるなど、使い勝手が重視されています。
客室のデザインは東山の自然をイメージ。鴨川の川底をイメージしたカーペットや梅の花を模したスツールなど、京都らしさを香らせつつ、流麗な曲線美が生かされています。
エントリークラスのデラックスは中庭ビューまたは平安京ビューの2種類。シャンパンゴールドをアクセントに使い、カーブを生かした家具やレトロガラスを使ったナイトランプなど、レトロモダンなイメージです。
憧れは、本館各フロアに1室のみのコンセプトルームと呼ばれるラグジュアリースイート。南禅寺の三門や五山送り火が望める窓際のソファ&デイベッドは、横になってくつろげる大きなサイズ。ゆったりとしたバスルームは重厚感のある石タイルで、バスタブは自動で湯量調節をしてくれます。まさに気高き女王をイメージさせる、上品かつ贅沢なお部屋です。
スイート以上には最先端ドライヤー(ドライヤーというより美髪器!?)のレプロナイザーを用意。また、電話の赤いボタンを押せば、“サービスエキスプレス”という、オペレータが対応して待たずに済むサービスも。
スイート以上のゲストは、チェックインも優雅に東館3階にあるクラブラウンジで行います。朝食やカクテルタイムのフードの充実、フリードリンクの種類も豊富です。
ホテルの中の究極の数寄屋風別館「佳水園」で庭園美にひたすら見惚れる
「ウェスティン都ホテル京都」の敷地の一画にありながら、別の宿に訪れたような数寄屋風別館「佳水園」。檜皮葺きの門をくぐると、空気感が凛と変わります。
見どころは、「佳水園庭園」(京都市文化財<名勝>)。もとある自然の岩盤を生かし、中央に琵琶湖疏水を水源とする滝が流れた大胆な庭園です。そして村野藤吾による「白砂の中庭」へと続きます。こちらは、緑で瓢箪(ひょうたん)と杯(さかずき)を表現し、佳水園庭園の岩盤から流れてくる滝の水をお酒に見立てる遊び心が光っています。
1959年に村野藤吾によって建造された佳水園。もともとの地形のままに高低差を生かした棟の配置、銅板葺きの屋根の連なり、幾重にも組み入った庇など、そのたたずまいは幽玄の美。
この佳水園もリニューアルにともない、客室数を減らして1室のスペースを広く確保。全室で天然温泉が楽しめるようになりました。
12室すべて異なる間取り(52~101平方メートル)で、月・雪・花と名付けられています。中でも佳水園庭園の岩盤を上から見下ろす「月7」の眺望は圧巻。文豪・川端康成もこの部屋がお気に入りで、『古都』をここで執筆。きっと筆を休めては、この眺めに心癒されたことでしょう。
スチール棒で編んだ下地窓、三次元和紙でリモデルした村野ブランケット照明など、従来の姿に現代の技巧を調和。いわば、モダンな数寄屋造り。かつての建材を再利用もし、新旧がみごとに溶け合っています。
ホテルとは異なり、ここでは女将がおもてなしを行います。チェックイン時にはお抹茶で一息。専用ライブラリーで過ごし、庭園を愛で、緩やかな時間が流れています。
さらに特別な旅ならば、1日1組限定の佳水園プランを。事前に聞いた好みをもとに京都の食材で特別にあつらえた料理を部屋食でいただけます。このスペシャルなプランを、ご両親にプレゼントされた方もいるとか。
シグネチャーダイニングはスターシェフの“ドミニク・ブシェmeets京都”
パリと東京で活躍するセレブリティシェフ、ドミニク・ブシェが監修した高級フレンチレストラン「Dominique Bouchet Kyoto『Le RESTAURANT』」。
京都産のえりすぐりの食材を取り入れ、彼ならではのフレンチの技巧を凝らした一皿を供します。銀座とは異なる京都ならではのメニューは、フーディーにとって気になるところ。
ウォークインワインセラーに並ぶ、300ラベル2500本のワインからソムリエが提案する1本と一緒にどうぞ。
併設の「Dominique Bouchet Kyoto『Le Teppanyaki』」は、ドミニク・ブシェ初の鉄板焼きレストランです。前菜から始まり、京都産や神戸牛などのブランド牛をメインに魚介類やシメのお食事、デザートまで、目の前で仕上げるフレンチの鉄板焼き。シェフのオリジナリティも効いています。
オールデイダイニング「洛空」は、“五感で楽しむカウンター”がコンセプト。ただのブッフェとは一線を画し、西洋料理や日本料理、デザートなどのライブキッチンのカウンターが点在、あちこち回遊しながら好きなものを好きなだけ選ぶスタイルです。
目の前で揚げてもらう天ぷらや盛りつけてもらうデザートなど、見た目も楽しく、文字通りのできたてなので美味! 加えて、蒸し器でアツアツの飲茶のワゴンサービスも回ってくるので、お見逃しなく!
他にも、ティーラウンジ「MAYFAIR」では英国の新しい紅茶ブランド「JING TEA」をラインナップ。上質なフルーツを使ったケーキや自家製カステラなどの和テイストのお菓子と一緒に楽しめます。
バー「麓座」では豊富なシャンパンとピアノの生演奏で、大人な夜を。シャンパンはグランヴァンとヴィンテージを含む約100ラベル300本を用意。シャンパンとセイボリーがセットになったイブニングハイティ、日曜日の昼下がりのシャンパンブランチもおすすめです。
朝の散策が気持ちいい探鳥路や名庭園
5万5000坪もの広大な敷地には、遊歩道の“探鳥路”を整備した、華頂山も含まれます。
この探鳥路、往復で約40分ほどなので、朝の散策にぴったり。市街地近くながら、季節ごとに多くの野鳥がウォッチングでき、朝の磨かれた空気の森林浴は気持ちがいいものです。春は桜、夏はせみ時雨、秋は紅葉など、四季折々の楽しみも。
途上には、旧東海道の頃から旅人を守ってきたお地蔵様や、“蹴上の稲荷”として人々から信仰を集めていた「御百稲荷神社」も鎮座しています。このお稲荷様の“御百”とは“お百度”や“数多く”の意味があり、ひたすら拝礼することで商売繁盛や無病息災などのご利益に預かれるそうです。
そして最終地点の「都だいら」からは平安神宮大鳥居や比叡山など、東の京都の眺望がぐるりと広がります。
また、敷地内にある「葵殿庭園」も雅な散策ルート。日本の近代庭園の先覚者、七代目小川治兵衛が作庭した、晩年の熟成期に手掛けた傑作です。
琵琶湖西岸から疏水船で運んだ守山石の“静”、「雲井の滝」と呼ばれる三段の滝の“動”のコントラストがみごと。池や小川を“沢飛び”で渡り、木々を愛で、歩きながら景色の移り変わりを堪能できる、回遊式庭園です。
ちなみに、この庭園を手掛けた七代目小川治兵衛の長男は、佳水園庭園を造った白楊。親子二代の名作庭園が同じホテルの敷地内で見学できるのは、ウェスティン都ホテル京都ならではのだいご味でしょう。
また、1890年の創業から続く、歴史や伝統、調度品や美術品を、ホテルスタッフが案内する館内ツアー(無料)も、興味深いもの。東館2階に2020年新設された「都ギャラリー」では、かつて使われていたVIP用の食器なども展示されています。
伝統と進化が融合した客室に、天然温泉や名庭園……。京都ではあちこち観光スポットを回りたくなるけれど、1日はホテルで過ごす時間をとって、ゆっくり味わいたいものです。
ウェスティン都ホテル京都
住所/京都市東山区粟田口華頂町1(三条けあげ)
TEL/075-771-7111
URL/www.miyakohotels.ne.jp/westinkyoto
Photos & Text: Chieko Koseki