アーティストが改めて考える“家族” vol.2 中村健太
急激な変化を余儀なくされたいま、あらためて日常とはなんと愛おしいものだろう。写真で表現するアーティストたちにとっての、家族のつながりとは。3Dメガネを使ったシリーズ「Your story」など、日常に違和感を潜ませる写真で世界から注目される写真家、中村健太の場合。 (『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年10月号より抜粋)
言葉を超えた、意識の微粒子を写真で捉える
「普段人が考えない部分を刺激して、それがきっかけの一つになって、人との一体感やつながりみたいなものを残していけたらいいなと思っているんです」
さりげない日常の中にある、ふとした違和感。白雪姫の衣装を着たおばあさんの写真は、そんな中村の写真に対する思いが反映された一枚だ。
「家族に『俺はカメラマンになる!』と宣言したときに、祖母がいちばん驚いたんですよ。聞けば、蒸発してしまった祖父は暗室を構えて写真を撮るような人だったと。それで祖父が撮った写真を見せてもらったら、自分が撮る構図と似ていて驚いて鳥肌が立ったことがあったんです」
朝食を食べていたおばあさんは、借りてきた白雪姫の衣装を着てほしいという孫の依頼に対して「あんた、どうするつもり?」と言いながらも、「すごくフラットな状態で、僕の撮影に向き合ってくれた」そうだ。
「写真を撮る行為を通じて、言語を超えた別のコミュニケーションをとることができるようになったとき、祖母を通じて会ったことのない祖父の存在を感じ取ることができたんです。それがうれしかった」
カメラがなかったら気づくことがなかったかもしれない人とのつながり。「あれ?」と思わせてくれる中村の写真には、つながりの物語が詰まっている。
Interview & Text:Kana Yoshioka Edit:Mariko Kimbara