五感で体験する野生なるもの「鴻池朋子 ちゅうがえり」展 | Numero TOKYO
Art / Feature

五感で体験する野生なるもの「鴻池朋子 ちゅうがえり」展

『皮トンビ』「瀬戸内国際芸術祭2019」展示風景
『皮トンビ』「瀬戸内国際芸術祭2019」展示風景

アートの新地平(ホライゾン)を切り開くべく、今年1月に誕生したアーティゾン美術館。珠玉のコレクションと現代アーティストの初共演企画に、鴻池朋子(こうのいけ・ともこ)が登場。人々と世界の関係が問われるなか、新たな道筋のヒントが浮かび上がる。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年6月号掲載)

『Dream Hunting Grounds』「ハンターギャザラー」展示風景(2018年)秋田県立近代美術館
『Dream Hunting Grounds』「ハンターギャザラー」展示風景(2018年)秋田県立近代美術館

先の見えない危機のなかで今、アートにできること。それは、人々と世界の関係を見つめ直し、新たなるつながりのストーリーを提示することではないだろうか。

狩猟採集という人間文化の原型を探求し、絵画や彫刻、絵本、玩具などの多彩な手法で現代の神話とも呼ぶべきヴィジョンを提示するアーティスト、鴻池朋子。その新作インスタレーションが、今年1月にオープンしたアーティゾン美術館の1フロア全体に出現する。

『ツキノワ 川を登る』(2018年)
『ツキノワ 川を登る』(2018年)

ギュスターヴ・クールベ『雪の中を駆ける鹿』(1856-57年頃)石橋財団アーティゾン美術館蔵
ギュスターヴ・クールベ『雪の中を駆ける鹿』(1856-57年頃)石橋財団アーティゾン美術館蔵

これは同館が1952年開館の旧ブリヂストン美術館から引き継いだ石橋財団コレクションと、現代美術家の共演による「ジャム・セッション」の第1弾企画。森羅万象を象(かたど)った影絵燈籠が取り囲む新作の大襖絵(おおぶすまえ)の空間に、同館所蔵のクールベやシスレーらの作品が対置され、鴻池によるオオカミや風、雪女の声などが響き渡る。各展示室の間には動物たちの毛皮や木、毛糸などで作られた「森の小径(こみち)」が。五感全体で原初的な身体性を目覚めさせる、鴻池が「みる誕生」と呼ぶ体験が待ち受けている。

『Dream Hunting Grounds』「ハンターギャザラー」展示風景(2018年)秋田県立近代美術館
『Dream Hunting Grounds』「ハンターギャザラー」展示風景(2018年)秋田県立近代美術館

世界はかつて、目に見えない野生の神秘に満ちていた。その失われた感覚への「ちゅうがえり」を誘(いざな)う試み。息吹あふれる豊かな地平へ、新たな一歩を踏み出そう。

鴻池朋子近影
鴻池朋子近影

アーティゾン美術館外観
アーティゾン美術館外観

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子
「鴻池朋子 ちゅうがえり」

会期/開幕日延期・未定〜6月21日(日)(予定)
場所/アーティゾン美術館
住所/東京都中央区京橋1-7-2
TEL/03-5777-8600(ハローダイヤル)
www.artizon.museum
※同館は日時指定入場制。チケット購入や開館状況など、最新情報は公式サイトを参照してください。

Edit & Text : Keita Fukasawa

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