史上最大級の回顧展は必見!『没後50年 藤田嗣治展』
東京都美術館にて『没後50年 藤田嗣治展』が10月8日(月・祝)まで開催中(京都国立近代美術館に巡回)。レオナール・フジタの名でも知られる彼の大回顧展、その見どころは。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年10月号掲載)
色褪せない「乳白色の問い」
国際的アーティストの先駆けにしてトリックスター、そして時代にほんろうされた画狂人。そんな希代の画家は、トレードマークだったおかっぱ頭の奥で何を考え、丸メガネを通して世界をどう見たのか。そこには彼の絵同様、今も古びない人生の問いがある。
大正期に単身渡仏し、透き通る乳白色と柔らかな線の裸婦像で、狂乱の時代のパリにて一躍スターダムに。第二次世界大戦で帰国するも、軍部の要請で描いた「作戦記録画」が戦後に非難を浴び、再出国しフランス国籍を取得。カトリック信者となり生涯を終えた。
今回注目すべきは、こうしたメインストーリーに呼応する代表作に加え、その幕間にあった重要作にも丁寧に光を当てたこと。たとえば模索期の、ピカソかモディリアーニかという画風。または中南米や、秋田、沖縄を旅して生まれた、太陽と大地の匂いがしそうな作品群。さらに長い「晩年」に描いた子どもたちや宗教画など。日本初公開をふくむ100点以上の展示は、構成の工夫もあり集中して鑑賞できる。
また、じつは当時のファッションやテキスタイルを精緻に描いている点や、「藤田といえば猫」というほどひんぱんに登場する猫たちを愛でるのも楽しい。こうしたマルチレイヤーな展示は、多くの人にとって回顧をこえた発見の場にもなるのでは。なお、本展のキャッチコピー「私は世界に日本人として生きたいと願う」は藤田の言葉だが、実際は続きがある。「それはまた、世界人として日本に生きることにもなるだろうと思う」。今その真意に思いを馳せたい。
『没後50年 藤田嗣治展』
会期/2018年7月31日(火)〜10月8日(月・祝)
会場/東京都美術館
住所/東京都台東区上野公園8-36
開室時間/9:30〜17:30
※会期中の金曜日は20:00まで
※入室は閉室の30分前まで
休室日/月曜日(10月1、8日は開室)
URL/http://foujita2018.jp/
問い合わせ/03-5777-8600(ハローダイヤル)
2018年10月19日(金)〜12月16日(月)京都国立近代美術館に巡回
Text: Shinichi Uchida Edit:Sayaka Ito