デビュー66年目! “言葉以上”の「谷川俊太郎展」開催中
好きな服はTシャツ。愛用の道具はMacBook。自らをして「私は背の低い禿頭の老人です」(『自己紹介』より/ 2007年)。──この人は一体、何者なのか。デビュー66年目、軽妙なる詩人のあれこれから、言葉を超えた余韻と愉悦が花開く。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2018年3月号掲載)
展覧会フライヤー(2種類のうち一つ/グラフィックデザイン:大島依提亜)
谷川俊太郎(詩人/1931年生まれ)。その名前から思い浮かぶイメージは、人によってさまざまだ。本展はそのイメージを打ち壊し、見つめ直す試みになるという。だいたい、珍しくないとはわかっていても、詩人が美術館で個展を開催する時点で“詩人の枠”をはみ出している気がする。文字まみれの耳なし芳一になった空間が目に浮かぶ。
作家近影(Photo: 深堀瑞恵)
でも、文字や言葉は画家にとってのキャンバスと同じ、表現を伝達するための手段にすぎない。絵画や写真や彫刻、そして詩も、その印象は私たちの内側に生じて余韻を残す。特に言葉はじわじわくる。十人十色、予測不可能に発酵が進み、こびりついたり弾けたりする。恐るべきイメージの時限爆弾。でも、当の詩人は素知らぬ顔だ。
少年時代の谷川俊太郎(1942年頃)
意識/無意識を問わず、そんなふうに人々をふつふつとさせておきながら、出来上がったイメージをまたぶっ壊して再発酵させる、パンク極まる異能の所業。詩はもとより『鉄腕アトム』の主題歌、スヌーピーこと『ピーナッツ』の翻訳、映画の脚本などあれやこれやの仕事から、自身が影響を受けた事物や音楽、日常生活の写真、小山田圭吾(音楽家/コーネリアス)、中村勇吾(インターフェイスデザイナー)とのコラボレーション作品発表まで。味わい方はあなた次第、香ばしきイメージまみれの谷川俊太郎空間へ、ようこそ。
絵本『こっぷ』文:谷川俊太郎 写真:今村昌昭 AD:日下弘(福音館書店/1972年)
谷川俊太郎展
会期/開催中〜2018年3月25日(日)
場所/東京オペラシティ アートギャラリー
住所/東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL/03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL/www.operacity.jp/ag
関連企画として、1月27日(土)に都築響一、2月10日(土)に小山田圭吾との対談を開催。3月10日(土)には谷川俊太郎の詩の朗読と現代詩を歌うバンドDiVaによるスペシャルライブも。詳細は上記公式サイトにて。
Edit & Text : Keita Fukasawa