徳井義実インタビュー
「変態の大黒柱としてやってきました」
自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。徳井義実のビフォー&アフター。
お笑い、MC、俳優と、さまざまな現場を行き来する徳井義実。ドラマ『セシルのもくろみ』では物腰の柔らかいカリスマ・ヘアメイクアップアーティスト安原トモとして、主人公を支える重要な役どころを演じている。
──主人公を演じる真木よう子さんをメイクする気持ちはいかがですか?
「実際にメイクするシーンもありますが、女優さんの顔を触るのは本当に緊張します。もともとメイクはされているから、触りすぎてメイクを崩してもあかんし、真木さんの台詞をじゃましてもあかん。でもアイシャドウ、アイラインが何かわかっただけでも収穫になりました。いつかコントやバラエティで使えると思います」
──ヘアメイクさんのイメージは?
「昔から個人的にお願いしているヘアメイクさんがいて。その人も物腰や話し方がすごく柔らかくて、オネエ?と思っていたぐらい。僕もスッピンを見せるわけだから、変に格好をつけることがなくなりますね。彼ともすごく仲が良くて、恋愛の話とか、何でも話します。安原を演じるにあたって参考にしているところもあります。あとは女装のコントをやっているので、安原は女性的な身のこなしをもっと男に寄せた感じ」
──『セシルのもくろみ』はファッション誌の編集部が舞台。ヌメロ編集部にも取材にいらしたんですよ。普段ファッション誌は読まれますか。
「男にしては割と読むほうだと思います。趣味程度に写真を撮ったりするので、このヴィジュアル面白いなあと参考にしたり。また、こういう企画が女性たちに面白がられているんやな、流行っているんやなって。“この秋のトレンドはコレ”“ナントカでちょっと大人っぽく”とか、ワードをチェックしたり」
──けっこう斜めから見てます(笑)?
「それをインプットしておいて、コントで出す(笑)。編集者の女の子のコントとかあるので、取材ではこういう感じなのか〜と。使ってみたい台詞を貯めておきます」
──それは緊張します(笑)。ファッション誌の人間はどんなイメージですか。
「すっごく好きですよ。取材でも相手の気持ちをちゃんと持ち上げてくれる質問をして、『ああ、そうなんですね〜』と真剣に相づちを打ってくれるけど、本当はそこに心はないんやないか?と疑ってみたり(笑)」
──(笑)。他の取材とは違います?
「ファッション誌にとっては、きっと僕らは珍しい人種だから、割と興味を持って聞いてくれるんですけど、テレビ誌とかだと慣れているから「今のレギュラーの皆さん、仲いいんですか。へぇ〜。最後に撮影のほう、お願いしまーす」。もっとオートマティックでビジネスライクな感じもあります(笑)」
──ネタ作りもされるし、よく人間観察していますね。仕事での転機は?
「やはり大きいのはM-1グランプリの優勝でしょうね。それをきっかけに東京のテレビの仕事を始めて世界が変わりました。全く違うんですよ。大阪でお笑い芸人が出られるのはネタ番組と情報番組の若手枠で、純粋なお笑い番組がないんです。でも東京にはお笑い番組もあり、芸人だけじゃなく俳優さんと絡むトーク番組もある。ピンで出る機会もいただいて、まさか俳優の仕事まで、ね」
──出演作も多く、俳優としての活躍も目覚ましいものがありますが。
「いやいや、何でもやらなあかんと思っていますが、俳優の自覚は全くないです。明らかに水が違う。畑違いの人間がおじゃましている感じ。毎回、大丈夫かなあ、馴染めるかなあと思いながら。何で呼んでもらったんだろうと、役割をよく考えます。バラエティの番宣向きだからかな、とか(笑)」
──俳優の仕事は何が楽しいですか。
「人の書いた台本の台詞をしゃべるのは新鮮ですし、全く違う人になるのは楽しい。あとドラマって、どこか大人の文化祭みたいな感じがするんですよ。大勢で一つの作品を作り上げる作業がすごく好き。実は人見知りでネクラなんですけど。一番はそこかなぁ」
──かっこいいと思う俳優は?
「金子ノブアキくん。好きなんですよ! 今回のフォトグラファー役もぴったりですし。ずるいよ〜、RIZEをやりながらドラマもやるって!」
──徳井さんもかなりずるいですよ。女性週刊誌の2017年抱かれたい男、お笑い部門第1位、総合でも今をときめく俳優、高橋一生さんと同列7位。
「そうなんですか!? 旬の高橋くんと! 僕はエロいことばかり言っているから、何してくれるんやろう、こいつ?という期待があるんじゃないですか」
──理由は「顔と変態性」(笑)。
「いちおう変態の大黒柱としてやってきましたから」
──きれいな顔をしていらっしゃるのが、お笑いではデメリットにもなるかと。
「めちゃくちゃありますね。そのデメリットと戦い続けてきたといっても過言ではありません。やはり見た目が面白いほうが、同じことを言っても面白くなる。そこをカバーする武器の一つが変態。高校生の頃からエロを人とのコミュニケーションツールに使ってきたんです。男同士が腹を割るには、エロ話ができないとやっていけないでしょ」
──それが女性にも認められて。人生のターニングポイントはいつですか。
「16歳のときかなあ。高校で友達が『昨日あのネタ見た? やろうぜ!』って声をかけてくれました。彼がいなかったら、お笑いをやっていないです。休み時間にふざけてやり始め、“赤とんぼ”というダサいコンビ名を付けて、そのうち文化祭でやるようになって。それでもお笑い芸人になるとは全く考えていなかった。高校を卒業したら、今度は別のやつがNSCに入ろうと誘ってきて。当時、大学受験に失敗して『予備校に行く』と言ったら『予備校に行きながらでもNSCは行ける』と、彼が僕の分まで願書を書いて『ハンコだけ押して!』と。それでNSCに入ったんです。ずっと人に動かされる人生ですね(笑)」
──タイミングよく、そういう人が出てくるのも運ですね。
「ところが、その友達はNSC卒業と同時にやめると言い出して。ほな僕もやめようって。そいつ以外と組むなんて考えられなかったから、一度やめました。それで、20歳になって幼稚園からの幼馴染みの福田とそんな話をしていたら、福田が『俺もお笑いやりたいわ』と言い出して。お互いに大学に行ったから、本格的にやり始めたのが23歳」
──誰かが必ず現れて、徳井さんをお笑いの道に連れていく。
「確かに。福田がおらんかったら、今、お笑いやっていないです」
──何をやっていたと思いますか。
「ベンチャー企業の社長! 自転車を押していても、脛にガツンと当たらないペダルを考えて、一発当ててやろうと思っていたんですけどね!(笑)」
Photo:Akihito Igarashi
Interview & Text:Maki Miura
Edit:Saori Asaka