大田由香梨「変化を求めて旅に出る」 | Numero TOKYO - Part 2
Life / Travel

大田由香梨「変化を求めて旅に出る」

“ライフスタイリスト”の名にふさわしく、衣食住の全てをコーディネートするマルチな才能の持ち主、大田由香梨に聞く。

モンゴル、アフリカ、ボリビアなど、大田由香梨がこれまで旅してきた場所は独特だ。それだけに旅で得た思い出もユニークだったり、感動的だったり。たくさんの国を旅した彼女が選んだ特に思い出深い場所とは?

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モンゴルで体験した一生の思い出 ──モンゴルでは遊牧民の家にホームステイをしたとか。 「ちゃんと代理店を通じてリゾートホテルを予約したんですが、着いたらなぜか空いていなかったんです(笑)。それで現地の代理店の人が遊牧民のお家を手配してくれて泊まらせていただくことになって。1週間ほどゲルで寝泊まりしました。移動は馬で、辺りは本当に何もない景色が広がっているんです。あるのは草原だけ。だから移動するときもどこに向かっているのか私にはさっぱり分からなくて。
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でも現地の人は当然わかっているんですよね。シャーマンのいる山に行ったり、馬に乗って子供たちと山登りをしたりしました」 ──食事はどうでしたか? 「とにかく食事がずっと羊のお肉で、ひたすら羊でした(笑)。野性味のある匂いがかなり強くて、最初は息ができないくらいきつかったんですが、1週間もいたらすっかり慣れて。
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現地の人は赤ちゃんの時から羊のしっぽの生肉をおしゃぶり代わりにしているくらいなので、羊はお母さんの味なんです。ごはん以外にスープもお茶も羊のミルクでした。それだけモンゴルの人にとって羊は大事な食糧なんです」
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──1週間滞在してみてどうでした? 「とても幸せでした。やっぱり遊牧民なので、持ち物がミニマルなんです。必要最低限のものしかないけどそれで充分足りるし、家族みんながとても幸せそうで。火も薪から起こす生活なんです。朝、私が起きたときに寒くないようにと滞在先のお母さんが早朝やってきて火を起こしてくれたりして。火を中心に人が集まって、炎を絶やさないために家族みんなが一つになるというような生活。それになんだかジーンとしてしまいました。ずっと誰かと一緒にいる生活だったので、そんな人と人とのつながりに感動しっぱなしでした。
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ある日、ホームステイ先のお父さんの友人に会いに行ったんです。お父さんの古くからの友人で、独特の青白い目をした中年の男性でした。モンゴルには徴兵制があって、お父さんとはその時に知り合ったみたいなんです。モンゴルはまだまだ寿命が日本より短く、中年となると日本ではかなり高齢。当時の徴兵訓練の話を聞いたり、お父さんとの思い出話を聞いたんですが、もちろんお父さんと友人はモンゴル語だし、私は日本語。お互い全く言葉が通じないはずなのに、心が通じ合って互いの話の内容が全部理解できた気がしたんですよね。彼は私に『何があっても絶対に生きろ』と話してくれて。お互い泣きながら話をしていました。それは忘れられない一生の思い出となっています」

アフリカで出会ったマサイ族

Ms.COINTREAU

Photos:Yuji Numba(Portrait), Yukari Ota
Text:Mari Higure
Edit:Yukiko Shinmura, Kefa Cheong

Profile

大田由香梨(Yukari Ota)ライフスタイリスト。雑誌や広告を中心にスタイリストとして活躍をしながら、2011年に自身がプロデュースするカフェ・レストラン「ORGANIC TABLE BY LAPAZ」を外苑前にオープン。ファッションに加え、店舗内装やフードのディレクションもスタートし、“衣食住”すべてのスタイリングを行うことで活躍の幅を広げる。14、15年はグローバルファッションコミュニティ「FARFETCH」のスタイルアンバサダーも務めた。16年著書『THE LIFESTYLIST』発売予定。Instagram @otayukari

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