若き6代目アルフレッドが情熱を注ぐ
「コアントロー」の魅力とは?
オレンジリキュール「コアントロー(COINTREAU)」を継承する家元の6代目であり、ヘリテージ・マネージャーとして世界中のバーテンダーや愛好家に最高のカクテルを伝え広める若きホープ、アルフレッド・コアントローにインタビュー。
情熱に突き動かされ、伝統を引き継ぐことを決意
——幼い頃からさまざまな経験をされてきて、現在は仕事として伝統を引き継いでいるアルフレッドさんにとって、「コアントロー」という偉大なブランドを背負うことの意義とは?
まずはこの苗字のもとで生まれ育ったということで、「コアントロー」というリキュールも、また会社の仕事を担うことも私にとっては非常に自然に受け入れることができました。ただ、この苗字が世界的に何を意味しているか深く理解すると同時に、フランスを代表するものの一つであると自覚する必要があると今も思っています。一族の方針としては、他の世界にも目を向け、視野を広げていくということがあります。そして一番重要なことは、「家族の一員がこのビジネスを受け継ぐべき」というプレッシャーから否応なしにやらされるわけではなく、自ら情熱にかられて打ち込むことなのです。
——なるほど。アルフレッドさんもコアントロー社で正式に働くまでは別の仕事に就いていたこともあるのですか?
実はこれまでオフィス機器の販売をしたり、食品会社に勤めたり、あとは経済誌の宣伝部にいたこともあります。全く違う業種の仕事をやっていました。コアントロー家に生まれたからといって必ずしも家業を継ぐ必要はない、好きな仕事に励めというのが家訓でした。そしていろいろな経験をしているうちに、やはりこの自分の姓を冠したリキュールに携わりたいと思うようになりました。そんな時に祖父(ピエール・コアントロー)にその気持ちを打ち明けたところ、どんな仕事であれ、情熱を持って取り組めるかが重要だと言いました。ファミリービジネスを受け継ぐ心の準備ができているか自問しましたが、答えは明白でした。今もなお、朝起きた瞬間から、「コアントロー」のために自分の出来得る全てを捧げるという情熱に後押しされてベッドから出ていく、という感覚です。6代目だからと無理やりに引き継がされていたら、このような気持ちにはならなかったでしょう。
——ピエールさんからはほかにどんなビジネスの哲学を受け継いだのですか?
「コアントロー」という名前を敬い、そしてそこで働く人たちを尊ぶ。そしてこの一目でそれとわかるボトルがありますので、商品自体をリスペクトすること。今でもよく覚えているのですが、5年前のとても素敵な春の日、祖父に「もうお前もコアントローのレシピを知るべきだ」と言われ、私はとてもわくわくしました。その材料とは、「水と氷と砂糖、そしてスイートオレンジとビターオレンジのピールだ」と祖父は言いました。「うん、それはわかった。それで秘密の成分は何?」僕はそう聞き返しました。「アルフレッド、何を期待してたんだ。花でも入っていると思ったか?ハーブでも入っていると思ったのか?」。私たちのコアントローは紛れもなく4つの材料だけでできている。実はボトルの形状にも意味があり、4つの材料からできるので4つの角があるのです。そしてその原材料は100%自然のものなのです。
伝統を守りながら、革新を続けるために必要なこと
——「コアントロー・クリエイティブクルー」は、幅広いジャンルで活動する女性クリエイターをサポートするというプロジェクトですが、このプロジェクト自体の発足の背景は?
これまでコアントロー家のレガシー、今までの遺産から基づいた形で色々なインスピレーションを受けて、さまざまなプロジェクトを打ち出してきました。コアントローを発明した私の曾曾祖父のエドゥアール・コアントローの妻、ルイーザもまたクリエイティブな女性でした。もちろん彼女は絵描きとかそういった芸術的なクリエイティブというより、社会に対して人々に手を差し伸べるという意味でさまざまな創造性を発揮してきました。当時は水が引かれていないので、貯めた水で生活をしていた従業員に週2回醸造所蒸留所でシャワーを浴びてもらったり、第一次世界大戦中には、アンジェの都市街でコアントロー社が病院を設立し、戦争で負傷した兵士を受け入れたりと、人々に対して何か貢献するということをずっとしてきました。我々は、19世紀のルイーザが社会に対してやってきたことと同様なことを、この時代にクリエイターをサポートするという形で進めていきたいのです。
——アルフレッドさんにとってのMs.コアントローとは?
私のなかでのMs.コアントローは3人います。まずは4代目の私の祖母エリザベスです。レガシーでありパッションであり、現代に生きる女性です。2人目は元マスターディスティラー(蒸留製造の責任者)のベルナデッド・ラングレーさんです。すでに引退されましたが、コアントローのレシピ全てを管轄していた彼女こそが「ザ・マダム コアントロー」と言えるでしょう。私の第2の母のような存在でもあります。そして3人目が私の娘、第7代目のルイゾンです。名前はルイーザからとりました。まだ1歳5か月ですが、コアントロー家の跡取り娘なのです。
——ルイゾンさんにはどんなことを将来学んでほしいですか?
私がこれまでに受けてきたことと同じかもしれませんが、まずファミリーネームをリスペクトして、そしてこのアイコンとしてのボトルに対しての情熱、そしてクリエイティビティを育んでいってもらいたいと思います。
革新し続けるための展望とは?