21世紀少女 vol.3ハードボイルドな砂糖菓子作家超越KUNIKA | Numero TOKYO
Culture / Post

21世紀少女 vol.3
ハードボイルドな砂糖菓子作家超越
KUNIKA

フォトグラファー田口まき&小誌エディトリアルディレクター軍地彩弓がお送りする「21世紀少女」。クリエイターやアーティストなど、21世紀的な感覚を持つ新世代女子を一人ずつ紹介する新連載。vol.3のゲストは、スイーツアーティストのKUNIKA。彼女の作品に囲まれた“KUNIKAワールド”で行われた撮影・取材では、終始、彼女の真面目さと謙虚さ、それに表現に対する熱さが伝わってきた。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2015年5月号掲載)

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軍地彩弓が読み解く「スイートなKAWAIIの裏側」 KUNIKAに初めて会ったのは2年前。そのとき彼女がくれたプレゼント、それが蝶々と唇のクッキーだった。蜷川実花のファンだという彼女が作った『ヘルタースケルター』モチーフのクッキー、そのあまりの精度の高さにびっくりして、そこからイベントなどでクッキーやケーキの制作を頼むようになった。彼女の飛び抜けたところはオリジナルな世界観を持っていることと、その再現力のすごさだ。自身で潜って撮影するという海の中の写真。それをモチーフにスイーツ個展まで開き、10日間で延べ1700 人もの動員をした。 「3歳から中2まで水泳をしていたんです。本気でオリンピックを目指そうと、とにかく毎日水の中で育ちました」 本気で打ち込んだ水泳だが、これでは食べていけない、と自覚したとき出会ったのが職業体験の授業で見たケーキ職人の世界だった。 「お菓子の専門学校在学中に、マンダリンオリエンタルホテルのシェフに出会って、道が開けました」 本当なら雇ってもらえないところを直接交渉して、インターンにしてもらい、パティシエとしてホテルに就職。そこで2年間、ケーキ作りの日々。女の子の憧れの職業でもあるパティシエという仕事も実はかなりのハードワークである。朝から晩まで毎日、重いクリームを混ぜ立ち仕事をこなす。友人である田口まきは、彼女のすごさを「ものすごい量をきちんと作り上げる力」だという。大量の仕事にもめげずにやり通す力はやはり水泳で鍛えた根性のたまものなのか。 「子どもの頃から、人にはできないことを仕事にしたい! と思っていました。誰にもできないことを仕事にするって実は大変なことなんですよね。でもできる限りの努力はしたかった。目の前の仕事を懸命にしていたら、今があったという感じなんです」。 “スイーツアーティスト”として名刺を作ってからまだ1年。今では個展もし、ブランドイベントでクッキー制作、本2冊、雑誌の表紙デザイン、今後某大型コラボの仕事が決まっている。恵まれた環境だが、ハードワークをこなす力技があってのこと。彼女がよく言う「武器」という言葉がある。 「いろんなことに挑戦して、唯一無二の存在になりたい。自分の世界観を武器にして生きていきたい」 甘い世界を作る女の子からこぼれる硬派な言葉。水泳に明け暮れ、その後も深夜までケーキ作りをしてきた体育会系の努力家な側面と、深海まで見る甘く可愛い世界がシンクロして、独自の世界を作り上げている。甘いだけじゃ生きられない、ハードなだけでは脆すぎる。KUNIKAのハイブリッドな生き方が今っぽくて新しい。

KUNIKAを読み解く 周りの“モノ”たち

Photo:Maki Taguchi
Director:Sayumi Gunji
Text:Rie Hayashi

Profile

KUNIKA(クニカ) マンダリンオリエンタル東京でパティシエとして修業したのち、スイーツアーティストとして独立、多方面にわたり活動中。自身の感性を通してスイーツをアートに落とし込み、新たなジャンルを広げている。

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