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Culture Post

21世紀少女 vol.28
雑誌から始まった、新しいつながりの形
HIGH(er) magazine編集長、haru.

フォトグラファー田口まき&小誌エディトリアルディレクター軍地彩弓がお送りする「21世紀少女」。クリエイターやアーティストなど、21世紀的な感覚を持つ新世代女子を紹介。今回のゲストはインディペンデントマガジン『HIGH(er) magazine』の編集長 haru.。彼女がいつも編集会議をしているという渋谷のカフェ「オンザコーナー」にて、メロンソーダを飲みながら取材を行った。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2017年11月号掲載

軍地彩弓が読み解く「ミレニアルズが作る、雑誌カルチャーの今」

待ち合わせは渋谷のカフェ。ここはharu.がいちばん通う場所。「クリームソーダが大好きで。編集会議もここでしているんです」一昨年からスタートして、HIGH(er) magazineは4冊目。今やTSUTAYAなどでも置かれるくらい認知されたインディペンデントマガジンは大学生のharu.が編集長だ。1500円の単価で年2回発行している。「もともとZineを始めたのが、まだ私が留学先のドイツにいたとき。その頃まだ言葉の壁があって理解してもらえないジレンマから、自分の存在を表現したいという思いがありました。日本人である自分の考えを一冊の本にすることでたくさんの人が手に取ってくれて。本という“モノ”にする大切さを知ったんです」。ドイツから戻り、東京芸大に入ってからもその思いは消えなかった。

「人の体験って尊い。その記憶を刻むことはWebではできない。Webは間口も広く誰にでも読めるけど、受動的でしかなくて。本は人が手に取ってくれて、能動的で、その人のペースで私たちの世界を感じ取ってもらえるから」。

雑誌を作りたい! 最初の資金は母からの借金。その一冊目が話題になった。書店も自分で回り、TSUTAYAが置いてくれて最初の400冊が売れた。2号目からはクラウドファンディングを利用して資金を集め、同時にWebページも開設してクリアケースなどのグッズ販売を開始。ファンたちを集めたローンチパーティも開き、ファンを少しずつ広げていった。いま編集しているスタッフは5名。カフェに集まって、今みんなが気になっているテーマを話すことから始まる。女の子の生理の話やピルのことを取り上げるのもスタッフの思いから。テーマを決めたら、まずメインとなるヴィジュアル撮影を話し合う。「これが一冊の方向性を決めるからとても大事なんです。そこからまた取材を重ねて、一人ひとりが関心があるものを集めて一冊が出来上がります」。テーマは日常をベースに置いている。「しっかりと生きながら、その上で夢を見る。だから非現実的なことより、誌面は現実的なテーマが多いんです」。

haru.にこの先のことを聞いてみた。「みんなの場としてこの雑誌があり続けることが大事かなって思ってます。この先、大学院に行きたいとか、またドイツに行きたいという思いはあるけど、この雑誌はずっと続ける、そう思っています」。

haru.の頭の中

21世紀的感覚を持った新世代の若者は、普段どんなことを考えているのだろう? そのヒントは、彼らの周りの“モノ”にもちりばめられている。haru.の周りには、まさに彼女の頭の中を映し出すような文章やカルチャーにあふれていた。

(上から順に)
1. 7月に発売したissue no.4ローンチパーティでの一枚。(左から)音楽担当のマユ、ヘアメイク担当のキョウコ、編集長ハル、映画担当のタオ、スタイリングのマド。
2.「哲学や思想に興味があります」。『他者の苦痛へのまなざし』(スーザン・ソンタグ著)
3. 愛用中の手帳。
4.『暗い時代の人々』(ハンナ・アレント著 )
5. 雑誌『ELLE girl』にて、FENDIとコラボしたページ。

(左上から順に)
6. HIGH(er) magazine isuue no.1〜4の表紙たち。
7. iPhoneには友達のイラストを挟んでいる。
8. いつもつけているリップはM・A・Cの赤。

(左上から時計回りに)
9. 毎日飲んでいるピル。issue no.3では“性”がテーマの特集も展開した。
10.「ペンギン! ベルトに付けたりしてます(笑)」
11. 20歳の誕生日にもらったコム デ ギャルソンの香水。「ボトルデザインから中性的な香りまで大好き」

(右上から時計回りに)
12. コレクションしている雑誌の一部。
13. 高校生のときにドイツで買った『FULLY BOOKED』には、ひたすら良い本が紹介されている。「掲載されている装丁を参考にしたりしていました」
14. CDプレイヤー。「電池を入れて聴くけど、アルバム一枚しか電池がもちません(笑)」
15.『PURPLE ANTHOLOGY』は『PURPLE』創刊当時からのレイアウトや特集が見られる。「ハイアーのメンバーもすごく影響を受けて大好きな本です」
16. 大好きな友人にもらった『知と愛』(ヘッセ著)。「メインの登場人物二人にお互いが似ているからと言われて、一気に読みました」

haru.の年表

2011年 16歳
3.11から1週間後、二度目のドイツ留学が始まる

2014年 18歳
一人でZINE制作を開始

2015年 19歳
東京藝術大学に入学とともに帰国

2015年 20歳
現在の主要メンバー5人でHIGH(er) magazine Issue no.1を出版

2017年 22歳
7月にIssue no.4を出版

haru.への5つの質問

──今の日本をどう思いますか?(政治・経済・文化など、総合的な意味で)

「カオス(笑)。国会もカオスだし、良い方向に向かう気は全くしない。でも、その中でどんな時間を過ごしていくかが大事な気がしています。このままだと終わるけど、終わりたくない。そう一緒に思える仲間がいるから負けたくないっていうか。今の私たち世代がより良い未来を見据えていけば、少しは良い方向へ行くという希望は持っているんですけど。年齢的に、子育てや介護も自分たちの問題になっていくからこそ、今の山積みの問題を知ること、考えることからやっていきたいなと思います」

──尊敬している人や憧れの人は誰ですか?

「HIGH(er) magazineのメンバー含め周りにいる仲間たちには、自分にはない真似したい部分があります! あとは、大学の山川冬樹先生。映像の先生なのですが、作品を作ることに対しての思いや人間性を尊敬しています。すべての作業が丁寧で、学生のちょっとした疑問も自分のことのように考えて、上から目線ではなく対等な立場で考えてアドバイスしてくださって、それが本当にすごいなって。パフォーマンスもすごいんですよ。心臓の音を使ったり。…でも、これが載るの、超恥ずかしいですね(笑)」

──今後の目標や、挑戦したいことは何ですか?

「私、目標設定がいちいち近いんです。何が起こるかわからないので、遠くの目標を立てることが苦手で…。これはいつも言っているんですけど、自分のベースの生活を感じていたい。それがある上で、HIGH(er) magazineもあるので。衣食住の質を上げたい。具体的には、ご飯を3食しっかり食べるとか、食べているものや睡眠の質とか。最近、朝起きると汗だくで、蚊に刺された足を掻きむしった痕とかあるんですよ! そういうのがすごく嫌だ。これが目標なのかよくわからないですけど(笑)」

──今いちばん興味があること、今いちばん怖いと思うことは、それぞれ何ですか?

「私、興味が散漫で、何でも”面白いね”ってなるんです(笑)。今この瞬間に必死なんですよね。今はラジオドラマやりたいなぁ。…ちょっとした恐怖は常にあります。マガジンを作っているときは夢中になっているんですけど、急に、どんなにもがいても、どんなに物を作り出しても、自分がものすごく長い時間の流れの中の点にも見えない存在だと思って、その感情に支配されてしまうことがあるんです。そういうときは怖いですね。今この瞬間は一瞬だって、すごく思うんですよ。友達といても何をしていても」

──10年後の日本はどうなっていると思いますか?

「もっと精神的な自由さが広がって、個人が生きやすい世の中になっていてほしい。以前、友達が精神的な問題で街中で発作を起こしてしまったときに、初めて周りの人たちの冷たい視線を感じてハッとしたんです。道を外れてはいけない圧がすごくて、なんて生きづらいんだろうって。でも日本って、もともとは文化的にも許容範囲が広いはずですよね。だから、今の私たちが狭い価値観に縛られずにもっと視野を広げて、いろんな道があることや、いろんな人がいることを頭に置いておくことが大事だと思っています」

Profile

haru.(はる)ハイアーマガジン編集長。クリエイター。 美大生をする傍ら半年に一回インディペンデントマガジン『HIGH(er)magazine』を出版。今春にはFENDIとのコラボZINEを作成するなどコラボレーションも積極的に行っている。10月にはシブカル祭。にて公開編集部を開設予定。

Photo:Maki Taguchi Director:Sayumi Gunji Text:Rie Hayashi

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