YOON × VERBAL「ふたりが住み続ける創造のユートピア」|私たちのトウキョウ vol.5 | Numero TOKYO
Culture / Feature

YOON × VERBAL「ふたりが住み続ける創造のユートピア」|私たちのトウキョウ vol.5

『ヌメロ・トウキョウ(Numéro TOKYO)』200号(2026年10月号)では、ファッションからカルチャーまでさまざまな角度から絶えず姿を変え、蠢き続ける“トウキョウ”に迫った。インタビューでは、東京を拠点に活躍するアーティストやクリエイターたちに彼らにとっての東京の姿を聞いた。第五弾は「Ambush®」のクリエイティブ・ディレクター、YOONとCEO、VERBALが登場。大学時代からのパートナーである2人にとって、この街から生まれるクリエイティビティやコミュニティ、ここだからこそ描ける未来とは。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年10月号掲載)

Ambush® WORKSHOP(渋谷)にて。右:YOON、左:VERBAL
Ambush® WORKSHOP(渋谷)にて。右:YOON、左:VERBAL

──SNSやAIの普及で、東京はどう変わったと感じますか。

VERBAL(以下、V)「世界との距離が近くなり、以前なら東京に来なければ知ることができなかった物事も、今やスマートフォンを開けばすぐに見られます。個人の選択肢が増えたこと自体はすごくポジティブなことで、特に東京は情報量と行動力が掛け合わさったときにものすごく面白いことが起こる街です。一方で、街を歩いていて『こんな人がいるんだ』『こんな表現があるんだ』と驚く機会は減ったように感じます」

YOON(以下、Y)「20年以上渋谷を見てきましたが、変化したのは商業施設などの建物がほとんど。街のエネルギーはだいぶ落ち着いたように感じます。個人的には、東京の文化的なピークは2000~10年代だったと思う。その頃は、さまざまなものを自由に組み合わせて、自分たちなりの面白いものを創作する熱量にあふれていた。

東京が日本という島国の中で独自の『変異』を遂げていた時代だったと思います。いま、多くの海外の有名アーティストが東京からインスピレーションを受けた創作をしていますが、いずれも最近ではなく、2010年代以前の東京からの引用なんです。それを悲観しているのではなく、また新しい『変異』が生まれるきっかけが必ず訪れると予感しています」

──世界から見た東京の魅力は何でしょう。

Y「食、工芸、おもてなし、ファッション、職人技など、一つのことを磨き続ける文化があり、それを感じられる場所が点在していること。同じことを繰り返しながら、少しずつ改良していき、その積み重ねが文化になっている。例えば、一杯のラーメンにもその精神が表れています。もしかしたら成熟したヨーロッパの文化に通じる感覚に近いのかもしれません」

V「日本はIP(知的財産)の国で、その象徴が東京だと思っています。ものづくりや研究が得意で、2000年代は携帯電話もテレビも世界最先端でした。アニメもファッションも、日本独自のカルチャーがある。ただ、それを世界へ届けることはあまり得意じゃなくて、海外に広がる前に真似されてしまうことも多い。東京的なものをうまく外の世界に持ち出せたら、どんなことができるだろうと常々、考えています」

──お二人が東京を拠点にし続ける理由は何ですか。

V「東京で生まれ育ち、アメリカでも暮らしましたが、創造的な仕事をするなら東京が一番いい。海外の文化を受け入れるポジティブさがあり、東京ならではの感覚でリミックスして、新しいものを生み出せる土壌がある。忙しない街だけれど、それも東京らしさの一つ」

Y「ヨーロッパやアメリカ、中国など、いろいろな場所で仕事をしてきたけど、東京ほどクリエイティブに集中できる街はありません。清潔で安全、交通も整い、すべてが整然としていて、スムーズに機能している。世界で唯一、ユートピアといえる都市です。生活のストレスが少ないからこそ、没頭できる。韓国や中国みたいにスピード感がある環境も刺激的だけれど、速すぎて。日本には、考えるための『余白』があるんです」

──今後、東京はどう進化していくのでしょうか。

V「最近は海外から東京へ移り住むクリエイターも増えています。彼らは東京に新しいエネルギーを運んでくれる存在でもある。日本がもともと持っている文化と新しい文化が混ざり合うことで、また新たな創造が生まれるかもしれません」

Y「AIやSNSによって、何が本物なのかわかりにくい時代だからこそ、『人間らしさ』が大事。正直さや体験、感情、好奇心には、AIにはつくれない価値があります。失敗を恐れず経験を重ねることが、その人だけの個性になる。同じ情報を追い、同じ服を着ているだけでは、街に新しいものは生まれません。一人ひとりが、好きなことを追求し、夢中になることがとても大切なんです。そうすれば、東京は世界を驚かす面白い都市であり続けられると思います」

Direction:Ako Tanaka Photo:Keiichi Nitta Hair & Makeup:Sakie Miura Interview & Text:Aika Kawada Edit:Saki Shibata

Profile

ユン YOON アメリカ・シアトル育ち。東京在住。大学時代からのパートナーであるVERBALとともにブランド「Ambush®」を2008年にスタートし、クリエイティブ・ディレクターを務める。
バーバル VERBAL 東京都目黒区出身。ラッパー、音楽プロデューサー、デザイナー。m-floのメンバーとして1999年にデビュー、のちにTERIYAKIBOYZを結成。「Ambush®」のCEOを務める。
 

Magazine

NOVEMBER 2026 N°201

2026.9.28 発売

My Own Standards

マイスタンダードの見つけ方

オンライン書店で購入する