『ヌメロ・トウキョウ(Numéro TOKYO)』200号(2026年10月号)では、ファッションからカルチャーまでさまざまな角度から絶えず姿を変え、蠢き続ける“トウキョウ”に迫った。インタビューでは、東京を拠点に活躍するアーティストやクリエイターたちに彼らにとっての東京の姿を聞いた。この街から生まれるクリエイティビティやコミュニティ、ここだからこそ描ける未来とは。第四弾はアーティストコレクティブChim↑Pom from Smappa!Groupのメンバーであるエリイと、メディアアーティストで筑波大教授の落合陽一が登場。ともに東京出身のアーティストである二人に、それぞれの原風景や、変わりゆく景色について語ってもらった。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年10月号掲載)

失われていくもの、それぞれの原風景
──エリイさんはChim↑Pom from Smappa!Groupとして新宿・歌舞伎町で作品を発表、落合さんは六本木生まれ、と東京に縁が深いイメージです。
エリイ(以下、E)「身の回りの社会現象や考えを起点に制作するので、東京が作品に内包されています。生まれてくるときに両親を選べないように、私にとって東京は“選べなかったもの”。今も産まれたところの近くに住んでいて、ずっと変わらない景色の中で気が狂いそうです」
落合陽一(以下、O)「僕の場合、麻布台ヒルズの森JPタワーが建っている場所に実家があったので、生まれ育った風景自体がもう存在しない。一方で、作品制作にあたっては地域の歴史を深掘りすることが多いですね。2024年に京橋で開催した個展『昼夜(ひるよる)の相代(あいかわるわき)も神仏(かみほとけ):鮨ヌル∴鰻ドラゴン』では、江戸の食文化を象徴する鮨屋と鰻屋をモチーフに会場を構成しました」
E「東京の再開発とスクラップ&ビルドを肌で感じながら過ごしていたので、16年に歌舞伎町の解体予定ビルで展覧会『また明日も観てくれるかな?』を開催して、作品ごと取り壊されるのを眺めたり、その翌年にスタジオが入居していた高円寺のキタコレビルの中に24時間誰でも通れる舗装道路『Chim↑Pom通り』を作ったり。センター街のネズミや街中のカラスの生態もずっと観察しています」
O「街の半分は権力者によって作られ、もう半分は土地の人が作るものだと感じます。あと東京の景色に思うのは、人間は光っているものと大きいものが好きだということ。というのも小さい頃、家から東京タワーが見えるのがめちゃくちゃ嫌だった。日が暮れるとオレンジ色に光りだして、夜通し輝いてる。『あいつにずっと見られてる!』って思いながら生活してました」
E「月みたいにくっついてきて、いつもいる感じ。私にとっては友達みたいな感覚かな。シルエットが目に入るたび、亡くなったおばあちゃんの『エリちゃん、ほら東京タワーだよ』という言葉とか、愛されていた記憶がよみがえってくる。私も目に入ると自転車に子どもを乗せながら『ほら、東京タワーだよ』って言っちゃう」
O「擬人化できる巨大物でいうと、東京タワーが建つ前は富士山でしょうね。あとは近所の新興宗教の大神殿もインパクトがすごかった。人口が集中して多様な人がいるぶん、そういう巨大建築が生き残ることのできる場所になっているんでしょう」
E「今住んでいる家の近所にも、新興宗教の建物が密集してる。それに、もし私がどこか違う場所で生まれていたとしても、現在と同様に生まれた場所を離れなかった気がする。両親や妹、家族、友達と楽しく生きる以外はないみたいな。でも落合さんはそうじゃないですね」
O「まあそうですね。でも、同じ東京生まれといっても、再開発の有無でこんなに感覚が違うんだなと。僕の地元はもう地形からして大改造。家の前にあった落合坂という坂自体がなくなりましたからね。近所でうちだけがポツンと取り残されて……あの風景はいまだに忘れられない」
──そうした状況に、アートで抗いたいと考えますか?
O「たまにそう思うかもしれないけれど、都市は市民投票でも勝てないくらい巨大な仕組みで変化していく。そこにアンチテーゼを突き付けても、筋がいい戦い方じゃないと思います」
E「まさにジェントリフィケーションなんだけど、最近の商業施設やタワマンは壁とか超薄くてペラペラだし、装飾もどこも一緒で内装が安普請(やすぶしん)ですね。東京という生き物のポテンシャルに対して、開発した人のほうに思想が伴っていないというか。それは怖いなと思います」
O「確かに、どこも同じようなツルテカの高級ショッピングモールみたいなものを作ってよろしいのか?という感じはある。銀座の古い建物のほうがよほど重厚でしっかりしてますね」
E「最近、友達がスカイツリーのそびえ立っている墨田区曳舟にレストランをつくったんですけど近くに京島南公園(通称:マンモス公園)があるんですよ。子どもを遊ばせてるんですが、滑り台や遊具が巨大で、死が近そうに感じるけどみんな元気に遊んでる。再開発で潰されまくっている風景が身に染みている私は興奮した。街も観察しまくっていれば何が起きているか浮き彫りになるし、毎日歩きまくって見続けたい」
Direction:Ako Tanaka Photo:Keiichi Nitta Hair & Makeup:Risa Chino Interview & Text : Keita Fukasawa Edit:Saki Shibata
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