『ヌメロ・トウキョウ(Numéro TOKYO)』200号(2026年10月号)では、ファッションからカルチャーまでさまざまな角度から絶えず姿を変え、蠢き続ける“トウキョウ”に迫った。インタビューでは、東京を拠点に活躍するアーティストやクリエイターたちに彼らにとっての東京の姿を聞いた。この街から生まれるクリエイティビティやコミュニティ、ここだからこそ描ける未来とは。第二弾は「été(エテ)」オーナーシェフの庄司夏子、国内外のカルチャーシーンで存在感を放つグラフィックアーティスト・VERDY、ライターやインテリアデザイナーなどマルチに活躍する野村訓市が登場。プライベートでも交流のある彼らは、東京カルチャーシーンでどのようにコミュニティを築いてきたのだろうか。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年10月号掲載)

【プロフィール】
庄司夏子(しょうじ なつこ)
東京都世田谷区出身。フレンチレストランなどで修業後、24歳で代々木上原にレストラン「été」をオープン。アジアの最優秀女性シェフ賞を日本人初受賞。
VERDY(ヴェルディ)
大阪府大阪市出身。グラフィックアーティスト。「Girls Don’ t Cry」や「Wasted Youth」などのプロジェクト、パンダウサギのキャラクター「VICK」などで知られる。
野村訓市(のむら くんいち)
東京都杉並区出身。ライター、インテリアデザイナー、俳優、ラジオパーソナリティなど多方面で活躍する。設計デザイン事務所「TRIPSTER」主宰。
──3人が知り合ったきっかけを教えてください。
野村訓市(以下、N)「VERDYと出会ったのは10年くらい前。彼が『Girls Don’t Cry』を始めた頃で、コンセプトが面白いと思ったんです。それで紹介してもらったのが最初で、よく一緒に飲むようになりました」
VERDY(以下、V)「僕は大阪出身なので、東京は夢の街であると同時に、コミュニティへの入り方がわからなくて。東京で夜に一緒に遊ぶような先輩も少なかったので、訓市さんにいろいろな場所へ連れていってもらい、偶然居合わせた人を紹介してもらいながら、自分の居場所が見つかったという感覚です」
庄司夏子(以下、S)「私はVERDYくんが訓市さんを店に連れてきてくれたのがきっかけでした。そこから自然と一緒に飲みに行ったりするようになりました」
V「夏子さんのケーキに感動して、妻と夏子さんのお店に食事に行くようになったんです。そこに訓市さんを誘ったら、やっぱり意気投合して」
N「3人で約束して集まるというより、『今ここにいるよ』『じゃあ行きます』という感じで飲むことが多いですね」
──年齢も職業も異なる3人ですが、いい関係を築くうえで大切にしていることは?
S「私にとって“仲間”は、ただ楽しく遊ぶだけの存在ではなくて。みんながそれぞれの持ち場で成長しているから、自分もきちんと仕事をして、前に進んだ状態で会いたいと思える関係です。集まったときに何か報告したいから、私も自分の仕事を頑張らないといけない。それから、訓市さんとVERDYくんから教わったことで印象的だったのは『友達から金を取るな』という考え方です」
N「友達関係には、できるだけお金や上下関係を持ち込みたくなくて。仕事を振る側と受ける側になると対等ではいられなくなることもあるし、東京のクリエイティブ業界は、文化系に見えて意外と体育会系で、年齢による上下関係も強いから。僕にとって、VERDYも夏子も“年下の友達”。そういう付き合いのほうがいい」
V「僕はその影響をかなり受けています。自分のプロジェクトを始めた頃、海外では反応があっても、東京ではすぐに受け入れてもらえなかった。そんな中で訓市さんは、僕にいろんな人を紹介してくれました。自分も訓市さんから受け継いだ感覚を、下の世代につないでいきたいと思っています」
N「それは若い頃、バックパッカーとして世界を旅していたとき、自分が経験したことでもあって。アジア人だからと差別する人もいれば、平等に接してくれる人もいて。俺は後者になって、それが『東京らしさ』になったらいいと思うから」
V「最初は訓市さんと2人だったのに、知り合いに会い、別の友達が来て、気づいたら国籍も年齢も関係なく、20人くらいで飲んでるなんてことがよく起こります。そこで出会った人と、友達として遊んだ先に、自然と仕事につながっていくこともありますね」
S「東京で仕事をしていると、“人と人”を大切にしている感覚がありますね。ネームバリューより、対面で話してそこから何が生まれるか。だからこそ、本当に心の込もったものづくりができる気がします」
V「たしかに、相手の知名度より若い頃の自分がかっこいいと思えるような人と仕事をしたいというのはありますね」
S「料理人からすると、東京には小さな店が多いんです。店主がすべてに目を配れる範囲でつくった、“自分の城”のような店です。店主のアイデンティティが空間に表れていて、そこに集まる仲間から、また別のつながりが派生していくような」
N「東京には好きなことをそのまま商売にしている人が多いね。昔は古着を知りたければ、その店の店主に聞けば何でも教えてくれた。パンクスがTシャツを売り、エルヴィスマニアが専門店を開くような、個人の情熱から生まれた場所が、東京の面白さをつくってきました。海外の友人たちは、東京の小さな店や、年齢も職種もバラバラな人たちが集まる光景を面白がってくれます。それが東京らしさであってほしいと思うけれど、そう言いながら、俺はただ遊んでるだけなんですけどね」
Interview & Text : Miho Matsuda Edit:Mariko Kimbara, Saki Shibata
