活況を呈する日本のアートシーンで、いま注目のアーティストを紹介する連載。今月は、多彩な手仕事を駆使して生命の循環と共生の風景を描くテキスタイル作家の小林万里子。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年9月号掲載)
生命を愛する柔らかな手仕事

「私にとってテキスタイルは何かを隔てるものではなく、つなぐ存在。身体と世界、暮らしと祈りのあいだにある『間』のようなものです」。小林万里子は、織る、染める、編む、刺すといった多彩な手仕事で、人と自然、生と死を結び合わせる。
彼女の作品は、展示空間の記憶や旅先の風景、生き物との出会いといったインスピレーションの断片をコラージュするようにして形づくられる。自ら染め上げた布や糸に異素材を縫い合わせたり、時には一度作ったものを解体し、再びつなぎ合わせたり。天候や時間によって表情を変えるテキスタイルを素材に、平面と立体の境界を行き来する、予測不可能性を内包した作品は、多様な動植物が入り交じる生命力に満ちた世界として鑑賞者の前に現れる。

その表現の根底には、生き物の死を深く悲しんできた幼少期からの体験がある。「死の悲しみを癒やしてくれるのは、思想ではなく今を生きる別の命。死を癒やすのは生なんです」。生と死は対立せず、互いを支え合いながら世界を巡る。人間中心の社会で都合よく扱われる命への違和感を抱えながらも、彼女はそれを怒りではなく、祈りや美しさへと変換して表現する。「深く傷ついた私たちの魂を時間をかけて縫い合わせ、修復したい」。その柔らかで鮮やかな手仕事は生命を愛する感覚を分かち合ってくれる。
Photo:Mariko Kobayashi Select & Text : Asuka Kawanabe Edit:Miyu Kadota
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