ソムリエ店長がそっと教える、知っておきたい超有名スタンダードシャンパン7選 | Numero TOKYO
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ソムリエ店長がそっと教える、知っておきたい超有名スタンダードシャンパン7選

みなさんこんにちは!ワインブロガーのヒマワインです。みなさんはシャンパンがお好きですか? 私は大好き。全部のワインのなかでも一番好きと言っていいくらい好きです。

フランス・シャンパーニュ地方で造られる発泡性のワインのことをシャンパンと言いますが、その世界は奥深く、その全体像を把握するのはなかなか大変です。

そこで、大手と呼ばれる大規模生産者が造る「スタンダードシャンパン」に着目。シャンパンの定番中の定番とも言える銘柄やその個性を知ることで、シャンパンの全体像を把握できるのではないか?

さっそく、東京・恵比寿のワインマーケットパーティ店長でソムリエの沼田英之さんに、スタンダードシャンパンについて教えてもらいましょう!

スタンダードシャンパンとは?

ヒマワイン(以下、ヒマ)「今回は『知っておきたいスタンダードシャンパン』がテーマです。まずスタンダードシャンパンってなに? っていうところから教えてもらえますか?」

沼田店長(以下、店長)「ひとことでいえば、『大手メゾン』と言われる大規模生産者が造る定番商品のことですね。たとえばモエ・エ・シャンドンの名前は、ワインに詳しくない人でも知っているのではないでしょうか」

ヒマ「スーパーなんかにも売られていますもんね。私もワインにハマる前から“シャンパンの代名詞”として存在を把握していました」

店長「ですよね。“1秒に1本飲まれている”とも言われる『ブリュット・アンペリアル』はモエ・エ・シャンドンのスタンダードシャンパンです」

ヒマ「あとは、『ヴーヴ・クリコ』の『イエローラベル』とか」

店長「そうですね。ヴーヴ・クリコでいえばイエローラベルがスタンダード。ヴーヴ・クリコを例にとれば、生産量が少なく、熟成期間が長く、価格も高価な『ラ・グランダム』というシャンパンも製造していますが、それは“プレステージキュヴェ”と呼ばれます」

ヒマ「ほうほう。ビールでいうところの通常のビールとプレミアムビールみたいな」

店長「ちょっと違う気もしますが、大きく間違ってはいませんね(笑)。いずれにせよ、スタンダードシャンパンはメゾンの『顔』。それだけに、どのメーカーも大変力を入れて造っています。スタンダードがおいしくなければ、プレステージも飲まれませんから」

スタンダードを飲めばシャンパンの「基本」がわかる!?

ヒマ「スタンダードレンジを飲めば、生産者の力量がわかるということですね」

店長「そう言っていいでしょうね。シャンパンを飲み慣れてくると、小規模生産者の個性的な味わいに心惹かれるものなのですが、一周回って『やっぱり大手のスタンダードの安定感はすごい!』となるまでが“あるある”なんです」

ヒマ「今日は7種類のスタンダードシャンパーニュをご用意いただきました」

店長「大手メゾンといわれる生産者はだいたい30くらいあって、お店のスタッフには、『大手生産者が20言えれば一人前』と言っています。そのなかから、個性的な7生産者を選んでみました。この7生産者のスタンダードを飲めば、シャンパンのことがざっくりわかると思います」

ヒマ「価格はどれも9,000円前後と大きく変わりませんが、生産者によって味わいは異なるものですか?」

店長「違います! やっぱり、メゾンの哲学が色濃く出るんですよ。使っているぶどうの比率やそのバランス。樽を使うのか、使わないのか。どれくらいの期間熟成させるのか。リザーヴワインといって、過去に造ったワインをどの程度加えて味わいに深みを持たせるのかなど、全然違いますから」

ヒマ「この7生産者は、それらの要素が個性的ってことですね!」

モエ・エ・シャンドン ブリュット・アンペリアル シェア・ザ・ラブ

店長「まずは、冒頭でも挙げたモエ・エ・シャンドンから。『ブリュット・アンペリアル・シェア・ザ・ラブ』という限定品を挙げてみました」

ヒマ「赤いボックスに赤いラベル。キャップシールも真っ赤! これは目を引くデザインですね」

店長「モエ・エ・シャンドンはこういったプロモーションも上手ですよね」

ヒマ「中身は定番中の定番スタンダードシャンパンであるブリュット・アンペリアルなんですね。ブリュット・アンペリアルはどんなワインですか?」

店長「シャンパンにはピノ・ノワール、ムニエという黒ぶどうと、シャルドネという白ぶどうの3種類が主に使われますが、それらがバランスよくブレンドされています。また、仕上げに糖分を添加するのもシャンパンの大きな特徴ですが、ブリュット・アンペリアルの場合その添加量は1リットルあたり7g。これも非常にオーソドックスです。スタンダード中のスタンダード、多くの人が一生に一度は口にする機会があるのではないでしょうか。さすが、1秒に1本売れている定番中の定番です」

ヒマ「なんていうか、味わいも非常に華やかですよね。泡立ちも豊かだし、これぞまさに乾杯のためのお酒っていう感じがします」

店長「シャンパンはなんといってもお祝い事にぴったりですから。真っ赤なボトルは恋人同士にもいいですし、還暦の方への贈り物へも。あとは名前が『もえ』という女性へのプレゼントはモエ・エ・シャンドンで決まりです(笑)」

テタンジェ ブリュット・レゼルブ

ヒマ「続いてはテタンジェですね。非常に人気のある生産者のひとつです」

店長「ノーベル賞の晩餐会で使われていたり、サッカーのワールドカップのオフィシャルシャンパーニュになっていたりしていますしね。そのスタンダードがこ『ブリュット・レゼルブ』です。価格は10,230円」

ヒマ「印象的には、他のスタンダードシャンパーニュと比べて、テタンジェはスッキリした味わいというか、シャープな酸味が印象的です」

店長「シャンパーニュ地方では、白ぶどうのシャルドネは黒葡萄のピノ・ノワールやムニエよりやや高額で取引されるのだそうです。それだけにスタンダードレンジは黒ぶどう比率が高いのが一般的なのですが、このワインに関してはシャルドネの比率が高いんです」

ヒマ「それもあってか。香りにもどこかレモンのような柑橘系の印象がありますね。それだけにお寿司とか合わせたくなります」

店長「お寿司はいいですね! さっぱりとした前菜全般と好相性だと思います」

ペリエ・ジュエ グラン・ブリュットNV グラス付きセット

ヒマ「続いてはグラス2脚付きのセット商品ですね」

店長「はい。ワインはシャンパーニュの定番のひとつ、ペリエ・ジュエのグラン・ブリュットです」

ヒマ「ワイン単独だと税込10,550円。グラス2脚付きで11,880円はお得感がありますね」

店長「ペリエ・ジュエのプレステージシャンパンに『ベルエポック』というものがあるのですが、そのベルエポックにはエミール・ガレというガラス工芸家によってジャパニーズ・アネモネの花がデザインされているんです。このグラスはそのモチーフが使われています」

ヒマ「みんながみんなシャンパン用グラスを持っているわけじゃない……っていうか一般家庭にシャンパン用グラスはないですから、自分で飲むにも人に贈るにも良い選択肢ですよね」

店長「旅行に持って行くにもいいですよ。この箱ごと電車に乗せて、新幹線や特急列車のなかで乾杯したり。ホテルにチェックインしたあとに、夕食までゆっくりとシャンパンを飲んですごすのもいいですね」

ヒマ「なんですかそれ……最高じゃないですか。ペリエ・ジュエのグラン・ブリュットといえば、箱根の富士屋ホテルでアフタヌーンティーと一緒に飲んだ記憶があります。クラシックホテルの華やかな“アフヌン”にピッタリでした」

店長「このシャンパンにはどこか黄色い果実のイメージがあります。厚みやボリュームのある味わいは、食事とも合わせやすいですよね。やはりシャンパンは専用グラスで飲むと見た目にも味わい的にもいいですから、そういった意味でもおすすめできます」

ジョセフ・ペリエ キュヴェ・ロワイヤル ブリュット

ヒマ「続いてはジョセフ・ペリエのスタンダードシャンパンですね。価格は10,120円」

店長「キュヴェ・ロワイヤル。その名の通り、英国王室御用達のシャンパンです」

ヒマ「イギリスはシャンパンの一大消費地。イギリスで大いに愛されたことで発展したとも言われてますよね」

店長「そして、個人的にこのワインを推したい理由が裏ラベルにあるんです。2020年のヴィンテージをメインに用いて、シャルドネ35%、ピノ・ノワール35%、ムニエ30%の比率で、リザーヴワインを25%ブレンドしている……といった要素がすべて書いてあるんです」

ヒマ「これはいいですね。この記事を読んで、少しマニアックな興味を持った人にはたまらないと思います。ドサージュ(糖分添加)量、品種、収穫年、リザーヴワイン比率はすべてシャンパンの味わいに強く影響しますもんね。そしてもちろん味わいも良い」

店長「実は、数年前まで裏ラベルにはこのような情報が記載されてなかったんですよ。それで、何年か前に生産者が来日された際は、ドサージュは何gですか? リザーヴワインは何%くらい入ってるんですか? それらはどこで確認できますか? と質問攻めにしちゃったことがあるんです。それからほどなくして、裏ラベルに情報が記載されるようになったんです」

ヒマ「まさか、そのときの会話がもとで……?」

店長「その真偽はさだかではありませんが(笑)、ヴィンテージ年がわかると、そのシャンパンがどれくらい熟成されているかもわかりますし、いいことだらけです」

ヒマ「スタンダードシャンパーニュって、買ったあと数年セラーで寝かせると“化ける”といっていいくらい、おいしくなることがありますもんね」

ランソン・ル・ブラック クリエイション258

店長「続いてはランソンのスタンダード『ル・ブラック クリエイション 258』です。価格は9,900円」

ヒマ「ランソンって、ラベルも黒いしどこか硬派なイメージがあります。このシャンパンの特徴は?」

店長「ズバリ、マルチヴィンテージである点と、パーペチュアル・リザーヴがブレンドさされていることです」

ヒマ「急に解説がマニアックになりましたね……! 一体どういうことでしょうか」

店長「ワイン名に『クリエイション258』とありますが、これは1760年の創業依頼、258回目の収穫、すなわち2018年をベースワインとしているということになります」

ヒマ「スタンダードシャンパンは、ほぼすべてがノンヴィンテージ(複数収穫年のブレンド)ですよね。それと何が違うんでしょうか?」

店長「厳密な違いがあるわけではないんですが、よりベースとなる年に軸足が置かれている印象ですね。複数年のワインをブレンドすることで毎年品質を一定に保ってきたのがシャンパンの歴史ですが、ここにきて“その年ならではの魅力”が見直されてきているんです」

ヒマ「良い年もあれば難しい年もある。それがワインの魅力の一端ですもんね」

店長「このようなマルチヴィンテージの考え方を取り入れている生産者は、ジャクソン、ルイ・ロデレールなどほかにもいます。高級シャンパンとして知られる『クリュッグ』も、エディションナンバーがラベルに記載されていますよ」

ヒマ「もうひとつ、パーペチュアルリザーヴというのは……?」

店長「前年までに造ったワインを新しいワインに継ぎ足し、また翌年のワインにもそれを継ぎ足し……というやり方で造られるリザーヴ・ワインのことで、これを加えることでワインに深みや奥行きが出るんです。ランソンもそれを採用しているわけですね」

ヒマ「めっちゃこだわって造ってるわけですね。たしかに味わいも厚みがあって素晴らしいです」

店長「シャンパンというと乾杯用と思われがちですが、これだけボリュームがあれば、クリームを使った魚料理と合わせてもバッチリ。肉料理も含めてコースを“1本で通す”ことも十分可能だと思います」

アルフレッド・グラシアン ブリュット NV

ヒマ「続いてはアルフレッド・グラシアンのブリュット NV(9,790円)ですか。もちろん有名生産者ではありますが、今回ピックアップした超有名生産者に比べると、知名度は少し劣るかな? なぜこの生産者を選んだのでしょう?」

店長「ふふふ、飲めばわかります。ぜひ一口ご賞味ください」

ヒマ「なぬっ、これはおいしい! いや、どれもおいしいのですが、明らかに味の方向性が他と異なりますね。一体どういうことですか?」

店長「アルフレッド・グラシアンはこのスタンダードレンジから“樽発酵・樽熟成”を行う珍しい生産者なんですよ。多くのシャンパンメゾンはステンレスタンクで発酵・熟成を行うため、味わいが大きく違ってくるんです」

ヒマ「樽発酵・樽熟成って、どちらかというとこだわりの小規模生産者が採用しがちな手法ですよね。ステンレスタンクと違って温度管理も難しいし、手間がかかる印象があります」

店長「そのうえ、ひとつ前のランソン同様にパーペチュアルリザーヴを40%も使用。瓶熟成期間は48ヶ月という長期です。とにかくこだわりが強いんですね」

ヒマ「いやー、それだけにしっかりと熟成感が出ています。焼いた栗のようなほっこりとした感じ、クレーム・ブリュレのような香ばしい甘やかさが感じられます」

店長「大手のスタンダードシャンパンのなかにも、これだけ個性的なものがある。それをご理解いただけると思って、入れてみました。おいしいですよね」

ヒマ「“ちょい熟シャンパーニュ”は大好物なので、非常においしいです!」

シャルル・エドシック ブリュット・レゼルヴ

ヒマ「いよいよ最後の1本はシャルル・エドシックのスタンダード『ブリュット・レゼルヴ』ですね。これは他より値段が少しお高めで、税込11,550円」

店長「値段が少し高いこともあって、このワインは熟成期間が非常に長いんです。裏ラベルに情報が記載されていますが、2018年にセラーに入ったと書いてあるので、2017年ヴィンテージがベースになっていることがわかります」

ヒマ「えっ、てことは8年前に収穫されたぶどうがメインで使われてるってことですね」

店長「しかもリザーヴワイン比率は50%。他のメゾンがだいたい20〜30%というところ、リザーヴワイン比率も非常に高いです」

ヒマ「要するにめちゃくちゃ贅沢な造りをしてるってことですね。グラスに注いでみると、黄金を溶かしたようなリッチな色合いで、泡立ちも非常に豊かな。焼きたてのブリオッシュのような香りがあって、そこはかとなくトロピカルフルーツのような印象もある。いやあ、めちゃくちゃおいしいですねこれは……」

店長「非常にミルキーで、かつモカやコーヒーのような香ばしさもありますね。シャルル・エドシックはこのスタンダードをどれだけおいしくできるかに心血を注いでいる生産者だけに、味わいも格別です」

ヒマ「実は私も大好きな生産者なのですが、改めてその素晴らしさに気付かされました」

スタンダードシャンパンを楽しもう!

ヒマ「7本のスタンダードシャンパンをテイスティングさせてもらいましたが、どれも素晴らしい味わいでした。そして、個性の違いが際立っていましたね」

店長「私も改めて飲んで勉強になりました。『シャンパン』っていうくくりでひとつにまとめられがちですが、実は生産者によって非常に大きな味の違いがあることがわかってもらえたらうれしいですね」

ヒマ「樽が効いていて香ばしいアルフレッド・グラシアン、長期熟成を経て極めてリッチな味わいのシャルル・エドシックのように酒質が“強い”ものから、ペリエ・ジュエやテタンジェなどエレガントでパーティの乾杯にピッタリのものまで、本当に個性的でした」

店長「今回は7生産者に絞って紹介したので、ぜひまた機会を見て、別の生産者も紹介したいですね」

ヒマ「ボランジェにルイナール、ヴーヴ・クリコにマムにポメリーにニコラ・フィアット……挙げれば本当にキリがないくらい、大手生産者っていますもんね。ぜひやりましょう!」

店長「読者のみなさまには、まずは今回挙げた7生産者のスタンダードシャンパンを試していただき、味わいの個性の違いを楽しんでもらえたらうれしいですね!」

ワインマーケット パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜20:00
TEL/03-5424-2580
URL/winemart.jp



Photos & Text: Hima_Wine

Profile

沼田英之 Hideyuki Numata ソムリエ、1978年生まれ。ホテルやレストラン勤務後、イタリア・トスカーナに留学。帰国後、レストランにソムリエとして勤務し、その後フランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。現在は姉妹店である都内屈指の大型店、ワインマーケット パーティの店長を務める。
ヒマワイン Hima_wine ワイン大好きワインブロガー。ブログ「ヒマだしワインのむ。」運営
https://himawine.hatenablog.com/
YouTube「Nagiさんと、ワインについてかんがえる。Channel」共同運営
https://www.youtube.com/@nagi-himawine
Twitter:@hima_wine
 

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