川村元気監督&二宮和也インタビュー「『8番出口』の新しい作られ方」 | Numero TOKYO
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川村元気監督&二宮和也インタビュー「『8番出口』の新しい作られ方」

ストーリーがないゲームの実写化に挑んだ話題の映画が、世界公開を迎えた。その独創性からカンヌ国際映画祭に選出された『8番出口』が切り開いたものとは? 監督・脚本の川村元気さんと主演の二宮和也さんの言葉、同名の小説も交えて、紐解く。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年10月号掲載)

 

川村元気監督インタビュー:キャリアと得意技をすべて注ぎ込み映画の作り方を作る歩みがここに結実

 
 
──映画『8番出口』は、長編映画の監督作としては自身の原作小説を題材にした2022年の『百花』に続いて2作目となります。同タイトルで大ヒットした無限ループゲームの実写化、今年の第78回カンヌ国際映画祭(以下カンヌ)のオフィシャルセレクション「ミッドナイトスクリーニング部門」に選出されたことで、世界でも公開が決定している話題作。川村さんにとっては短編コンペティション部門に選出された18年の『どちらを』(佐藤雅彦や平瀬謙太朗らと共同監督)、23年のコンペティション部門で脚本賞とクィア・パルム賞をダブル受賞した『怪物』(企画・プロデュース)に続き3度目のカンヌでしたが、そこはどんな意味を持つ場所ですか。

「映画の可能性を破壊して再生してくれるような作品を求めているのがカンヌであって、その姿勢がこの映画祭を異次元に成長させてきたと、過去2回参加するなかで感じていました。去年のカンヌで話題をさらった『サブスタンス』も、23年にパルムドール(最高賞)を受賞した『アノーラ』も、監督たちの新しい価値観やアイデンティティがぶつけられている。とことん自分のキャリアと得意技を注ぎ込んで勝負しないと駄目だなと感じました。だからといって『8番出口』はカンヌを狙って作った作品でもなく、多くの観客に見てもらうためにボールを遠くに投げようとしたら、カンヌが手招きしてくれた感覚に近い。いずれにしてもカンヌはあくまで映画を知ってもらうきっかけ。アニメーションではなく日本の実写映画を世界のフィルムメイカー、観客や配給に気づいてもらう場所は、今はカンヌのような大きな映画祭しかないのが現実ではあります」

©Kazuko Wakayama
©Kazuko Wakayama

©Kazuko Wakayama
©Kazuko Wakayama
5月のカンヌ国際映画祭でのワールドプレミアには、二宮和也さん、同じく出演俳優の小松菜奈さん、共同脚本の平瀬謙太朗さんと参加。「観客からは、ドープとポップ、両レイヤーの感想が寄せられ、思い描いた理想でもあったのでうれしかった」と振り返る。
 
──映画の基となったゲーム「8番出口」との出合いは?

「17年にSTORYという企画制作会社を立ち上げました。映画のトキワ荘のような場にできればと、あらゆる若い才能が育まれていると思っていますが、その中にインディゲーム業界に明るい坂田悠人くんというプロデューサーがいて、KOTAKE CREATEさんが制作した「8番出口」をいち早く見つけてきた。彼から話を聞いたとき、面白い映画になるかもしれないという勘が働いたものの、どうやって作るかは複雑すぎて人に説明できないから自分で撮るしかないと思って『監督として立候補させてほしい』と伝えたんです。長く映画を企画する仕事をやってきましたが、誰かの企画に乗っかって映画を作り始めることができたのは、STORYを立ち上げた成果かなと。そしてもう一人、『8番出口』で一緒に脚本を書いた平瀬謙太朗くんは所属こそ違いますが、『どちらを』で共にカンヌに行き、『百花』の脚本も共同で執筆した仲間で、今作は二人の後輩と作りました。自分は映画業界の中でずっと“年下”だったけれど、才能のある後輩たちとやれて気づきも多かったし、彼らの成長によって助けてもらえたということが、一つの作られ方として大きかったですね」

──一方で、川村さんとしての「新しい映画の作られ方」はどこに?

「『どちらを』を共同で監督させていただいた尊敬する佐藤雅彦さんの言葉でもありますが、僕がずっと取り組んできたのは『映画の作り方を作る』ということ。今作でいえば、普通は脚本があって、キャラクターが生まれて、美術が決まっていくところを、ゲームの空間やルールに対して物語を作ろうと決めました。具体的には、地下鉄の8番出口からの脱出をゴールに、異変があったら引き返し、異変がなかったら前に進むというゲームの決まりは踏襲しつつ、地下通路をダンテの『神曲』における煉獄に見立てた。そこは自分の罪を詳らかにされて、天国か地獄か、行く場所を決める空間であって、ゆえに異変についても人間が心に抱えている罪の意識が可視化されたものにしてみようと。21年に『神曲』という小説を出版していて、そのためにダンテを集中的に研究したことが生きました」

──異変に込めた罪の意識に関しては、どんな経験や経緯を物語に?

「僕は無関心こそが現代に蔓延する罪だと思っているんです。人を殺したり、何かを盗んだりする罪を犯す人は稀ですが、電車内で怒鳴っている人を見てみないふりをする、スマホのなかで見た戦争や誹謗中傷をスワイプして見なかったことにする。そこには例外なく累積ポイントのようにたまっている罪悪感があるんじゃないかと思いました」

「神は細部に宿る」──大事なのはマニファクチュールの突破力でしかない

 
 
──ナラティブに対してヴィジュアルやルールを作るのではなく、ヴィジュアルやルールに対してナラティブを作る新しさがポイントだったと。

「ゲームの「8番出口」に最初に触れたとき、白い地下通路の空間を能の舞台のように感じたんです。能にはあの世とこの世の境目を描いている演目が多いですが、ならば映画では、ゲームと現実の世界が曖昧になっている現代に見立てられないかと。一方で『理系。』という対話集を出版したときにお話をさせていただいた、スーパーマリオの生みの親である宮本茂さんが『プレーしている人も楽しいけど、後ろで見ている人も楽しいゲームを作りたかった』とおっしゃっていた。今作もまた主人公の二宮和也くんがプレーヤーで、彼がプレーしているゲームを見ている感覚で鑑賞することもできる。誰かがスーパーマリオをやっている後方で、まさに自分も楽しんでいた子どもの頃の感覚を映画にしたらどうなるのか。そうしてゲームというものにとことん向き合ってみることで、映画表現の可能性の発明にたどり着けるんじゃないかという思いもありました。二宮くんは実際にゲームラバーでもあり、それも彼に主人公を演じてもらいたいと思った理由の一つですが、物語をある程度書いたところで本人に見てもらったら『もうちょっと主人公にハンディがあってもいいのでは?』と、まさにゲーム的な助言があったりもして。撮影現場でも彼からフィジカルなヒントをいっぱいもらって、そこから物語としての大発明が生まれたりしました」

©2025 映画「8番出口」製作委員会
©2025 映画「8番出口」製作委員会

──音楽に関して発明はありましたか? 川村さんは手がける映画の主題歌や劇伴、音楽アーティストのプロデュースやそのMVでも次の可能性を切り開いてきました。今作ではYasutaka Nakataさんと網守将平さんを起用されています。

「『百花』の劇伴をやってもらった網守さんはクラシックの文脈を持った才能なので、各キャラクターの人間性に関わる音をピアノなどの生楽器で、16年公開の映画『何者』をはじめ幾つかの企画で協業をしてきたNakataさんには空間自体が発している音をゲーム音楽的に、それぞれ作ってもらいました。二人の曲がリレーしていくことで観客の感情を動かす狙いですが、そういう複雑な音楽の組み立ても、自分が積み重ねてきたキャリアがあってこそできた荒技かと。またラヴェルの『ボレロ』も使用していますが、世界で最も有名なループミュージックで、そのことで国内外の人に『今から我々はループを見るんだ』と察してもらえる。言語は自ずと映画に国境を作ってしまう。なるべく言語を排することで没入感を創出するために、今作では音楽に多くを救ってもらっています」

──映画に貫かれているイエローという色の選択と、映画とグラフィックデザインとの融合については?

「色はカラーチャートを作って絵を決めていくというアニメーション映画の仕事から学んだ作り方を引用しています。今作は地下通路が舞台なので、必然的に東京メトロが看板に使っているイエローとタイルのグリッドがデザインのベースとなっています。グラフィックデザインを映画に取り入れている映画監督だとスタンリー・キューブリックやウェス・アンダーソンが思い浮かびますが、日本映画でやろうとすると失敗することも多いので、これ見よがしにならないようにどう落とし込むかがポイントでした」

©Yoshiharu Ota
©Yoshiharu Ota
『8番出口』撮影現場での川村さん。脚本を仕上げる段階で自身の映画の先生である3人、山田洋次監督からは「独りで地下鉄の通路にいるとしたら、独り言を言わずにはいられないのでは」、是枝裕和監督からは「様々な世代の人間がそこで平等に罪を問われるべきなんじゃないか」、李相日監督からは「主人公の罪、嫌なところを掘ったらどうか」と助言を得たという。いわく「後輩と先輩全てに助けてもらって作った映画が今作」。
 
──『8番出口』が世界から評価されたことは、今後の歩みにどんな影響を与え始めていますか。

「アメリカのエージェントやヨーロッパの映画会社から、次回作について積極的に声をかけてもらえる状況になりました。とはいえ海外に行くことより、面白い映画を作り続けられるかが大事です。そう考えると、日本的な物語や音楽や美術感覚を投入して日本人の感性で作る映画を、どう次のステップで海外の人たちと組んでやれるのかに尽きます」

──それは、映画監督として?

「『8番出口』でやっと監督としてのスタイルが作れたのかなと思っています。そしてそれがいちばん、海外から引きがあった。ただ、仮に日米合作だったとしても『究極、東京だけで撮ることはできないだろうか』という考えで、やっぱり作り方を作りたい。映画『8番出口』は地下通路だけで撮り切るという制約が、繰り返しリテイクができるという自由につながった。撮影途中で思いついた展開を脚本に追加できたのも、撮影場所が一つだったから叶ったことでした」

──つまり、世界との闘い方は大きくは変わらないと?

「日本の人口が減って、韓国のようにグローバルで勝負せざるを得ない状況の中で、『8番出口』以前は、企画力で世界に認めてもらう見立てでいました。でも、結局のところ『神は細部に宿る』というか、大事なのはマニファクチュールの突破力でしかない。今作にしてもこつこつと脚本を書き、低予算で自分の仲間とこだわり抜いて撮って編集したことが、一つの結果をもたらしてくれた。年を重ねてもっと人に任せることができるのかなと思ったりもしていましたけど、やはりどこまでも自分の手触りで作り続けるしかないと、覚悟しています」

二宮和也インタビュー:芝居は新しいことをせずシンプルにその分を全体の構成の組み立てに注力

Photo:Ko Yuhsuan Styling:Harumi Fukuda Hair & Makeup:Yousuke Asazu
Photo:Ko Yuhsuan Styling:Harumi Fukuda Hair & Makeup:Yousuke Asazu

──監督である川村元気さんが、脚本制作の段階での二宮さんの助言に始まり、「彼からは撮影現場でもフィジカルなヒントをいっぱいもらった」と語られていました。映画『8番出口』。のクレジットでは、主演以外に“脚本協力”としても二宮さんの名前があり、その作られ方の深みを感じさせます。

「この作品に関しては、いただいた脚本のままお芝居をするとなると、おそらく現場で僕が割と口を出すだろうなと予測していました。なぜなら、ほぼ一人でやるお芝居なので、自分が介在していないものに対してだと、歪みが出るんじゃないかと。それを元気さんも察して初めの段階で『(脚本も)やらない?』と言ってもらえたのは助かりました。脚本協力という高貴な位置に置いてはもらいましたけど、経緯としては『言いたいことを言えるように最初から入ってほしい』という感じでした」

──そうした経験を通して、今後の作品への参画の仕方についても意識は変わりましたか。

「普段は『俳優が言っていることも実は確度が高いんじゃないか』というときに具現化できない現場もあるので、今後も広い意味で作品に関わることで、自分はもちろん、みんながいい環境で映画を作れるんじゃないかということは、すごく感じています。今回はもともとストーリーがないゲームの実写化ということもあって、当初から元気さんが『全員の意見をください』というスタンスだったので、いろいろな提案が出て、さまざまな答えがあって、それをまとめていくなかの自然な結果論としての映画が『8番出口』だったのかなと。フレキシブルな現場でみんながみんなを尊重し合いながら作っていける、それぞれが思うパターンを何回もリテイクができる環境は、地下通路という一つの舞台だけだったことも大きかったですね」

 

映画『8番出口』に関しては“二宮和也を打ち出したもの”にしたいと思わなかった

 
 
──二宮さんとしての「新しい作られ方」はありましたか。

「出る側も作る側も、立ち位置をわかってものづくりに入れたのが、いちばんだったと思います。前者でいえば、全国公開が前提のスケールで、原作のゲームも世界中にユーザーがいるタイトルの実写化となると、考え方が演劇的になって“二宮和也を打ち出したもの”になっていきがちですが、僕は『8番出口』ではそうしたいと全く思わなかった。だから胸を張って言えるのは、芝居では新しいことはしていない。一段上を目指すとか一皮むけるというより、そこはものすごくシンプルにして、全体の構成を組み立てていくことに注力しました。もともとストーリーがない分、原作の設定だけを借りて中身がめちゃくちゃになるのは避けたかったし、なるべく遊んでいる方々が付いてくることができる延長線上にありながら、異変探しをループするという単調のなかに、芝居の波をどこに持ってくるか。そういう感情論の整理も今回はある意味ドライにできて、自分でもずっと不思議な現場だなと思っていたんですけど、それも脚本から参加していたからなのか…。いずれにしても『俺を見てくれ』ではないギリギリのところを、カメラを感じながらも展開していくということが印象的でした」

──“二宮和也を打ち出したものにしない”という意味では、川村さんが二宮さんを起用した理由を「無個性から始まる役名のない男を演じられる役者を他に思いつかなかった」とも言葉にされていました。

「そもそも役名とかは、普段からあまり僕は必要ないと思っているところがあります。以前に見習いの陶芸家の役をやることになって練習していたときに、先生から『これが自分のオンリーワンでベストワンだと言える作品は1日でもできるけれど、同じ形を10枚作れるようになってからが一人前で、それができるようにならないともったいないよ』ということを言われたことがあって、なるほどと思いました。『割れてもいいから、数枚買っとこうか』という皿は面白くないからみんな作りたがらないけれど、僕はそっちに感銘を受けたんですよね。『8番出口』では、作品的にも主役がいない映画を目指したかったので、お客さんがちゃんと息を吸えるタイミングを作っていくのが大事かなと思いました」

──そして、初のカンヌはいかがでしたか。

「なかには評価されない作品もありましたし、それを肌で感じることができたのは、すごくいい経験になりました。『8番出口』は上映後のスタンディングオベーションもあって、『自分たちが目指していた方向はまあまあ間違いじゃなかった』と思えて安心しましたけど、どの作品でも全力でやった結果を自分としてちゃんと受け止めるのが大事だと思っています。その上で、想像以上の結果が出たときは『たまたまだ』と思うように、想像以下でも額面通りに受け止めて『あそこをブラッシュアップできていたら、もっとフィットしたんじゃないか』と考えることができる容量を常に持っていたい。大前提として素人だった僕を諦めずに叱り続けてくれた大人への感謝があって、すべては皆さんのおかげでしかないと思っています」

 

本ならではの“遊び”をちりばめた小説が伴走することでコンプリート

 

映画『8番出口』にはもう一つの作られ方が存在する。劇場公開に先立って発売された、川村元気さんの書き下ろしによるオリジナル小説『8番出口』と、そのプロセスだ。12年に「世界から猫が消えたなら」で小説家としてもデビューした川村さんは、フィルムメイカーの視点から次のテーマやムードをつかまえ、脚本作りで研磨した台詞の妙、映画でなく逆に小説にしかできないことに向き合った意欲作を継続的に発表。文芸の世界でも国内外にコアなファンを獲得してきた。

「映画『8番出口』の撮影を終えたタイミングで、長年の友人でもある水鈴社の篠原一朗社長から、突然『小説も書いてほしい』と言われたんです。そこから映画の編集作業と同時並行で小説を書くことになったわけですが、両方のピースが重なることで一つの形が見えてくる“入れ子構造”になっているといいなと思いました。今回の映画は登場人物がほとんどしゃべらず、ある意味では無言劇に近い。すべては彼らの表情や動きを通して読み解いてもらうしかないんですが、小説『8番出口』では、映画では描いていないモノローグや、空間や重要な異変が意味するもの、文芸というメディアの特性である心の内を掘り下げました。他にも編集でカットしてしまった異変や、二宮くんのアドリブから生まれたシーンや台詞やアクションなどを書いています」(川村さん)

自身による小説『億男』『四月になれば彼女は』『百花』も映画化してきた川村さんにとって、先に映画の製作があって、後で小説が伴走していく作られ方は、『8番出口』が初のこと。そこには、今の時代に紙の本を読むことならではの“遊び”も意図してちりばめられているという。

「黒だけでなく一部イエローのインクを使わせていただいたりもして、小説でないと楽しめない感情の動きを楽しんでもらえるように、さらにそうした小説の異変をたどっていくとそこにも謎が現れてくるという演出をしています。映画と小説には違ったエンターテインメントの価値があって、その究極的な追求をやり続けてきました。映画であればYouTubeやTikTok、Netflixが離脱をさせないことが命題のエンターテインメントとなっているのに対して、『8番出口』では映画館で見るからこその不条理な時間や気づきを観客に問いかけてみたり…。そうして映画と小説、それぞれのダイナミズムに自分なりの答えを出せた作品が『8番出口』です」(川村さん)

 

映画『8番出口』

©2025 映画「8番出口」製作委員会
©2025 映画「8番出口」製作委員会

2025年8月29日(金)公開
監督・脚本/川村元気
出演/二宮和也、河内大和、小松菜奈ほか
公式サイト/https://exit8-movie.toho.co.jp
 
©2025 映画「8番出口」製作委員会
©2025 映画「8番出口」製作委員会

二宮和也以外は演じられなかった無限ループゲームを実写映画化
地下鉄の改札を出て通路を歩いていく。天井には「出口8」の看板があるが、いつまでも出口にたどり着けない。何度もすれ違う男に違和感を感じ、やがて自分が同じ通路を繰り返し歩いていることに気づく。見つけたのは壁に提示された4つの「ご案内」。異変があれば引き返し、なければそのまま進むことで、正しければ「8番出口」が近づき、見落とせば「0番出口」に逆戻りしてしまう、累計販売本数190本超の世界的大ヒットゲーム「8番出口」(制作:KOTAKE CREATE)の実写映画化。二宮さん起用の理由を監督の川村さんは「ずっと仕事をしたかったが、なかなかタイミングが合わなかった。個性を演じられる役者は多いが、今作のように役名のない男を、無個性からのグラデーションで表現できるのは、彼以外にちょっと思いつかなかった」と話す。
 

小説『8番出口』


 
著者/川村元気
価格/¥977
発行/水鈴社
公式サイト/https://www.suirinsha.co.jp

ハンディな文庫サイズ、キャッチーなイエロー、くり抜かれた「8」の中の二宮さんが目印の小説『8番出口』。そのカバーを外すとまた別のカバー(上)が現れ、本体888円(税込977円)をはじめ「8」へのこだわり、黄色のインクに潜ませた異変の謎解きもお楽しみ! 出版社である水鈴社は、過去に作家の申し出を受けてその印税を苦境下の書店の応援に回す仕組みを整えるなど、こちらも新しい手法で、今の時代の本のあり方を生み出し続けている。

Edit & Text:Yuka Okada(81 Inc.)

Profile

川村元気 Genki Kawamura 1979年神奈川県・横浜市生まれ。『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『君の名は。』『怪物』などの映画を企画製作。2012年に小説『世界から猫が消えたなら』を発表し、35カ国で翻訳出版され、世界累計270万部のベストセラーに。他著に小説『億男』『四月になれば彼女は』『神曲』『私の馬』、対話集『仕事。』『理系。』など。22年、自身の小説を原作に監督・脚本を務めた映画『百花』が、第70回サン・セバスチャン国際映画祭で、日本人初となる最優秀監督賞を受賞。
https://genkikawamura.com
二宮和也 Kazunari Ninomiya 1983年東京都生まれ。99年に嵐のメンバーとして「A・RA・SHI」でCDデビュー。2003年の『青の炎』で映画単独初主演、06年にはクリント・イーストウッド監督作『硫黄島からの手紙』でハリウッドデビュー。15年に『母と暮らせば』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。近年の出演作に『浅田家!』『ラーゲリより愛を込めて』『アナログ』『【推しの子】-The Final Act-』など。近著に『独断と偏見』(集英社)。
https://office-nino.co.jp
 

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