東京初の大規模個展「松山智一展 FIRST LAST」開催@麻布台ヒルズ ギャラリー | Numero TOKYO
Art / Feature

東京初の大規模個展「松山智一展 FIRST LAST」開催@麻布台ヒルズ ギャラリー

ニューヨークを拠点に、パリのルイ・ヴィトン財団、ヴェネチアや上海など目覚ましい活躍を見せる松山智一が、東京で初の大規模個展を開催する。世界から東京へ。その作品に表れた日本の姿、私たちへの問いかけとは。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年4月号掲載)

『20 Dollar Cold Cold Heart』 2019年
『20 Dollar Cold Cold Heart』 2019年

『Dancer』2022年
『Dancer』2022年

ある時ふと考えた。私たちは混ぜこぜの文化を生きている。漢字かな英字交じりの文字を打ち、クリスマスと正月を続けて祝い、和風パスタを箸でつつく。この点、日本人は無自覚の極み。海外から問われて初めて、これが日本なのだと思い至る。ことに追求鋭いのが欧米を頂点とするアートの世界。作品の文化背景、自分らしさ(アイデンティティ)はどこにあるのか。口ごもるようでは相手にされない。自分が何者か知らずして、何かを伝えられるはずもないからだ。

松山智一(1976年生まれ)は25歳で単身渡米。ニューヨークを拠点に独学で自身の表現を打ち立ててきた。極彩色の絵画や複雑な彫刻作品は、西洋と東洋、古代と現代、具象と抽象など両極的な要素を再構築したもの。例えばアンリ・ルソーに着想を得た背景を、狩野派など日本画の様式で描いた幅6メートルの大作。

『We Met Thru Match.com』2016年
『We Met Thru Match.com』2016年

『Passage Immortalitas』2024年
『Passage Immortalitas』2024年

『Bring You Home Stratus』2024年
『Bring You Home Stratus』2024年

多様なモチーフの空間にキリスト教の受胎告知図の人物を配した作品と、古今東西の建築や絵画イメージで構成された変形キャンバスの絵画は、二極化や分断、フェイクニュースなどに揺れるアメリカ社会の諸問題を起点とする最新シリーズ「First Last」(「後の者が先になり、先の者が後になる」の意)からの出展作。

これらは競争熾烈なアートワールドの牙城にあって、日本古来の混交文化(シンクレティズム)を見つめ直し、新たな調和の可能性を問う試みではないか。しかしこれも一つの見方。一人一人が松山作品と向き合うなかで、必ずや見えてくるものがあるだろう。

「松山智一展 FIRST LAST supported by UNIMAT GROUP」
現代アートの中心地ニューヨークで四半世紀にわたって活動。国内では弘前れんが倉庫美術館(2023年、青森)に続き、これが東京で初の大規模個展。日本初公開の大規模作品15点を含む約40点を展示する。

会期/2025年3月8日(土)〜2025年5月11日(日)
会場/麻布台ヒルズ ギャラリー
住所/東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階
TEL/03-6402-5460
URL/www.tomokazu-matsuyama-firstlast.jp
※最新情報はサイトを参照のこと。

Edit & Text : Keita Fukasawa

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