「沼津倶楽部」で「uka」監修の新トリートメント&齋藤宏文氏監修の料理で心身を癒す旅 | Numero TOKYO
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「沼津倶楽部」で「uka」監修の新トリートメント&齋藤宏文氏監修の料理で心身を癒す旅

夏休みやシルバーウィークも終わり、季節の変わり目や日々の仕事に忙殺され、心身があまりすぐれない今日この頃。「休日を使ってリフレッシュできるおこもり旅がしたい」。そんなときに思い出したのが、今年ミシュランガイドのホテルセレクション「ミシュランキー」で、1ミシュランキーに輝いた「沼津倶楽部」だ。しかも調べてみると1日1組限定で「uka」監修の限定のトリートメントメニュー、レストラン「茶亭」での夕食・朝食がついた特別なプランが始まっていた。東京駅から東海道新幹線に乗り込み、三島駅で在来線に乗り換え沼津へ。都心から約1時間半でたどり着く「沼津倶楽部」で一泊二日のリトリート旅を満喫してみた。

約110年の歴史を活かし、2023年にリニューアルオープンした「沼津倶楽部」

「沼津倶楽部」は千本松原の一画の庭園に佇む、約110年の歴史を持つ登録有形文化財のレストラン「茶亭」と、渡辺明氏によって2006年に増築された「別邸」からなる約3000坪の敷地面積を誇る宿泊施設だ。大正2年(1913年)、ミツワ石鹸二代目社長・三輪善兵衛が沼津市から借用して建てた数寄屋造りの建物「松岩亭」に始まり、2006年に「千本松・沼津倶楽部」として再興。2022年8月に、経営・運営がグリーニングに継承され、2023年6月に「沼津倶楽部」としてリニューアルオープンした。

沼津駅からタクシーを使い10分ほどで「沼津倶楽部」に到着すると、レセプションのある別邸まで庭園を抜けていく。木々が生い茂り、苔が蒸し、水のせせらぎが聞こえる庭園を歩いていくうちに、穏やかな気持ちになっていくのを感じる。

レセプションのある別邸を目にして思い出したのが、那須高原の二期倶楽部(現・星野リゾート リゾナーレ那須)だ。それもそのはず、建築を手掛けたのは同じ渡辺明氏で、ここは現段階で彼の最後の作品だという。富士の湧水がこんこんと注がれる水盤は、建物の陰影を美しく水面に映し込む。

木と土という最も自然的な要素をもつ素材を使用した建物は、数寄屋建築の伝統を受け継ぎつつ、現代的に和を表現した意匠へと展開し、全体の調和を作り出している。

富士川の砂と土を積層させた版築壁は、陽の移り変わりにより、土の堅さと柔らかさの表情を刻一刻と変化させながら風景に溶け込む。また、建築家の渡辺氏は屋根に使われている吉野杉を生きている素材と捉え、ほとんど無垢のまま加工せず、びっしりと並べた上から押さえつけるだけで作っている。

8室限定、水盤と建物が呼応する渡辺明氏設計の「別邸」にステイ

客室はこの広大な敷地の中に、8室のみという贅沢さ。和室、洋室、和洋の要素が混在したメゾネット、京都の西陣織を世界に発信する「HOSOO」が手掛けた「沼津スイート」などの客室タイプがある。今回私はバルコニー14平米を含む、49平米という広さを誇る「スーペリアバルコニールーム」に宿泊した。

最大2名まで宿泊できる「スーペリアバルコニールーム」は、クイーンサイズのダブルベッドを備えた2階に位置する客室だ。二面がガラス張りで室内からも庭園の緑が望める開放感がありつつも、人の目が気にならない造りになっているのがありがたい。

松林を一望できる広々としたバルコニーには、デッキチェアも用意されており、思い思いの時間を過ごせる。

また、室内のシャワールームに加え、バルコニーの一角には露天風呂を完備。浴室のタイルには、オーストリアで採掘された天然のバドガシュタイン鉱石という、免疫向上や新陳代謝を活性化させると言われる特殊な遠赤外線を発する鉱石が用いられている。その特別仕様の浴槽と富士山の伏流水に入浴することで、長時間の温熱効果や、ストレス軽減や健康増進が期待できるという。

個人的に嬉しかったのが、ミニバーが宿泊費に含まれているということ。しかも静岡県三島市にある「fete 三島醸造所」のクラフトビールや、フランス「アラン・ミリア」のジュースとネクターまで揃えるとは、さすがのラインアップ。もちろん静岡茶やドリップバッグコーヒーも用意されている。

チェックインの手続きは、客室でウェルカムドリンクとウェルカムスイーツの半熟チーズケーキをいただきながら行われる。8室限定のスモールラグジュアリーホテルだからこそできる、エクスクルーシブなサービスだ。

ウェルカムドリンクはスパークリング・赤・白ワイン、クラフトビール、緑茶、和紅茶、ブレンドコーヒーから選べる。今回は沼津にタップルームを持つ「ベアードブルワリー」の「ライジングサンペールエール」をいただいてみた。

「uka」監修の限定トリートメントと、岩盤浴、スパでリトリート

「沼津倶楽部」がおこもりステイに打ってつけだと感じた理由の一つが、スパ施設の充実ぶりだ。内風呂と露天風呂、サウナ室に加え、岩盤浴もある。内風呂と露天風呂は客室の露天風呂と同じく、日本3大清流の一つ、柿田川湧水群と同じ水源の富士山伏流水を使用。長い年月をかけ幾層もの地層で濾過された富士山の雪解け水は、バナジウムやカリウム、マグネシウムなどの豊富なミネラルを含んでおり、浄化作用に優れているという。
2階にある女性用のスパ施設には、温度の異なる2室のサウナを完備。富士山の伏流水をたたえた水風呂や、屋外スペースに外気浴用のチェアや、室内にリラクゼーションスペースも用意されている。

そして「沼津倶楽部」のスパで体験できるのが、トータルビューティーカンパニー「uka」によるトリートメント。今回私は2024年8月からスタートした1日1組限定の宿泊プランに含まれる、「深呼吸・深睡眠」をテーマにした「ドリーム」(60分)を体験した。

「uka」では、西洋アザミの種子からコールドプレス製法で抽出したシナラオイルを、日本で唯一ボディオイルに使っており、アルガンオイルよりも抗酸化作用が強いそう。今回のトリートメントでは、睡眠導入を促すフランキンセンスやマジョラム、ラベンダーをブレンドした「ドリームオイル」を使用。上半身がメインのトリートメントで、脊柱起立筋剥がし、デコルテ、腕のトリートメントを行い、硬さが選べるスカルプブラシの「ケンザン」で側頭部をほぐす。覚醒と睡眠を切り替え、自然な眠りを誘う作用を持つメラトニンの放出を促していく施術だ。トリートメント後は、緊張して凝り固まった頭部や肩首が和らぎ、心身が軽やかに。肩甲骨も開いたためか、自然と深呼吸ができるようになっていた。

「イチリンハナレ」齋藤宏文氏監修のモダンチャイニーズに舌鼓を打つ

夕食と朝食は登録有形文化財にも指定された、約110年の歴史を持つ数寄屋造りのレストラン「茶亭」で振舞われる。しかもそれが和食ではなく、鎌倉の「イチリンハナレ」などで知られる齋藤宏文氏監修のモダンチャイニーズなのだから面白い。齋藤シェフが静岡県出身というご縁で、「沼津倶楽部」とのコラボレーションに至ったそうだ。

料理には、山と海に囲まれた自然豊かな静岡の素材を活用。「分解と再構築」をテーマに掲げ、馴染みのある料理の良い部分は残しながら、新たな要素を入れて構築する齋藤氏ならではの、シンプルに素材の味を楽しめるコースとなっている。アルコールペアリング(9,500円)もあり、料理に合わせてワインだけでなく地元の日本酒や紹興酒なども振舞われるので、お酒好きの方はぜひオーダーを。

訪れた9月のディナーコースでは、静岡県産のトウモロコシの冷製スープに始まり、クラゲの中華和えが登場。酔っ払い海老をイメージして紹興酒で漬けた牡丹海老は、ねっとりとしていて甘美さを伴う。5年熟成の紹興酒「麗美」とのペアリングもばっちりだ。

続いて「イチリンハナレ」のスペシャリテである「よだれ鶏」がお目見え。肉質がやわらかい静岡県産の美味鶏を使用しており、自然豊かな環境にある県内21カ所の養鶏場で丁寧に飼育された鶏肉で、コクと甘みが強いのが特徴だ。黒酢と自家製のラー油を合わせたタレとよく合う。

よだれ鶏を味わった後は、残ったタレに皮から手作りした自家製餃子と、齋藤シェフオリジナルの配合で製麺した山椒麺をつけて三段階で楽しめるようになっている。ペアリングしてもらった紹興酒入りのドラゴンハイボールも、静岡らしく茶葉とディルがあしらわれており、柑橘っぽい爽やかさがラー油のスパイシーさに合っていた。

高級食材である「ふかひれ」は、テーブルの目の前で美味鶏を含む国産の鶏の骨を6〜7時間煮込んだ濃厚な白湯スープを回しかけて振舞ってくれる。

ふかひれは、最高級の品質であるヨシキリザメの尾びれを使用し、やわらかくなるまで蒸し、片栗粉をまぶし香ばしく表面を焼き上げている。このフカヒレのおいしさを存分に引き立てていたのが、フランス・ブルゴーニュが誇る白ワインの「ドメーヌ・ヴォコレ・エ・フィス シャブリ」。シャルドネの清らかさが活きた、キリっとした辛口で、フカヒレを食べた後に鍋に加えていただく、鶏白湯のリゾットともスッとなじむ。

「青椒牛肉絲」とフランス・プロヴァンスの赤ワイン「ドメーヌ・リショーム シラー」のペアリングに続いて、沼津産の真鯛と水連菜に、ナンプラーとシーズニングソースを合わせた魚介料理が登場。静岡県焼津市の老舗酒蔵の「磯自慢」のペアリングも心地よい。

〆は豆乳酸辣湯麺と、お腹に余裕があれば九条ネギを使ったチャーハンサービスも受けられる。

デザートは大葉とパイナップル、青トマトのグラニテ、東方美人茶を使った茶菓子に、「THE TEA COMPANY」のプレミアムボトルティー「つゆひかり 烏龍茶」がペアリングされ、最後までこだわり抜かれた食体験だった。

朝食も中華を選べるのが嬉しい。朝から蒸籠で蒸した自家製シュウマイや、ちまき、ジャスミンライスを使った中華粥や干し豆腐の和え物、沼津産アジの開きなどがいただけるなんて、なかなか国内の宿泊施設ではないだろう。

棋聖戦も行われた登録有形文化財「茶亭」の建築美を堪能

「茶亭」にはメインダイニング以外にも個室や、ラウンジとして使われている「昭和の間」「バーラウンジ」などがあり、利用だけでなく見学することもできる。

「千人茶会を催したい」という主人の思いから造り上げられた一級の茶亭は、時代を経て旧日本陸軍の拠点となり、戦後はGHQに接収されるなど各時代における要衝としての務めを果たした。

たくさんの部屋がある中で、ぜひチェックしておきたいのが、かつて将棋の棋聖戦が行われた「清水の間」。いまは特別なイベントなどで利用されているそうだ。

朝昼夜、四季折々で刻々と表情を変えるランドスケープや、潮騒、松林の揺れる音があいまり、心身がほどけるような宿泊体験が叶う「沼津倶楽部」。都心から行ける、大人のおこもり旅にぴったりなディスティネーションだ。

沼津倶楽部
住所/静岡県沼津市千本郷林1907-8
TEL/055-954-6611
URL/https://numazu-club.com/

Photos & Text:Riho Nakamori

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