ソムリエ店長がそっと教える「飲みやすいワイン」のちょっとマニアックな基本
こんにちは、ワインブロガーのヒマワインです!
私はお酒のイベントなどでワイン好きでない方々にワインを注ぐことがしばしばあるのですが、「お味はいかがですか?」と質問するとかえってきがちなのが「飲みやすいです!」という一言。
これ、逆にいえばワインって基本的には「飲みにくい」って思われてるってことだと思うんです。たしかに、ワインは渋かったり酸っぱかったりするし、アルコール度数も高め。苦手意識を持つ人も多くいるからこそ、「飲みやすい」に価値がある。
ならば「飲みやすいワイン」を提案すればいいのではないか、と。というわけで、飲みやすくておいしいワインを盟友であるソムリエ店長こと沼田英之さんに選んでもらいました。飲みやすいワインとは一体どんなワインなのか? さっそくご紹介しましょう!
【目次】
飲みやすいワインとはなにか?
飲みやすいワイン1:ペルリーノ カノーヴァ・アスティ DOCG NV
飲みやすいワイン2:アロイス・ヘレラー グリューナー・フェルトリーナー アルデ・レーベン レゼルヴェ2021
飲みやすいワイン3:ローガン・ワインズ ウィマーラ ゲヴュルツトラミネール
飲みやすいワイン4:ドメーヌ・コーセイ メルロ ロゼ 2023無濾過
飲みやすいワイン5:ファンテーヌ・ガニャール ブルゴーニュ・パストゥグラン 2022
飲みやすいワイン6:ヤンメルタル・ワイン・エステート カシミル 2019
飲みやすいワイン7:ウマニ・ロンキ ヨーリオ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ
飲みやすいワイン8:マックマニス ジンファンデル ロダイ 2022
飲みやすいワインとは?
飲みやすいワインとはなにか?
ヒマワイン(以下、ヒマ)「さて今回は「飲みやすいワイン」がテーマです」
沼田店長(以下、店長)「非常に悩ましいテーマですよえ。そもそも『飲みやすいとはなにか』から考えなくちゃいけない」
ヒマ「そこをなんとか、わかりやすく教えてください!」
店長「わかりました。まず、お客様によく言われるのが『あまり渋すぎず、酸味の強すぎないものが欲しい』ということです」
ヒマ「ワインは渋くてすっぱい、そう考える人は多いですよね」
店長「なので、まずは渋みと酸味が少ないものというのがひとつの基準になります。その上で、『甘い』というのはキーワードです。このワインを飲んでみてください」
飲みやすいワイン1:ペルリーノ カノーヴァ・アスティ DOCG NV
ヒマ「イタリアのスパークリングワイン『アスティ』ですね。おっ、めっちゃくちゃ爽やかな甘み! シャインマスカットとか青りんごの風味があって、心地良いシュワシュワ感もあり、これは問答無用で飲みやすいです」
店長「ミュスカという品種を使っているのですが、これすなわち『マスカット』のことなんですよね。岡山県産のマスカットを口中に頬張って、炭酸水で流し込んだような感覚です(笑)」
ヒマ「これは渋み・酸味の対極にありますね。価格も1870円と買いやすいし、アルコール度数が7%と低いのもいい」
店長「『アルコール度数の低さ』も飲みやすさのひとつだと思います。「ワインは悪酔いしちゃいそう」と敬遠する方でも、これなら飲める」
ヒマ「チューハイ感覚で飲めるけど、ボトルもオシャレだし、パーティにもってこいですよね。甘口だから本格的なワインじゃないなんてことはまったく1ミリもないですし」
店長「個人的にも『甘いは正義』と思っています。フルーツに合わせてもいいし、メロンのショートケーキなんかとも好相性ですよ。もちろんお食事にも合わせられます」
ヒマ「飲みやすさという点では究極レベルかと思うので、ひとまずこれを選べば間違いなしですね!」
飲みやすいワイン2:アロイス・ヘレラー グリューナー・フェルトリーナー アルテ・レーベン レゼルヴェ2021
店長「続いての『飲みやすいワイン』はオーストリアの白ワインです」
ヒマ「これは打って変わって非常にニュートラルなワインですね。ほどよい酸味とほどよいフルーティさがあって、これも飲みやすいです」
店長「白ワインのマトリックス図があるとしたら、ちょうど真ん中に位置するような味わいなんですよね。だからこそ、食事との相性が抜群にいいんです。豚肉を焼いたものでもいいですし、お豆の煮込みでもいいですし、特にお寿司にはぴったりです」
ヒマ「これはあれですね、お料理持ち寄りのホムパで、おしゃべりに夢中になっているうちに気がついたら1本開いちゃってるやつですね」
店長「そうそう、まさにそのイメージです。パーティの主役ってワインじゃなくて食事とか友だちとのおしゃべりじゃないですか。それを邪魔しない、脇役に徹してくれるという意味での『飲みやすさ』をイメージしてみました」
ヒマ「そして『フルーティ』ってとても大切な要素ですよね。ジュースっぽさとはまた違う、ワインならではの奥ゆかしいフルーティさを味わえるワインだと思いました」
飲みやすいワイン3:ローガン・ワインズ ウィマーラ ゲヴュルツトラミネール
店長「続いてはオーストラリアの白ワインです」
ヒマ「これはゲヴュルツトラミネールという難しい名前の品種のワインですね。香りはバラ、味はライチという特徴がある品種ですが、その品種の特徴が全開に出ていますね!」
店長「実は、『娘が今度成人するから、一緒に飲めるワインを選んで欲しい』とリクエストされた場合、私が高確率で選ぶのがこの品種なんです。とにかく香りが良くて華やかですから」
ヒマ「『香りがいい』は間違いなく飲みやすさの構成要素のひとつですね。その上でライチの味がちゃんとして、すごくフルーティです」
店長「ワインはもちろん性別を問わずに楽しめるお酒ですが、肌感覚としては女性人気がとくに高いのがこのゲヴュルツトラミネールです。タイ料理などのエスニック料理との相性は抜群ですよ」
ヒマ「このワインは価格も2090円とお手頃ですし、酸っぱくもないしアルコールのツーンとした感じもなく、すごく飲みやすい白ワインだと思います!」
店長「変なお化粧をしていない、ブドウの個性が素直に表現されたワイン。こういうところをワインの入り口にしてもらえたら嬉しいな、というワインです」
飲みやすいワイン4:ドメーヌ・コーセイ メルロ ロゼ 2023無濾過
ヒマ「おっ、お次はロゼですか。しかも日本の長野のワイン」
店長「今、『日本ワインを飲んでみたい』っていうお客様がとても多いんです。そして実は長野って『メルロー』っていう国際品種の名産地なんですよ。その長野にあってメルローのスペシャリストと言えるのがこの造り手さんです」
ヒマ「色合いは澄んだサーモンピンク。とてもキレイです。ベリー系の香りもいいですね!」
店長「色も香りも素晴らしいですよね。そして飲んでみると、後味にザラメのようなベリーのような独特の甘みを感じられるんです」
ヒマ「バラが描かれたラベルもかわいいですね」
店長「日本でもそうですが、海外ではとくにバラの花は『ラブ』を伝える花なんですよね。『飲みやすさ』からは少し離れてしまうかもしれませんが、見た目に華やかで味わいもいいので、プレゼントや、記念日ディナーにいいと思って選びました」
ヒマ「送別会で感謝の気持ちを込めて花束に替えてプレゼント、なんてのも良さそう。味わいは本格的で渋みもあるので、お肉が合いそうですね」
店長「大地に根ざした味わいという感じもあるので、ゴボウと牛肉の炊き合わせなんか最高でしょうね」
ヒマ「少し山椒をあしらったりしてね。最高ですねそれは!」
飲みやすいワイン5:フォンテーヌ・ガニャール ブルゴーニュ・パストゥグラン 2022
ヒマ「ここからは赤ワインに突入ですね。まずは世界中で大人気のフランス・ブルゴーニュのワイン」
店長「個人的な話になってしまいますが、これは妻と仲直りしたいときに買って帰るワインなんです」
ヒマ「おっ、面白そうな話ですね(笑)」
店長「朝、変な空気で家を出てしまった日の帰宅時に『ごめん』とこのワインを渡すと、大抵スムーズに仲直りできます。妻がこの生産者を好きなんですよ」
ヒマ「4400円とお高めのワインですが、それは支払う価値がありますね……! ピノ・ノワールという品種とガメイという品種を50%ずつ使ったワインだけに、夫婦が50%ずつ歩み寄ろうみたいなことですかね、強引にこじつけると(笑)」
店長「少しマジメな話をすると、ブルゴーニュのワインは高騰が続いていて、4400円でも『安い』という分類になってしまっているんです。そしてこのワインは値段に対して品質が非常に高く、かつすごく飲みやすいんです」
ヒマ「たしかに。渋みはおだやかで甘酸っぱいタイプ。「飲みやすいワイン」でもありますが、ワインをこれから本格的に飲みたい人に勧めたい『飲みやすいブルゴーニュワイン』という印象ですね」
店長「ワインにハマったらブルゴーニュは避けて通れないですからね。僕がいつもオススメする定番のつまみ、鳥ささみの梅肉和えとぜひ合わせていただきたいです」
飲みやすいワイン6:ヤンメルタル・ワイン・エステート カシミル 2019
ヒマ「続いては……最近じわじわと話題になっている東欧のワインですね」
店長「はい、ハンガリーのワインなのですが、フランスのボルドー地方で使われる品種を使った“ボルドーブレンド”と呼ばれるワイン。一口飲んでみてください」
ヒマ「うっまいですねこれは! めちゃくちゃクッキリした果実味があって、渋みと酸味はおだやか。すごく本格的な味でありながら、全体の印象はすごく柔らかいです」
店長「これで2178円は正直衝撃です」
ヒマ「ひとつ前のワインが『飲みやすいブルゴーニュ』だとしたらこれは『飲みやすいボルドー』という印象です」
店長「ですね。そして、ボルドーのワインでこの価格・このクオリティのものを探すのは正直非常に難しい。コスパを含めた『飲みやすさ』がすごいワインだと思います。そして、このワインにはやっぱり肉を合わせてもらいたいですね。スクリューキャップだからBBQにも最高。スクリューキャップであることも、広い意味では“飲みやすい”の一部かもしれません」
ヒマ「ちょっと奮発してローストビーフを焼いたり、厚切りのステーキを焼いたりした際にはこういうワインがやっぱり欲しくなりますよね」
店長「料理が苦手な方であれば、ビーフジャーキーでも全然オッケー。ビーフジャーキーを齧りながらこれを飲んだら、無限に飲めちゃいます(笑)」
飲みやすいワイン7:ウマニ・ロンキ ヨーリオ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ
店長「続いてはイタリアワインです」
ヒマ「イタリアワインはまさに『飲みやすい』ワインの宝庫ですね。コスパに優れたものも多いですが、あえて2855円とちょっぴりお高めのものをセレクトされてますね」
店長「これはもう、修行時代から今に至るまで、個人的に何度購入したかわからないくらい飲んでいるワインなんですよ。品種はモンテプルチアーノ」
ヒマ「この品種は飲みやすいワイン品種イタリア代表みたいな印象があります」
店長「実際、赤品種だと作付面積がもっとも大きいんですよ。それだけに、680円とか880円で買えるものもあります。だからこそ、この2860円で違いを感じていただきたいんです。これはモンテプルチアーノダブルッツォの“Sクラス”ですから」
ヒマ「渋みや酸味がおだやかで果実味がしっかり感じられるのは前のワインと同じですが、果実の主張が控えめなぶんだけ食事に合いそうです」
店長「まさに。宅配のピザでもいいですし、チーズをたっぷり使ったドリアでもいい」
ヒマ「イタリアンをワイワイ食べながらガブガブ飲んだら最高でしょうね」
店長「断言しましょう、最高です(笑)」
飲みやすいワイン8:マックマニス ジンファンデル ロダイ 2022
ヒマ「いよいよ最後の1本ですね。カリフォルニアワインですか」
店長「最後はコスパが最強の1本を選んでみました。味わいは果実味が極めて強く、葉巻のようなスモーキーなニュアンス、ココナッツの香りが漂い、これぞカリフォルニア! という味がします」
ヒマ「うわほんとだ。サーフィンをやっていた先輩のクルマの中の香りがします(笑)」
店長「この生産者は『この価格でこの味はすごい!』と評判の生産者なんです。はっきりと甘めなので、定番は照り焼きソースとのペアリング。テリヤキバーガーと合わせるとこれはもう最高です」
ヒマ「味の濃いものを合わせたいですよね。仕事終わりにデパ地下に寄って、中華惣菜店で30%引きになった黒酢ソースの肉団子なんかを合わせたいです。あと、崎陽軒のシウマイ弁当も合いそう」
店長「いいですね。中華との相性も間違いなくいいと思います。『ジンファンデル』という品種は前に挙げた『モンテプルチアーノ・ダブルッツォ』と並んでハズレの少ない品種なので、頭の片隅に置いてもらえると嬉しいです」
飲みやすいワインとは?
ヒマ「8本のワインをテイスティングさせてもらいましたが、だいぶ『飲みやすいワイン』の解像度が高まった気がします。基本的には渋みや酸味が少なく、果実味が強いもの。白ワインにおいては、酸味が強すぎず、フルーティで食事に合うもの。そして、甘口スパークリングは問答無用で飲みやすい。そんなところでしょうか」
店長「そうですね。それに加えて、価格が安めであることも重要ですし、できればスクリューキャップだとなおいいですよね」
ヒマ「たしかに、味わい以外の部分での手に取りやすさ・飲みやすさですね」
店長「個人的には『説明が要らない』ということを念頭に選んでみたんです。畑の土壌がどうで、ブドウの収穫年の雨の量がどうでといった説明がなくても、開けてグラスに注いで飲んだら問答無用でおいしい。そして食事の邪魔をしないことも大切です」
ヒマ「いい意味で主役にならない。だけど、単体で飲んでもしっかりおいしい。それが『飲みやすいワイン』なのかもしれませんね」
店長「普段ワインを飲まない人でもおいしく飲めるっていうのも条件のひとつかもしれませんね。ぜひ、今回選んだ8本のワインを参考に、ワインの世界の入り口を開いてくれるような『飲みやすいワイン』を選んでみてください!」
ワインマーケット・パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜20:00
TEL/03-5424-2580
winemart.jp
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