7年連続幸福度No.1! 旅して実感 フィンランド人に学ぶ幸せ道 in 湖水地方〈後編〉 | Numero TOKYO
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7年連続幸福度No.1! 旅して実感 フィンランド人に学ぶ幸せ道 in 湖水地方〈後編〉

世界一幸せな国として知られるフィンランドに夏がやってきた! 幸福の国の人々が目指すは湖水地方。森と湖に囲まれた風光明媚なふたつの街、ラハティとタンペレを訪ね、フィンランド流の夏旅を教えてもらいました。前編に続き後編は、森林浴やサウナなど、ヒーリング効果満載のアクティビティを体験。

ちょっと目先の変わった食体験!

フィンランド料理はいろいろあれど、全体的にシンプルなものが多い印象。特に今回旅をした湖水地方ではサーモンのスープやパイクパーチのグリルは定番です。タンペレにはそうした定番を味わうレストランもたくさんありますが、たまには趣向を変えてみるのも一興。

タンペレ中央駅の近くにある『Villit Ja Viinit』はワイン&ソーシャルバー。カウンター席がほとんどで、気軽にひとりでもふらりと入れるお店です。ここでは地元の旬の食材からなる料理とワイン、自然由来のソフトドリンクがいただけるのですが、食材のみ、または「リゾット」「パスタ」のような表記ゆえ、メニューを見ても「???」。想像力を必要としますが、ここはシェフを信じてオーダーしましょう。料理にフルーツがふんだんに使われていたりして、なかなか革新的ですが、ワインとのペアリングはばっちり。

カジュアルな雰囲気が魅力。すぐ隣にあるKAJOというレストランと同系列で、どちらもヒップなグルマンに人気
カジュアルな雰囲気が魅力。すぐ隣にあるKAJOというレストランと同系列で、どちらもヒップなグルマンに人気

お店の名前が「ワイルド&ワイン」という意味なので、そこはもうワイン必須ではありますが、ノンアルコールでペアリングをお願いするのもおすすめ。というのも、さまざまなハーブなどの食材を用いてオリジナルレシピで作られたソフトドリンクが、ワインにも劣らぬ味わい深さなのです。ちょっとユニークな食体験です。

Villit Ja Viinit
住所/Rautatienkatu 12, Tampere
営業時間/水、木 16:00~00:00
金、土 16:00~01:00
定休日/日~火
URL/www.villitjaviinit.fi/

もうひとつ、オーセンティックな北欧料理だけれど、湖水地方を満喫できるレストランなら『Restaurant Näsinneula』へ。サルカンニエミテーマパークにある展望台のてっぺんに位置する回転レストランで、360度移り変わる景色を楽しみながら食事をすることができます。

ディナーメニューには北極イワナやトナカイのグリルなど、フィンランドの味が並ぶ。目で、舌で、フィンランドを感じられるレストランだ
ディナーメニューには北極イワナやトナカイのグリルなど、フィンランドの味が並ぶ。目で、舌で、フィンランドを感じられるレストランだ

回転レストランだなんて、いかにも観光客みたい! と思うなかれ。地元の人たちも友人の誕生日や記念日といったお祝い事で利用することも多い、なかなかに人気のレストランなのです。なにしろ124mのタワーからの景色がすばらしく、森と湖が連なる様子が遠くまで見渡せ解放感は抜群。緑豊かで山がなく、平坦な湖水地方の地形もよくわかるので、一度は訪れたいレストランです。ランチタイムから営業していますが、地平線に沈むサンセットを目当てにディナーがおすすめ。思い出深い体験になることはまちがいありません。

こんなに遠くまで地平線が見られるなんて。夏場はサンセットがディナータイムに当たるので、夏だけのお楽しみといえそう
こんなに遠くまで地平線が見られるなんて。夏場はサンセットがディナータイムに当たるので、夏だけのお楽しみといえそう

Restaurant Näsinneula
住所/Laiturikatu 1, 33230 Tampere
営業時間/11:00~00:00
定休日/なし
URL/sarkanniemi.fi/en/naesinneula-restaurant

 

やっぱり森へ! フィンランド的散策法
「森に入るのは子どものころからの習慣」というカロリーナさん。いいことがあっても悪いことがあっても森に入ると心が穏やかに落ち着くのだそう
「森に入るのは子どものころからの習慣」というカロリーナさん。いいことがあっても悪いことがあっても森に入ると心が穏やかに落ち着くのだそう

都会なタンペレといえども、フィンランドの人は必ず森に入ります。ただ散策するだけでも十分フィンランド的アクティビティですが、元バレエダンサーだったというカロリーナさんが主催する『Villipichlaja』では、フィンランドの森で楽しめるさまざまなプログラム「Gone with the forest」を提供。ポイントは、自然を尊重すること。今回はウェルネスをテーマに散策をしました。

彼女は森の中で食べられる植物を見つけるエキスパートでもある。味見をしてみると、アーモンドのような香りだったり、レモンのようだったりと発見があっておもしろい
彼女は森の中で食べられる植物を見つけるエキスパートでもある。味見をしてみると、アーモンドのような香りだったり、レモンのようだったりと発見があっておもしろい

森に入る前に、まず2本の木を門に見立て「この“ゲート”を越えたら、森の世界に入ります」と、気持ちの切り替え。そうすることで自らを俗世間から切り離し、自然を楽しむことに集中できるのだそう。

ところどころで足を止めて、風を感じながら瞑想したり、ふかふかのコケ類の上で横になってみたり。森そのものを楽しみ、向き合う方法を教えてもらう
ところどころで足を止めて、風を感じながら瞑想したり、ふかふかのコケ類の上で横になってみたり。森そのものを楽しみ、向き合う方法を教えてもらう

あおむけに寝そべってみると、清涼な空気や太陽のぬくもり、ひんやりと心地よく冷たい草などすべてがやさしくて。寝落ちしてしまいそうなほどリラックス
あおむけに寝そべってみると、清涼な空気や太陽のぬくもり、ひんやりと心地よく冷たい草などすべてがやさしくて。寝落ちしてしまいそうなほどリラックス

「フィンランドでは老若男女、季節を問わず、みんな必ず森に行くの。家にひきこもっている人だって、森にだけは必ず行く」と、カロリーナさん。「日本語にもあるでしょう、“森林浴”という言葉。まさにその呼び方がぴったりで、私たちはシャワーを浴びるように森林を浴びるのが日常なのよ」。サウナと同様に、フィンランド人にとって森に入ることそのものが「調う」ことなのかも。

Villipichlaja
Gone with the forest(2時間)
場所/Kauppi Forest, Tampere
料金/€59(1人)
1人から参加可能
※要予約
URL/www.villipihlaja.fi/?lang=en

よりディープなサウナ体験が目白押し

お次はサウナ。さすが「サウナキャピタル」として認定されているサウナの街・タンペレ。ちょっとおもしろいサウナ体験が可能です。

サウナ・コンケリお手製「サウナ・テンプル」の前で、ユハ(左)とマッティ。自転車で全国のサウナを旅してまわったというサウナエキスパート。日本を訪れたこともあるそう Photo:Yui Akiyama
サウナ・コンケリお手製「サウナ・テンプル」の前で、ユハ(左)とマッティ。自転車で全国のサウナを旅してまわったというサウナエキスパート。日本を訪れたこともあるそう Photo:Yui Akiyama

『サウナ・コンケリ』はフィンランド人男性ユハとマッティのユニットで、タンペレを中心にさまざまなサウナを訪れるガイディングツアーを開催。観光客にはなかなか敷居の高い公共サウナや最新のユニークなサウナなどに案内してくれます。そのほかに興味深いのが、彼らのオリジナルであるサウナ・セッション。サウナに神秘性を見出したセッションで、チャント(詠唱)を聴きながらサウナ内で瞑想をします。自分と向き合い、自らの身体に宿る真の力を呼び起こすのに有効なのだそうで、確かに、ふだんサウナに入るときってこんなに無になることもないなと思います。

「サウナ・テンプル」は公共サウナもあるラウハニエミ地区にある。湖畔はひたすら太陽を楽しむ人でいっぱい。中心部から車で10分ほどの近場
「サウナ・テンプル」は公共サウナもあるラウハニエミ地区にある。湖畔はひたすら太陽を楽しむ人でいっぱい。中心部から車で10分ほどの近場

「ヴィヒタ」と呼ばれる白樺の枝葉を束ねたウィスク(熱波を送るための扇のようなもの)に水をひたしてかけてくれたり、ぐぐぐっとお腹のあたりを押したりするので眠り込んでしまうということはないものの、暑いのがだんだん気にならなくなってくるのが不思議。「心頭滅却すれば火もまた涼し」ってこのことかしら、なんて神聖な気持ちになりながらも休憩になると湖に走っていき、氷のように冷たい水に身体をひたして「ひょえ~っ」となる、ONとOFFのばランスがなかなか楽しいセッションでした。

サウナ・コンケリ
サウナツアー/2~8時間/€100(1人)
宿泊施設でピックアップ、サウナ入場料、公共の交通機関料金込
セッション/2時間 €260(1~3人、以降1人€70)
持ち物/水着、タオル、サウナ用スリッパなど
※オプションで日本語通訳のアサイン可能
URL:www.saunakonkeli.com/japanese

時代とともに新しいスタイルが生まれるのはサウナも同じ。「だからこそ伝統を忘れないように」との想いがシーリさんのセッションには込められている
時代とともに新しいスタイルが生まれるのはサウナも同じ。「だからこそ伝統を忘れないように」との想いがシーリさんのセッションには込められている

タンペレでのもうひとつのサウナ体験は、サウナヒーラーのシーリ・コスキさんとのセッション。サウナ・コンケリがアジアンなスピリチュアル要素を盛り込んだ新時代的なものであったのに対し、こちらは伝統的なサウナによるヒーリング体験です。ポイントは自然への感謝やリスペクトで、そこには人間のもつ自然治癒力なども含まれます。シーリさんがつぶやく祝詞のような言葉から、セッション開始。聞けば、サウナの精霊に語りかけているのだそう。これもまた、カロリーナさんがしていたように、気持ちを切り替える儀式のようなものなのかも。サウナにも向き合う心をまず調えるといったところでしょうか。

ヴィヒタは白樺で作られるのが一般的だが、シーリさんはアロマなどの効果も考えてさまざまな枝葉や花を混ぜるのだそう。サウナには自然がつきもの
ヴィヒタは白樺で作られるのが一般的だが、シーリさんはアロマなどの効果も考えてさまざまな枝葉や花を混ぜるのだそう。サウナには自然がつきもの

伝統的サウナでもまた、ロウリュとヴィヒタ(シーリさんお手製のヴィヒタは白樺だけでなく、野の花も混ざっていてちょっと可愛い)を用います。ここでは参加者それぞれがヴィヒタをもつスタイル。いろいろな種類の枝葉があるので好きなものを選びます。ヴィヒタは扇ぐためだけではなく、ロウリュしたときに一気に充満する熱波をもろに吸い込まないため。実際、シーリさんのロウリュはかなりの勢いなためヴィヒタで防御していないと息も吸えません。アーユルヴェーダや鍼灸のテラピストで准看護師でもあり、医学的知識があるシーリさんがいるから安心ではあるものの、この暑さは体験したことがないほど。一気に汗が吹き出し、老廃物も流れ出ているに違いない! と実感します。痛いところがあればヴィヒタでペシペシと叩いて、血流をさらに刺激。これはかなり効く!

クレイを用いたヒーリング法も伝授。痛いところなど不調のある場所に塗ってからサウナへ。サウナの効能の奥深さにも触れられる
クレイを用いたヒーリング法も伝授。痛いところなど不調のある場所に塗ってからサウナへ。サウナの効能の奥深さにも触れられる

フィンランドに現存する最古の公共サウナ「ラヤポルティン・サウナ」にてシーリさんのトリートメントを受けることができる。日本語通訳の手配も可能。

ラヤポルティン・サウナ
住所/Pispalan valtatie 9 FI-33250 Tampere
営業時間/月・水 16:00〜22:00
金・土 14:00〜22:00
TEL/+358-50-310 2611
※マッサージ施術は要電話予約
URL/www.rajaportinsauna.fi/index.ja.php

これぞ幸せの国の過ごし方

旅を振り返ってみると、森とサウナづくし。お楽しみは照り付ける太陽、飛び上がるほど冷たい湖の水、足裏をくすぐるひんやりふかふかの草の感触。自然それ自体がアクティビティであって、サウナですらその水の冷たさを楽しむために入るのでは、と思われるくらい。シンプルなのに、すべてがまばゆくてとにかく気持ちがよく、思わず「あ~幸せっ」と声が…。自然に簡単にアクセスできるだけでこんなに多幸感を得られるなんて? と驚くと同時に、なるほど世界ナンバーワンの幸せの国の秘密はこれだったのか、と深く納得するのでした。

ヘルシンキまで直行便でひとっ飛び!フィンランドデザインに囲まれたフライト

フィンランドに行くなら、やっぱり利用したいのはフィンエアー。昨年創立100周年、日本就航40周年を迎えた、フィンランドのフラッグキャリアで、日本とフィンランドを約13時間で結びます。5月末には約4年ぶりに名古屋線も再開し、ますますアクセスがよくなったフィンエアー。機内からフィンランドの雰囲気を感じられ、旅のはじまりから終わりまで、フィンランドづくしで楽しませてくれます。

フィンエアーは羽田、成田、名古屋、関空線に就航。機体にもマリメッコなのはさすがフィンエアー。マリメッコ柄の機材は日本路線にもよく飛んでくるので、当たるとうれしい!

プレミアムエコノミーのアメニティにもマリメッコ。クッションがネックピローなのはすごくありがたい! トラベルキットは紙製の入れ物なのがエコ。

夜のフライトなのでさっそくシグネチャーカクテル『ノーザンブラッシュ』を。甘くて飲みやすい、ジンとリンゴンベリーのカクテル。

さっそくフィンランドらしくサーモンをオーダー。プレエコのディナーは軽量の陶器でサーブなので、ワンランク上を感じさせてくれる。

帰国便は夕刻発(名古屋線のみ深夜発)便。ウェルカムシャンパーニュはフィンランドデザインの「イッタラ」のグラスで♡ ナプキンまでマリメッコ。

こちらは布製のポーチ(もちろんマリメッコ!)なので、あとでいろいろ使えそう。デザインは何種類もあるので、乗るたびに集めたくなる。

フィンランド料理のチョイスは季節によってさまざまで、おなじみパイクパーチやサーモンのほか、トナカイのステーキなども。

CAさんが楽しそうに乗務している姿も好感度大! 乗り継ぎが便利なのでヨーロッパへ行く人にも人気があるのがよくわかる。

フィンエアー
羽田/ヘルシンキ 21:50/04:40(翌日) ヘルシンキ/羽田 18:30/13:50 翌日) 毎日
成田/ヘルシンキ 23:05/05:55(翌日) 火・水・木・金・土・日
ヘルシンキ/成田 17:35/12:55(翌日) 月・火・水・木・金・土
関西/ヘルシンキ 22:25/05:30(翌日) 月・火・水・金・日
ヘルシンキ/関西 17:45/12:35(翌日) 月・火・木・土・日
名古屋/ヘルシンキ 22:50/05:55(翌日) 金・月 ヘルシンキ/名古屋 00:15/19:05 木・日

URL/www.finnair.com/jp-ja

取材協力/Visit Finland、Visit Tampere、Visit Lahti、Finnair

 

Photos & Text:Shie Iwasa

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