アーティストコーディネーター、倉田佳子がナビゲート! “現代アート+α” の複合スペース | Numero TOKYO
Art / Feature

アーティストコーディネーター、倉田佳子がナビゲート! “現代アート+α” の複合スペース

アートは時代の合わせ鏡。街に根を張り、積極的に社会とつながるコミュニティの場が続々出現。“アート+α”の拠点巡りへ出かけよう。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年3月号掲載)

 

デカメロン|歌舞伎町

“歌舞伎町×アート”のムーブメント発信源

オーナーの手塚マキ(右/Smappa!Group会長)とキュレーターの黒瀧紀代士。
オーナーの手塚マキ(右/Smappa!Group会長)とキュレーターの黒瀧紀代士。

2020年7月、コロナ禍まっただ中の新宿・歌舞伎町に誕生したデカメロン。今や、アート以外にも多種多様な人々で夜通しにぎわう唯一無二の場所として愛されているが、当初は逆境からのスタートだったとオーナーの手塚マキは語る。「コロナ渦で“夜の街”として名指しされた歌舞伎町と外部を接続するような場所が作れないかと考えていたタイミングで、もともとバーの店主を務めていたキュレーターの黒瀧紀代士からも提案があり、ここを立ち上げました」。それ以来、アートを通じて社会へ呼応し続けた姿勢は大きな求心力へと育った。昨今、場所を持たずに活動するギャラリーも増えているなかで、あえて場に根差した社会への発信をどう見据えているのだろう。

「コロナ禍が去ったとされるいま、事象が悠然と流れることに違和感があります。それぞれ思いを込めたテーマのもとに展示を組んでいます」(黒瀧)。「この場所が歌舞伎町にある意味をさらに強めていきたいです。もっとこの街に溶け込むことで、アートをきっかけにさまざまな人たちが歌舞伎町の住人と語り合えるような場所性を成立させたいですね」(手塚)。

店名はジョヴァンニ・ボッカッチョの同名作品にちなむ。
店名はジョヴァンニ・ボッカッチョの同名作品にちなむ。

アートコレクター黒木健一のコレクション展「苦いみらい」(2023年12月22日〜24年1月20日)のオリジナルカクテル。
アートコレクター黒木健一のコレクション展「苦いみらい」(2023年12月22日〜24年1月20日)のオリジナルカクテル。

交流の場となるバーカウンター。アーティストや著名人も集う。
交流の場となるバーカウンター。アーティストや著名人も集う。

アートコレクター黒木健一のコレクション展「苦いみらい」(2023年12月22日〜24年1月20日)より、2階ギャラリーの展示風景(泉太郎の作品)。
アートコレクター黒木健一のコレクション展「苦いみらい」(2023年12月22日〜24年1月20日)より、2階ギャラリーの展示風景(泉太郎の作品)。

デカメロン

住所/東京都新宿区歌舞伎町1-12-4
TEL/03-6265-9013
営業時間/17:00〜27:00(日・月・火〜24:00)
定休日/不定休
URL/https://decameron.jp/
2階ギャラリーの展示予定はサイト参照。1階にもヨーゼフ・ボイス、長田奈緒、オル太、小泉明郎らの作品を常設展示。

 

OFS.TOKYO|池尻大橋

独自の世界観を紡ぐギャラリー&ショップ

店内OFS GALLERYで昨年開催されたKIGIのプロダクトレーベルASSEMBLEDISASSEMBLEの展示風景(Photo:Mariko Ohya)。
店内OFS GALLERYで昨年開催されたKIGIのプロダクトレーベルASSEMBLEDISASSEMBLEの展示風景(Photo:Mariko Ohya)。

KIGIをはじめとするクリエイターが運営する白金のギャラリー併設ショップOUR FAVOURITE SHOPを昨年3月に移転し、新たな名前で再スタートしたOFS.TOKYO。ギャラリースペースに加えてショップコーナー、右手にはカフェスペースを併設。「クリエイターの思想を身近に感じられる機会として、トークイベントやクリエイターが一日マスターを務めるバーイベントなども開催しています。今後、ここからクリエイティブが広がるとうれしいです」

ショップにはKIGIが手がけるD-BROSやCACUMAなどのブランドや製品のほか、独自の視点でセレクトされたアイテムが並ぶ(Photo:Kenta Hasegawa)。
ショップにはKIGIが手がけるD-BROSやCACUMAなどのブランドや製品のほか、独自の視点でセレクトされたアイテムが並ぶ(Photo:Kenta Hasegawa)。

OFS.TOKYO
住所/東京都世田谷区池尻3-7-3
TEL/03-6677-0575
営業時間/12:00〜20:00
定休日/火・水
URL/https://ofs.tokyo/

 

BUoY|北千住

演出家が立ち上げた“アート×社会”の実験場

元は銭湯だった空間で、浴槽や洗い場などが残る特徴的な地下スペース。2022年2月、ルサンチカ「GOOD WAR」/「PIPE DREAM」公演時の風景。
元は銭湯だった空間で、浴槽や洗い場などが残る特徴的な地下スペース。2022年2月、ルサンチカ「GOOD WAR」/「PIPE DREAM」公演時の風景。

北千住に位置するギャラリー&カフェバーBUoY(ブイ)。元銭湯の劇場と、元ボウリング場の廃墟そのままを生かした広大な2フロアで構成される。この場を立ち上げた演出家でBUoY芸術監督の岸本佳子が掲げる「社会的無意識という名の他者と出会う」というコンセプトに集うように、詩や演劇、ダンス、現代美術、映像、彫刻、写真といった多様なジャンルにわたる先鋭的・社会的芸術のイベントを実施。この2月にも、岸本が主宰する多言語劇団・空(utsubo)の公演などが行われた。

2階のBUoY Café。毎日100人もの人々が集うほか、展示や公演関係者との交流の場でもある。
2階のBUoY Café。毎日100人もの人々が集うほか、展示や公演関係者との交流の場でもある。

BUoY
住所/東京都足立区千住仲町49-11
営業時間/カフェ14:00〜19:00(木・金)、13:00〜18:00(土・日・祝)
定休日/月・火・水
URL/https://buoy.or.jp/

 

PARCEL|日本橋馬喰町

ホテルの一角に広がる先鋭アートギャラリー

parcelにて昨年開催のリラ・デ・マガリャエス、土屋麗「Comfortable hole, bye」展示風景(Photo:Yutaro Tagawa)。
parcelにて昨年開催のリラ・デ・マガリャエス、土屋麗「Comfortable hole, bye」展示風景(Photo:Yutaro Tagawa)。

ミニマルモダンな設えのDDD HOTELに併設されたギャラリーPARCEL。元は立体駐車場だった空間に、天井高が特徴的な展示スペースとして開廊。2022年には真裏のビル2階にもう一つのスペースparcelもオープン。ギャラリーを「ただそこにあるだけで、まわりの社会に影響を与えることができるもの」と捉え、時代に沿った展示を開催してきた。近年では「EAST EAST_TOKYO 2023」から韓国「Frieze Seoul」まで、国内外アートフェアにも積極的に参加する。

アートや食などが集まる“コレクティブホテル”の一翼を担う場。館内の一角に元は立体駐車場だった空間が広がる。
アートや食などが集まる“コレクティブホテル”の一翼を担う場。館内の一角に元は立体駐車場だった空間が広がる。

PARCEL
住所/東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD HOTEL内1F
営業時間/14:00〜19:00
定休日/月・火・祝
URL/https://parceltokyo.jp/
藤原彩人「Figurative Structures」展を3月3日(日)まで開催中。

 

WALL_alternative|西麻布

バーを併設したアート×カルチャーの交差点

昨年11〜12月の第1回展示、大野修「VERSE」及び「WALL SELECTION vol.1(東城信之介/前田紗希)」展示風景(©Photo:Keizo Kioku)。
昨年11〜12月の第1回展示、大野修「VERSE」及び「WALL SELECTION vol.1(東城信之介/前田紗希)」展示風景(©Photo:Keizo Kioku)。

昨年11月末、西麻布にオープンしたオルタナティヴ・スペース。「大人が日常の動線上で楽しめる、夜のアート&カルチャー発信拠点でありたい」と、アートフェスなどを展開するエイベックス・エンタテインメントが開設。建築家・萬代基介が手がけたギャラリー空間で、六本木・祥瑞の元シェフ恩海洋平セレクトのナチュラルワインなどこだわりのバーメニューも提供。「アートを五感で楽しめる施設として、コミュニケーションが生まれる空間を目指していきます」

ナイジェル・コーツ設計のポストモダン建築「The Wall」の1階入り口(©Photo:Aya Kawachi)。 
ナイジェル・コーツ設計のポストモダン建築「The Wall」の1階入り口(©Photo:Aya Kawachi)。 

WALL_alternative
住所/東京都港区西麻布4-2-4 1F
営業時間/18:00〜24:00
定休日/日
URL/https://avex.jp/wall/
展示期間以外でもドリンクやフードを楽しめる。

Text : Yoshiko Kurata Photos : Shuichi Yamakawa(デカメロン) Edit : Keita Fukasawa

Profile

倉田佳子Yoshiko Kurata アーティストコーディネーター、ファッションライター。これまでにヴァージル・アブローの著書の共同翻訳・編集、「TOKYO FASHION CROSSING」の一部企画・キュレーションやグッチのキャンペーンにてアーティストnico itoのコーディネートなどを手がける。 Instagram: @yoshiko_kurata

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