私たちの地球について考える展覧会 @森美術館を鎌田安里紗がレビュー
東京・六本木の森美術館にて、開館20周年を記念する展覧会の第2弾が開催中。「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」と題された展覧会では「私たちとは誰か」「地球環境は誰のものなのか」を問いかけ、環境問題をはじめとするさまざまな課題について多様な視点で考えることを提案する。エシカルファッションの普及に努め、プロジェクトを多数展開する鎌田安里紗が本展をレビュー。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年1・2月合併号掲載)
曖昧になる境界線
展覧会の入り口を入るとすぐ、5トンの貝殻が敷き詰められた空間に迎えられ、その上を歩くことができる。貝殻が踏み締められ、割れる音が空間に響く。コンクリートの原料である石灰石は、貝殻やサンゴ、海洋生物の骨が数億年かけて形を変えたものであるという。ニナ・カネルによるこの作品は、ひとりの人間の人生の長さでは感じきることができない時間の広がりに触れるチャンスを作ってくれる。思えば、海洋汚染などの原因となり問題視されているプラスチックの原料である石油は、数億年前の生物の死骸が化学変化を起こしてできている。人工(Artificial)と自然(Natural)が、生と死が、益と害が、隔て難いものとして私たちの前に現れる。
「環境危機に現代アートはどう向き合うのか?」という問いが掲げられた本展覧会は、多様な地域に根ざす、幅広い年代のアーティストたちの作品を通して、訪れる人に「人類は地球という惑星でどう生きるのか?」という問いを投げかけてくるようである。地球の生態系の中で生きる人類は、その知恵を用いて発展させてきた技術やシステムによって、生態系、そして人類そのものに危機をもたらしている。展覧会を通して受け取ってしまった問いは、その後の日々の生活の中でも何度も頭をよぎること
になる。しばらく自分なりの考えを熟成させてから、
もう一度本展に足を運んでみたいと思う。
※掲載情報は2月11日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
森美術館開館20周年記念展
私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために
会期/2023年10月18日(水)〜2024年3月31日(日)
会場/森美術館
住所/東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53階
料金(当日窓口)/平日:一般 2000円、大高生 1400円、4歳〜中学生 800円、土・日曜日、祝日:一般 2200円、大高生 1500円、4歳〜中学生 900円
時間/10:00~22:00(1月2日、3月19日を除く火曜日は17:00まで)
※入館は、閉館時間の30分前まで。
休館/会期中無休
TEL/050-5541-8600(ハローダイヤル)
URL/www.mori.art.museum/
Text:Arisa Kamada Edit:Sayaka Ito